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抗争する人間 あらすじテスト問題 筆者の主張 学習の手引き 解説

 

『抗争する人間』は、現代文の教科書に載せられている評論です。ただ、本文を読むとその内容や筆者の主張がわかりにくい部分もあります。

そこで今回は、『抗争する人間』のあらすじや要約、テスト対策などを含め簡単に解説しました。

『抗争する人間』のあらすじ

 

本文は行空きによって二つの部分から構成されていますが、前の部分をさらに二つに分け、三段落構成と考えます。ここでは、各段落ごとのあらすじを簡単に紹介していきます。

あらすじ

①人間は、他人といっしょにいたり、他人に対面したりすると暴力的になる。それは、自分で自分の価値を確認することだけでなく、他人によっても価値を承認させること、つまり評価の二重性によって社会的欲望が満足するからである。社会的欲望は、欠如を知らない。肉体の満足があっても、社会的欲望は満足しない。社会的欲望は、我を評価してくれる他人の精神を欲望するものなので、他人の精神が我のほうに方向を向け直すまで欲望の満足はありえない。

②人間は互いに他人を自分よりも劣った者と感じる傾向があり、そこから複数の人間の間には競争と闘争が生まれる。それは見せかけの意識であり、虚栄心である。社会の中で生きるとは、虚栄心を持って生きることである。虚栄心は、上位にある人間、同等者、下位の者のいずれに対しても自分の価値を承認するように要求し続ける。その結果、社会は無理にでも下方に劣ったと見なされる集団、犠牲になる集団を生産する。このメカニズムから排除と差別が生まれる。

③虚栄心は人間の精神のはたらきである。経済的不平等を改革するだけでは、また、政治的不平等を改善するだけでは、人間の内なる暴力は解消しない。通常は肯定的に受け止められている「自己尊厳」を一度疑ってみる必要がある。自我としての欲望あるいは欲望としての自我を可能な限りゼロ化していく努力が、倫理的努力なのである。

『抗争する人間』の要約&本文解説

 

200字要約人間は自分で自分を評価することに加えて、他人にその自己評価を承認させることで社会的欲求を満足させる。ここから、社会に競争や闘争が生まれ、人は相手以上の価値があると見せかける虚栄心を持つようになる。虚栄心は、自分よりも劣ったと見なされる人間や犠牲になる集団を社会に生産する。したがって、虚栄心の根本である自己尊厳を疑い、自我としての欲望をゼロ化していく努力こそが、倫理的努力にふさわしいのである。(197文字)

筆者はまず、社会的人間が内部に抱える暴力性とは何なのかを分析しています。それは、自己の優位性をめぐる欲望と満足が基本にあるのだ述べています。しかもそれは、他人に自分を認めてもらうことで成立するのだと主張しています。

例えば、自分の心の中だけで「自分は偉いのだ。」と感じるだけでは人間は満足しません。他人に「そうだ。お前は偉い。」と言ってもらうことで、はじめて自分は偉いのだと満足することができます。

このように、自分を自分で評価し、さらに他人からも評価してもらったり半ば強制的に認めてもらったりすることで、人間は社会の中で競争し合うのだと筆者は述べています。

次に、こうして生まれた、人間同士の競争や闘争は、それぞれが持つ「虚栄心」によって行われているのだと述べています。人は虚栄心があることで、上位や同等、下位の人に自分の価値を承認するように要求します。その結果、社会は無理にでも劣ったと見なされる犠牲者を作り出すのだという内容です。

そして人間がこの問題に対処するには、「倫理」が必要だと筆者は述べています。筆者は、暴力現象は物質的な問題ではなく精神的な問題なのだと言います。そのため、人間の精神に関わる倫理を改革する必要があるということです。

最終的に筆者は、倫理的態度とは、社会的存在としての自我が抱える欲望との批判対決であり、対他欲望を消し去るための戦いである、と述べています。

これはつまり、「自分のことを自分で認めたい」「自分のことを他者から認めてほしい」という飽くなき欲望をなくしていく努力が必要ということです。

『抗争する人間』のテスト対策問題

 

問題1

次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。

ボウリョクをなくす。

コドクな生活を送る。

フカケツの条件。

ユウエツした気分。

⑤空気がジュンカンする。

⑥利益をツイキュウする。

コウテイ的な意見。

解答①暴力 ②孤独 ③不可欠 ④優越 ⑤循環 ⑥追求 ⑦肯定
問題2「他人からの是認の欲望は激烈であり、それがよくも悪くも人間社会の原動力になっている。」とあるが、「他人からの是認」を具体的に表した言葉を本文中からそのまま抜き出しなさい。
解答例「そうだ、おまえは偉い。」
問題3「この評価の二重性こそが、人間を社会関係の中に引きずり込む。」とあるが、「評価の二重性」とはここではどういうことを表しているか?本文中の語句を用いて簡潔に答えなさい。
解答例自分で自分を評価することと、他人からこの自己評価を承認してもらうこと。
問題4「虚栄心は、上下左右の方向で、絶えず他人の視線を気にして、他人に向かって自分の価値を承認するように要求し続ける。」とあるが、「上下左右の方向」とはここでは何を表しているか?
解答例「上位にある人間」「同等者」「下位の者」などのような、あらゆる他人のこと。
問題5「その時倫理は、この精神の構造の中にくさびを入れる以外のことはできない。」とあるが、「この精神の構造の中にくさびを入れる」は、どういうことを意味しているか?
解答例他人による承認への欲望を持って社会の中で生きている人間の精神構造の中に、倫理の考え方を入れてその欲望を抑えること。

まとめ

 

以上、今回は『抗争する人間』について解説しました。ぜひテスト対策用に見直して頂ければと思います。なお、本文中の重要語句については以下の記事でまとめています。

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国語力アップ.com管理人

大学卒業後、国語の講師・添削員として就職。その後、WEBライターとして独立し、現在は主に言葉の意味について記事を執筆中。 【保有資格】⇒漢字検定1級・英語検定準1級・宅地建物取引士など。

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