「徴収」と「徴集」はどちらも普段からよく使われている言葉です。
「見積の代金を徴収する」「生徒の私物を徴集する」
ただ、両者の使い分けについては分かりにくいです。そこで本記事では、「徴収」と「徴集」の違いを詳しく解説しました。
徴収の意味・読み方
まずは、「徴収」の意味からです。
【徴収(ちょうしゅう)】
①金を取り立てること。
②行政機関が法や規約などに従って租税・手数料などを国民からとりたてること。
出典:三省堂 大辞林
「徴収」とは「お金を取り立てること」を言います。
「取り立てる」とは「強制的に取る」という意味だと考えてください。つまり、「お金を強制的に取ること」を「徴収」と言うわけです。
「徴収」の分かりやすい例として、「税金」が挙げられるでしょう。
私たちの生活は、一人一人が納める税金によって成り立っています。もしも税金を払わない人がいたら、国というのは成り立ちません。
そのため、国は国民から強制的にお金を取る権利があります。このような時、「国が税金を徴収する」などと言うわけです。
一般的には、「徴収」は国や地方公共団体などが主語になるケースが多いです。
徴集の意味・読み方
続いて、「徴集」の意味です。
【徴集(ちょうしゅう)】
①人や物を強制的に集めること。
②兵役制度で、強制的に現役または補充兵として人を呼び集めること。
出典:三省堂 大辞林
「徴集」とは「人や物を強制的に集めること」を言います。
例えば、ビジネスにおける会議で人を強制的に集める場合、「会議にメンバーを徴集する」などと言います。また、学校の先生が生徒のスマホを強制的に集めるような場合、「生徒のスマホを徴集する」のように言います。
つまり、人やものに限らず、何かを集めるという意味を強調した言葉が「徴集」ということです。
「徴集」も同様に、国や地方公共団体など大きな団体が主語になることもあります。例を挙げますと、「国が戦争のために人を徴集する」のような使い方です。
徴収と徴集の違い
ここまでの内容を整理すると、
「徴収」=お金を強制的に取ること。
「徴集」=人や物を強制的に集めること。
ということでした。
両者の違いを簡単に言うと、「対象の違い」となります。
「徴収」は「お金」を対象とします。一方で、「徴集」は「人や物」を対象とします。
「徴収」の「収」は、「収益」や「収入」などの熟語があるようにお金に関連した漢字です。したがって、「税金を徴収する」「旅費を徴収する」「会費を徴収する」などのように対象が「お金」となるわけです。
一方で、「徴集」の「集」は「集合」や「収集」などがあるように、人や物を集める時に使います。そのため、「社員を徴集する」「軍人を徴集する」「私物を徴集する」などのように対象が「人や物」となるのです。
ここで注意すべきは、「徴収」なのに「集める」に近い意味で使うような場合です。
例えば、「飲み会の代金を徴収する」などの使い方です。一見すると飲み会の代金はみんなから集めるので「徴集」の方かな?と思いがちですが、この場合でも対象がお金なので「徴収」を使うようにします。
大事なのは、「取る」ものでも「集める」ものでも、対象が「お金」であれば「徴収」を使うということです。逆に、対象がお金以外のものであったり人そのものであれば「徴集」を使うようにします。
徴収の敬語(丁寧な言い方)
補足すると、「徴収」は「強制的に取ること」なので、場面によっては少し威圧的なイメージを与えてしまう場合もあります。
そのため、別の言い方として敬語表現も覚えておいた方がよいでしょう。以下に、簡単な例文を紹介しました。
【例】
- 会費につきましては、事前に集金致しますのでよろしくお願い致します。
- 4月1日に幹事が集金に伺いますので、ご準備のほどをお願い致します。
- 大変申し訳ありませんが、お一人2000円のご負担をお願い致します。
- 来月の飲み会ですが、事前に会費を集金させて頂きたいと思っています。
- お一人3000円を徴収させて頂きますので、よろしくお願い致します。
「徴収」を敬語として使う場合は、別の言い方を用いるのが一般的です。よく使うのが、「集金」や「ご負担」という言葉です。
これらの言葉で言い換えれば、「強制的に取る」という上から目線な印象はだいぶ和らぎます。もしもどうしても「徴収」を使いたい場合は、「徴収させて頂きたい」「徴収させて頂きます」などの丁寧な言い方にするようにしてください。
使い方・例文
最後に、それぞれの使い方を具体的な例文で紹介しておきます。
【徴収の使い方】
- 彼は飲み会の幹事として、飲食代を徴収する役目を任された。
- パーティーを行うため、一人2000円ずつ代金が徴収された。
- 年に一度の社員旅行のために、毎月の給料から旅費代が徴収される。
- サラリーマンの税金は、会社が源泉徴収するのが一般的である。
- 固定資産税を払わない人に対して、強制的に税金が徴収された。
【徴集の使い方】
- かつての日本では、戦争のために兵士が徴集されていた。
- 約一万人の徴集隊が、戦場へと送り込まれることになった。
- カンニング防止のため、受験者のスマートフォンを徴集する。
- 二時から会議を行う予定なので、急いで社員を徴集してほしい。
- いざ戦争が始まると、二十歳以上の徴収兵が戦場に送り込まれた。
「徴収」の方は「お金を取る」という意味なので、飲食代や旅費代、税金などのお金を対象とします。一方で、「徴集」の方は「集める」という意味を強調する言葉なので、「人やモノ」を対象とします。中でも、戦争における「兵士」に使うことが多いと言えます。
まとめ
以上、本記事のまとめです。
「徴収」=お金を強制的に取ること。「お金」が対象。
「徴集」=人や物を強制的に集めること。「人や物」が対象。
「徴収の丁寧な言い方」=「集金」「ご負担」「徴収させて頂きます」など。
会社の飲み会などでは、どちらの言葉も使う機会が多いです。これを機にぜひ正しい使い分けを覚えて頂ければと思います。