「しんどう」を漢字で書く場合、「振動」と「震動」があります。
「窓が振動する」「大地が震動する」
この二つの使い分けはどう行えばいいのでしょうか?今回は、「振動」と「震動」の違いについて詳しく解説しました。
振動の意味
まずは、「振動」の意味からです。
【振動(しんどう)】
①揺れ動くこと。
②ある量が、一つの状態を中心に周期的に変動すること。振り子・ばねの運動や電気振動など。
③数学で、無限に続く数列・関数列の極限が不定で、収束せず、また極限値が無限大でもないこと。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「振動」とは簡単に言うと「ゆれ動くこと・振り動かすこと」という意味です。
【例】
- 爆音で窓が振動する。
- 振り子が振動する。
つまり、「物理的にゆれたり振り動いたりすること」を表した言葉ということです。
辞書の記述にもある通り、「振動」は物理学の用語として説明されています。したがって、本来の意味としては音波や電波などのように「一定の周期でゆれ動くこと」を表したものとなります。
震動の意味
続いて、「震動」の意味です。
【震動(しんどう)】
⇒ふるえ動くこと。また、ふるわせること。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「震動」とは「ふるえ動くこと・ふるえ動かすこと」という意味です。
【例】
- 地震で家が震動する。
- 火山の噴火で山が震動する。
「震動」は主に、地震や火山の噴火など自然現象に対して使われるのが特徴です。そのため、山や大地のように大きくてどっしりした物がふるえ動くような時に使われます。
逆に言えば、小さいものが揺れ動くような時は使わない言葉だと考えて問題ありません。
振動と震動の違い
ここまでの内容を整理すると、
「振動」=ゆれ動くこと・振り動かすこと。(物理的)
「震動」=ふるえ動くこと・ふるえ動かすこと。(自然現象)
ということでした。
つまり両者の使い分けを簡単に言うと、
地震や火山などの自然現象・天然現象には「震動」を使い、それら以外は「振動」を使う。
となります。
分かりやすいように両者の語源を確認しておくと、「振動」の「振」という字は、元々、「振れる」から来ています。これは、「振り子打法」「振り子時計」などの言葉があるのでイメージしやすいかと思います。
つまり、一定の規則で物体が動くような場合に「振動」が使われるのです。人が作った時計などの機械は、まさに規則的な動きと言えるでしょう。
一方で、「震動」の「震」は「地震」の「震」から来ています。地震というのは、一定のリズムではなく不規則に揺れます。
ずっと同じ間隔で揺れるような地震などは、まず起こりません。したがって、「震動」の方は不規則に揺れる自然現象など限定的な場面でしか使われないのです。
まとめると、
「振動」=自然現象・天然現象以外の全て。(一定の規則)
「震動」=地震や火山などの自然現象のみ。(不規則)
となります。
使い方・例文
最後に、両者の違いを具体的な例文で紹介しておきます。
【振動の使い方】
- マナーモードによって、携帯電話が振動する。
- 二階の住人の足音が、振動となって伝わる。
- バイオリンの弦が、演奏によって振動する。
- 振動ドリルによって、コンクリートに穴をあける。
- 電車の振動が激しいため、乗り物酔いをした。
【震動の使い方】
- 地震によって、大地が激しく震動する。
- 火山噴火にともなう大規模な震動が観測された。
- 地震の震動を正確に伝えるセンサーを開発しました。
- 南海トラフ地震の震動は想像を絶するものになるだろう。
- 最近は就寝中の家鳴り震動によって悩まされています。
「振動」は、「揺れ動くこと・振り動かすこと」という意味でありとあらゆる場面で用いられています。一方で、「震動」の方は自然現象で震え動くような場面でしか用いられていません。
なお、「家鳴り(やなり)」とは「家や家具が揺れ出す現象」のことです。新築の木造住宅に住んでいた人は、入居して間もない頃に何度か経験したことがあるかもしれません。
家鳴りの原因は、木材がズレて起こる自然現象だと考えられています。人工的に起きる揺れではなく自然現象での揺れなので、この場合は「振動」ではなく「震動」を使うことになります。
まとめ
以上、本記事のまとめです。
「振動」=一定の規則で、物理的にゆれたり、振り動くこと。(自然現象以外)
「震動」=不規則にふるえ動くこと。(自然現象・天然現象のみ)
基本的には「振動」がよく使われています。「震動」は、地震や火山の噴火など限定的な場面で使うと覚えておきましょう。