「お釈迦になる」という慣用句があります。
初めて聞いた人はことわざの一種ではなく方言だと思う人もいるようです。実はこの慣用句には、いくつかの説が存在しています。
本記事では、「お釈迦になる」の意味や語源、由来、英語訳などを詳しく解説しました。
お釈迦になるの意味・読み方
最初に、読み方と基本的な意味を紹介します。
【お釈迦になる(おしゃかになる)】
⇒だめになる、出来損ないになる、使い物にならなくなる、といった意味の言い回し。
出典:三省堂 大辞林
「お釈迦になる」は、「おしゃかになる」と読みます。
意味は、「だめになること・出来損ないになること・使い物にならなくなること」などを表したものです。
例えば、せっかくの新車が衝突事故により破損してしまったとします。この場合、車は文字通り使い物にならなくなっている状態です。よって、「新車がお釈迦になった」などのように言うことができます。
「お釈迦になる」はこのように、商品や製品などが使い物にならなくなることを表す慣用句ということになります。多くは、二度と使えなくなったモノを嘆くような場面で使われます。
なお、「お釈迦になる」は「作る過程で失敗し、製品として役に立たないものになる」という意味で使うこともあります。要するに、「失敗作になった」ということです。こちらの意味は辞書の説明には書かれていませんが、念のため覚えておくとよいでしょう。
お釈迦になるの語源・由来
「お釈迦になる」の由来は諸説ありますが、一般的には次の三つのどれかと言われています。
①鋳物職人が間違ってお釈迦様を作ってしまったことから。
②人が死ぬことを「お釈迦になる」と言ったため。
③お釈迦様の誕生日「4月8日」をもじったことから。
まず、「鋳物職人が間違ってお釈迦様を作ってしまった」という説です。
昔、ある鋳物職人が阿弥陀象(あみだぞう)を作ろうとしていました。ところが、実際にできあがったのは阿弥陀象ではなく、お釈迦様の顔にそっくりだったそうです。
いくらお釈迦様と言っても、注文したものと全く違っていては使い物になりません。この事から「お釈迦になる」=「使い道がないこと」を表す言葉になったという説です。
そして二つ目は、「人が死ぬことを”お釈迦になる”と言った」という説です。
昔からお釈迦様のことを「仏様」とも言っていました。そして仏教の世界では、仏になることは「死ぬこと」を意味していました。
死んでしまっては、人として何もすることができません。この事から同じく、「お釈迦になる」=「使い物にならない」になったとも言われているのです。
最後の三つ目は、「お釈迦様の誕生日「4月8日」をもじった」という説です。
江戸っ子の鋳物師が焼き物を作る際、火力が強すぎて失敗したことがありました。この時に「火が強かった」と言うところを誤って「シガツヨウカ(4月8日)」と言ってしまったという説です。
4月8日というのは、お釈迦様の誕生日として有名です。そのため、「4月8日が失敗の原因」⇒「お釈迦になる」⇒「ダメになる」という意味に派生していったというものです。
以上、3つの由来を紹介しました。最後の説はかなりのこじつけにも聞こえますが、この説が最も有力と主張する人もいるようです。
いずれにせよ、それぞれの語源には全てツッコミどころがあるので、明確にどれが正しいとは断定できないのが現状だと言えます。
お釈迦になるの類義語
続いて、「お釈迦になる」の類義語を紹介します。
類義語は「壊れてだめになること・無駄に終わること」などの意味を持つ言葉となります。その他、「台無しになる」「役に立たなくなる」などの表現で言い換えることも可能です。
ちなみに、「お釈迦になる」は漢字だと「御釈迦になる」と書きます。どちらを使っても意味自体は同じですが、必ず前に「お(御)」をつけるようにします。省略して「釈迦になる」とは言いません。
お釈迦になるの英語訳
「御釈迦になる」は、英語だと次のような言い方があります。
①「break down(壊れる)」
②「end up a failure(失敗に終わる)」
③「be destroyed(破壊される・破損される)」
①は簡易的なモノから複雑な機械まで、「壊れる」という意味で幅広く使えます。
また、②は「物事が失敗に終わる」という意味で形のない計画などに使うことができます。
③は「物理的に何かを破壊される」という意味で、こちらは形があるモノを激しく壊されたような時に使います。
例文だと、それぞれ以下のような言い方です。
My car broke down on the street.(私の車はその道でお釈迦になった。)
After all , his plan ended up a failure.(結局、彼の計画はお釈迦になった。)
The room was destroyed by an earthquake.(その部屋は地震によってお釈迦になった。)
お釈迦になるの使い方・例文
最後に、「お釈迦になる」の使い方を例文で紹介しておきます。
- 大事なグラスを誤って床に落とし、お釈迦にしてしまった。
- 新品の家電を壊してしまった。お釈迦になるとはこのことだね。
- お釈迦になるようなことがないよう、割れ物は注意深く運んでください。
- 丁寧に描いた絵だったが、最後でミスしてお釈迦にしてしまったよ。
- お気に入りの時計をお釈迦にしてしまったので、今は最悪の気分です。
- 機械を使っていたら動かなくなった。どうやらお釈迦になったみたいだ。
「お釈迦になる」は、大事なものを壊してしまった時に使われる慣用句です。特に、家具や家電、アクセサリーなど具体的な機能を持っている製品を壊してしまったような時によく使われます。
また、すでに説明した通り、「自分で作る過程で失敗作を完成させてしまった」という意味で使う場合もあります。例文だと4.です。
いずれにせよ、製品が壊れたり完成しないということはその人にとって好ましいことではありません。そのため、「お釈迦になる」は原則として良くない意味として使われます。
まとめ
以上、本記事のまとめです。
「お釈迦になる」=だめになること・出来損ないになること・使い物にならなくなること。
「語源・由来」=①鋳物職人が誤ってお釈迦様を作った。②「人の死」を「お釈迦になる」と言った。③お釈迦様の誕生日「4月8日」のどれか。
「類義語」=「お陀仏になる・おじゃんになる・ご破算になる・水の泡となる」
「英語訳」=「break down」「end up a failure」「be destroyed」
「お釈迦になる」は現在でもよく使われている慣用句です。正しい意味を学んだからには、ぜひ実生活で使って頂ければと思います。