「表裏一体」という四字熟語をご存知でしょうか?普段の文章だけでなく、音楽の曲名としても使われているほど有名な言葉です。
ただ、この四字熟語の意味が分かりにくいと感じる人も多いようです。そこで本記事では、「表裏一体」についてなるべく簡単に解説しました。
表裏一体の意味・読み方
最初に、「表裏一体」を辞書で引いてみます。
【表裏一体(ひょうりいったい)】
⇒二つのものの関係が、表と裏のように密接で切り離せないこと。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「表裏一体」は「ひょうりいったい」と読みます。意味は「二つのものが表と裏のように密接で切り離せないこと」を表したものです。
例えば、コインというのは表と裏の両面があります。両方の面があることで初めてコインとしての機能を持っています。
また、オセロゲームで使う石も白色と黒色の二つがあります。どちらか一方がなかった場合は、ゲームとして成り立ちません。
つまり、世の中には表と裏のようにお互いが対になることで成り立つ物事が存在します。この事を「表裏一体」と呼んでいるわけです。
「表裏」は、文字通り「表と裏」、「一体」は「一つの体」や「切り離すことのできない一つのもの」を意味します。
したがって、「表裏一体」は二つのものがお互いに密接し、分けることのできないほど一体となることを表すわけです。
表裏一体の具体例
「表裏一体」の具体例をもう少し詳しくみていきましょう。世の中には、表と裏のように切り離せないものが多くあります。
①男と女
人間に限らず、地球上の生き物はすべて「男(オス)」か「女(メス)」に分かれます。男がいることで女が生きられますし、逆に女がいることで男が生きられます。
どちらか一方が欠けてしまえば、その種は絶滅してしまいます。そのため、「男」と「女」は表裏一体の関係性だと言えます。
②勝ちと負け
勝負事にはすべて「勝ち」と「負け」が存在します。最も分かりやすいのは、スポーツでしょう。
野球やサッカーなどの試合は、どちらか一方が勝った場合、もう一方は必ず負けます。引き分けは別として、勝ちと負けがあるからこそ勝負事は成り立つわけです。
③主役と脇役
ドラマや映画などのストーリーには、「主役」と「脇役」がいます。脇役がいることで主役の活躍が目立ちますし、逆に主役がいるからこそ、脇役の地味な活躍も目にとまります。
お互いがちょうどよい具合に絡み合うことで、ストーリー全体として面白いものに仕上がるのです。
④光と影
「光」があるところには、必ず「影」があります。これは何も物理的な光や影というわけではなく、成功した人と成功できなかった人なども当てはまります。
例えば、夢を叶えて人気になった有名人がいる一方で、逆に全く花が開かずに夢をあきらめた人も存在します。光と影は常にセットとなって根本では繋がっているのです。
⑤生と死
生きているものは、皆いつかは死にます。そして、死んだ後にまた次の世代の生き物が生まれてきます。
「生」があるから、「死」を意識し、逆に「死」があるからこそ今の「生」を大事にしようとします。そのため、両者は切っても切り離せない関係性と言えるのです。
表裏一体の類義語
続いて、「表裏一体」の「類義語」を紹介します。
「表裏一体」を言い換えた語はいくつかありますが、この中だと「相即不離」と「一心同体」は近い意味の四字熟語だと言えます。
「相即不離」は「切り離せない」「密接である」という意味が共通しています。また、「一心同体」は「一つになる」という意味で「二つで一つを成すこと」を表す「表裏一体」と似ています。
その他、ことわざだと「水魚の交わり」も類義語に含まれます。「水魚の交わり」とは「水と魚のように切っても切れない親しい関係」を表した言葉です。
「離れることができない親密な間柄や交際」をたとえるような場面で用いられます。「水魚の交わり」は、人間同士の関係性にのみ使われるという特徴があります。
なお、類義語には含まれませんが、混同しやすい言葉で「紙一重(かみひとえ)」があります。「紙一重」とは「一枚の紙の厚さほどのきわめてわずかな違い」という意味です。
「成功するか失敗するかは紙一重だ」などのように言い、「ほとんど差がないこと」を強調するような場面で用いられます。「表裏一体」のような「相反する物事が密接な関係にあること」という意味は含まれません。この点が、「紙一重」と「表裏一体」の違いだと言えます。
表裏一体の対義語
逆に、「対義語」としては以下のような言葉が挙げられます。
反対語は、「お互いが両立し得ないこと」を表したものとなります。この中でも「水と油」はよく使われることわざです。
最後の「二律背反」に関しては補足を入れておきます。「二律背反」とは「対立する二つの主張が、同じくらいの妥当性を持っていること」を表す言葉です。
例えば、「学生は勉強を第一にすべきだ」と主張する人に対して、「学生は遊びを第一にすべきだ」と主張する人がいたとします。お互いの主張は矛盾して成立していませんが、どちらにも同じくらいの合理性・妥当性があります。このような状況を「二律背反」と言うわけです。
表裏一体の英語訳
「表裏一体」は、英語だと次のような言い方があります。
①「two sides of the same coin」(コインの表と裏)
②「inside and outside unification」(内側と外側の統一)
①は直訳すると、「同じコインの二つの側面」という意味です。コインに両面があることを伝えているので、「表裏一体」と訳すことができます。
②は「内側と外側を統一すること」という意味です。「unification」には「統一・単一化」などの意味があるため、このような意味となります。
例文だと、それぞれ以下のような言い方となります。
Justice and evil are two sides of the same coin.(正義と悪は表裏一体である。)
They are inside and outside unification.(彼らは表裏一体である。)
他には、「closely related」(密接に繋がっている)などの表現を使うこともできます。
Environmental problems and Economic developments are closely related.環境問題と経済は密接に関わっている
表裏一体の使い方・例文
最後に、「表裏一体」の使い方を例文で紹介しておきます。
- 愛情と憎しみは相反するようでいて、実は表裏一体の感情をなしている。
- 戦いにおいて攻めと守りは表裏一体であり、どちらも欠かすことはできない。
- 光と影は表裏一体の関係であり、一方だけがなくなるということはあり得ない。
- 人の長所と短所は表裏一体なので、倹約家であることはすなわちケチとも言える。
- 昼と夜、月と太陽があるように、物事には表裏一体の性質があるということだ。
- 主人公とライバルは表裏一体の関係性で、お互いがいるからこそ成長できるのだ。
- 彼らは双子の兄弟で、幼い頃から常に一緒に行動している表裏一体の関係性である。
「表裏一体」は、表と裏のように密接な関係性を表す際に使われます。また、相反する二つの物事が分離できないほど一体であることを表す際にも用いられます。
この時の対象というのは、具体的な形があるものだけというわけではありません。愛情や憎しみなどの感情、人の長所や短所を示した性格など形のないものも含まれます。
なお、実際に使われる際は「表裏一体の関係」「表裏一体の関係性」などのように後ろに「関係」という言葉が来ることが多いです。
まとめ
以上、本記事のまとめとなります。
「表裏一体」=二つのものが表と裏のように密接で切り離せないこと。
「具体例」=「男・女」「勝ち・負け」「主役・脇役」「光・影」「生・死」
「類義語」=「表裏一致・一心同体・渾然一体・相即不離・不離一体」
「対義語」=「水と油・不協和音・二律背反」
「英語訳」=「two sides of the same coin」「inside and outside unification」
日々の生活の中で、「表裏一体」を示す物事は数多くあります。意味を覚えたからには、ぜひ実際の文章の中で使って頂ければと思います。