「黄色い声」という慣用句をご存知でしょうか?
別の言い方だと、「黄色い声援」とも言います。あまり頻繁に聞く言葉ではないですが、そもそもなぜ黄色なのかが気になる所です。
そこで今回は、「黄色い声」の意味や語源、使い方・類語などを詳しく解説しました。
黄色い声の意味・読み方
最初に、読み方と基本的な意味を紹介します。
【黄色い声(きいろいこえ)】
⇒女性や子供などのかん高い声。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「黄色い声」は、「きいろいこえ」と読みます。
意味は「女性や子供などの甲高い声」を表したものです。「甲高い声」とは高音で耳に響くような声を意味します。
例えば、野球のスタンドやサッカーのスタジアムなどでは、その一角から女性の声援が届くようなことがよくあります。その時の声が、周囲に甲高く響いていれば「黄色い声が鳴り響いた」などのように用いることができます。
つまり、「黄色い声」とは遠くにいても聞こえてくるような甲高い声を表した言葉ということです。
イメージとしては、「キャー」という歓声や声援を想像すると分かりやすいかと思います。耳が痛くなるほどの高音で、なおかつ周りに響き渡るようなものであれば、それは「黄色い声」ということになります。
黄色い声の語源・由来
「黄色い声」の由来は諸説ありますが、一般的には次の三つの内のどれかと言われています。
①「昔のお経から」
②「江戸時代末期の流行から」
③「共感覚から」
まず、「昔のお経から」という説です。
現代のお経は、ほとんど抑揚がなく一定のリズムで刻まれています。ところが、昔のお経はそうではありませんでした。特に、平安時代中期頃までのお経は、音にもっと変化があり今よりもリズムがあったのです。
そして、音に色々なリズムがあったため、高い声・低い声などを区別するために、お坊さんは経典の文字の横に色を付けていました。その時に、もっとも高い音のマークとして黄色を使っていました。この事から、「高い声」を「黄色い声」と呼ぶようになったという説です。
二つ目は、「江戸時代末期の流行から」という説です。
江戸時代の末期に、声を色で表現することが流行っていた時期がありました。実際に、当時の「式亭三馬(しきていさんば)」によって書かれた小説、『浮世風呂』には次のような一文が残されています。
「黄色な声や白つ声で、湯の中を五色にするだらう。」
当時は、耳障りな様子やただごとではない様子を表す声を「黄色い声」としていました。この事から、次第に女性の甲高い声を「黄色い声」と呼ぶようになったということです。
現在でも黄色の信号やイエローカードなど、黄色はただごとではない様子を表す時に使われています。
三つ目は、「共感覚から」という説です。
「共感覚」とは「ある刺激に対し、普通の感覚だけでなく別の感覚も生じさせる感覚」のことです。例えば、ある文字に色を感じたりある特定の形に臭いを感じたり、といったことを表します。
この「共感覚」というものは、1931年にカール・ジーツという心理学者が行った音と色の実験で明らかになっています。
彼は、「ラ」の音に対応する色が「黄色」であるという一定の実験結果を得ることができました。要するに、「ラ」音という高音に関して、黄色をイメージする人が多いという結果を得ることができたのです。この実験結果から、「黄色」=「甲高い音」という意味になったという説です。
以上、三つの由来を紹介しました。どれもそれらしい根拠はありますが、現在の所、明確にこれが由来というものは分かっていません。そのため、一つの仮説と考えると良いかと思います。
黄色い声の類義語
続いて、「黄色い声」の類義語を紹介します。
- 悲鳴
- 絶叫
- 叫び声
- 高音
- エール
- 金切り声
- きいきい声
- とがり声
- キャンキャン声
基本的には、耳が痛くなるような高音を表す言葉であれば類義語と言えます。また、耳を鋭く突き刺すような「叫び声」「とがり声」なども言い換え表現としては適切です。
ちなみに、「黄色」の反対語は「青」ですが、「青」を使って「青い声」とは言いません。その他、「黒い声」「白い声」「赤い声」などの言葉も存在しませんので注意してください。
黄色い声の英語訳
「黄色い声」は、英語だと次のように言います。
「a shrill voice(甲高い声)」
「a high-pitched voice(甲高い声)」
「shrill」は「甲高い・金切り声の」などを意味する形容詞です。「声」を意味する「voice」を付けることで、「黄色い声」と訳すことができます。
また、「pitch」には「調整する・設定する」などの意味があります。そのため、「高く調整された声」、すなわち「甲高い声」と訳すことができるわけです。英語では「yellow」を使うのではなく、このように「shrill」や「pitch」を使うのが一般的です。
例文だと、次のように用います。
I heard a shrill voice in the stadium.(スタジアムの中から、甲高い声を聞いた。)
She has a high-pitched voice.(彼女は甲高い声を持っているね。)
黄色い声の使い方・例文
最後に、「黄色い声」の使い方を例文で紹介しておきます。
- 芸能人がすぐ近くにいるので、町中に黄色い声が鳴り響いた。
- 女子高生たちは、しきりに「キャー」と黄色い声を発し続けた。
- 黄色い声をあげながら、大勢の子供が一斉に集まってきたようだ。
- コンサートが始まると、女性ファンから黄色い声援がおくられた。
- たくさんの黄色い声に包まれながら、その俳優は壇上を後にした。
- アイドルが手を振ると、女性ファン達は黄色い声を上げて喜んだ。
「黄色い声」は、例文のように歓声や声援などに対して使われることが多い言葉です。大抵はその人のファンである人が、興奮して高い声を出すような時に使います。
また、女性が主語になるのも特徴と言えます。まれに「子供」に対して使うこともありますが、ほとんどの場合は「女性」を主語とします。男性に対しては使わない言葉だと考えて問題ありません。
なお、冒頭でも説明した通り、「黄色い声」ではなく「黄色い声援」と言うこともあります。例文だと4.です。どちらを使っても意味自体はほとんど同じと考えて下さい。
まとめ
以上、本記事のまとめです。
「黄色い声」=女性や子供などの甲高い声。
「語源・由来」=①「昔のお経から」②「江戸時代末期の流行から」③「共感覚から」のどれか。
「類義語」=「悲鳴・叫び声・エール・金切り声・きいきい声」
「英語訳」=「a shrill voice」「a high-pitched voice」
「黄色い声」は一見すると簡単そうに見える言葉ですが、実は複数の由来を持っています。意味を覚えたからには、ぜひ正しい場面で使って頂ければと思います。