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施行 施行 違い 意味 使い分け 読み方

 

「施行」と「施工」は、どちらも似たような漢字です。

「法律を施行する」「建物を施工する」

さらに、それぞれの読み方も「しこう」と読んだり「せこう」と読んだりされています。この二つの使い分けはどう行えばよいのでしょうか?

今回は、「施行」と「施工」の違いについて詳しく解説しました。

施行の意味・読み方

 

まずは、「施行」についてです。

【施行(しこう)】

実際に行うこと。政策・計画などを実行すること。実施。せぎょう。しぎょう。

法令の効力を発生させること。せこう。

出典:デジタル大辞泉(小学館)

「施行」は「しこう」「しぎょう」「せぎょう」「せこう」など様々な読み方があります。ただ、原則として「しこう」と読む言葉と考えてください。理由については、後ほど解説します。

「施行」の意味ですが、大きく分けて二つあります。一つ目は、「実際に行うこと」という意味です。

【例】

  • 社長の命令を施行する。
  • 農業政策を施行する。
  • 陸上競技を施行する。

つまり、前もって考えていた政策や計画などを実際に行うということです。

そして二つ目は、「法律などの効力を発生させる」という意味です。

【例】

  • 新しい法律が施行される。
  • 10%の消費税法が施行される。
  • 日本国憲法が施行された日。

「法律」というのは、「公布」してから20日後に「施行」し、「施行」した時に初めて効力が発生します。

したがって、実際に法律を作ったとしても「施行」しないと意味がありません。その時に使う言葉が「施行」ということです。

以上、二つの意味を紹介しましたが、一般的には後者の意味で使われることの方が多いと言えます。

施工の意味・読み方

 

続いて、「施工」の意味です。

【施工(しこう)】

工事を行うこと。せこう。

出典:デジタル大辞泉(小学館)

施工」は「しこう」と「せこう」の両方で読むことができますが、現在では「せこう」と読むことの方が多いです。

意味は、「工事を行うこと」を表したものです。

【例】

  • 道路を施工する。
  • ビルを施工する。
  • 建物を施工する。

いずれも工事をするときに使われていることが分かるかと思います。要するに、「土木や建築の作業を行うこと」を「施工」と言うわけです。

実際の建築現場では、「施工期間」という使い方が多いでしょう。これは、「工事開始から終了までの期間」という意味です。この「施工期間」に沿って、建築会社は建物を完成させるまでの工事を進めていくことになります。

「しこう」と「せこう」どっちが正しい?

 

「施行」と「施工」は、どちらも「しこう」と読みます。

ところが、辞書の説明だと両方とも「せこう」とも書かれています。これは一体なぜなのでしょうか?

まず、両者の語源も確認しておくと、「」は「漢音」、「」は「慣用音」です。

「漢音」とは「漢字本来の正しい読み方」、一方で「慣用音」とは「元々は間違った読み方が皆が使う内に定着した読み方」のことです。

よって、漢字本来の語源から考えれば、頭に「し」を付けて「しこう」と読むのが正しいことになります。言い換えれば、「施行」も「施工」も本来は「しこう」と読むのが正しいということです。

ではなぜ「せこう」という読み方も存在するのかという話ですが、それは法律用語の「執行(しっこう)」と区別するためだと言われています。「施行」「施工」「執行」はいずれも読み方が似ています。

そのため、現在では、しこう」=「法律用語」、「せこう」=「建築用語のように言わば暗黙のように使い分けがされているのです。「せこう」の方は、混同を避けるためにあえてこのような読み方が広まったとされています。

ただ、「施行」に関してはまれに「せぎょう」と読む場合もあります。「施行(せぎょう)」とは「貧しい人々にお金や物を与えること」です。この読み方をする時だけは仏教の用語として使われるので注意が必要です。

施行と施工の違い・使い分け

施行 施工 違い 使い分け

 

両者の使い分けはどう行えばいいのでしょうか?

それぞれの意味は、

施行」=実際に行うこと。法律などの効力を発生させる。

施工」=工事を行うこと。

ということでした。

つまり、「法律に使うのが施行。工事に使うのが施工」ということです。

「施行」には、「実際に行う」という意味もありますが、この意味で使うケースは多くありません。そのため、「施行」=「法律に対して使う」と覚えて問題ないです。

対して、「施工」の方は土木や建築など何かの工事をする場合に使います。したがって、「施工」=「工事に対して使う」と覚えてありません。

なお、覚え方としては次のように記憶しておくのがよいでしょう。

施行」=「法律を実して、行(ゆ)き渡らせる」「施工」=「事を施(ほどこ)す」

施行と施工の使い方・例文

 

最後に、それぞれの使い方を具体的な例文で紹介しておきます。

 

【施行の使い方】

  1. 日本では法律は国会が定め、内閣が施行する。
  2. 日本国憲法は1947年の施行以来、一度も改正されてない。
  3. 今日から、税金に関する新しい法律が施行されたようだ。
  4. 戦前の日本においては、徴兵制度が施行されていた。
  5. 法律は一度施行されてもまた改正されていくものである。

【施工の使い方】

  1. 道路工事を施工しているため、道が混んでいる。
  2. ハウスメーカーによる新築住宅の施工が始まった。
  3. 施工管理技士の資格試験を受けることを決めた。
  4. 一般的な家の施工期間は、三か月と言われている。
  5. 総額1000億円の大型ダムの施工に取りかかる。

まとめ

 

以上、本記事のまとめです。

施行」=法律などの効力を発生させること。しこう」と読むことが多い。

施工」=土木・建築などの工事を行うこと。せこう」と読むことが多い。

読み方」⇒本来はどちらも「しこう」と読むのが正しい。「せこう」は慣用読み。

どちらの言葉も日常的な文章からビジネスシーンまでよく使われます。この機会に違いを頭の中で整理しておきましょう。

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国語力アップ.com管理人

大学卒業後、国語の講師・添削員として就職。その後、WEBライターとして独立し、現在は主に言葉の意味について記事を執筆中。 【保有資格】⇒漢字検定1級・英語検定準1級・宅地建物取引士など。

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