民俗学 民族学 分かりやすく 簡単に 意味

「民俗学」と「民族学」は、どちらも「みんぞくがく」と読む言葉です。

両方とも、現代文だと「文化論」をテーマとした文章によく出てきます。過去の例だと、2021年の大学入学共通テストの評論文で「民俗学」という言葉が登場しました。

ただ、具体的な意味や使い方が分かりにくいと感じる人も多いと思われます。そこで今回は、「民俗学」と「民族学」の違いをなるべく簡単に分かりやすく解説しました。

民俗学とは

 

まずは、「民俗学」の意味からです。

【民俗学(みんぞくがく)】

民間伝承の調査を通して、主として一般庶民の生活・文化の発展の歴史を研究する学問。英国に起こり、日本では柳田国男・折口信夫らにより体系づけられた。フォークロア。

出典:デジタル大辞泉(小学館)

民俗学」とは簡単に言うと「一般庶民の生活や文化の歴史について研究する学問」のことです。

辞書の説明の「民間伝承」とは「言うことによって文化を伝えること」を表します。

つまり、文献などの書物ではなく、人々が直接口で伝えたことを元に調査するということです。

具体的にどのようなことをするかというと、まず文化や風習、神話などについて調査していきます。

「民間伝承」を調査することにより、

  • その土地にはどんな文化があったのか?
  • 人々はどんな神様を信じていたのか?
  • 何を信仰して何を恐れていたのか?
  • どんな神話や昔話があったのか?

といったことを研究していくのです。

そして、「民俗学」を覚える上で大事なのは「一般庶民」というワードです。

「民俗学」は、名を残すようなエリートたちの文化ではなく、ごく普通の人たちの文化を研究する学問を指します。

そのため、研究対象は庶民の日常生活に関わるものが中心となるのです。

民俗学の語源・由来

 

「民俗学」は、英語で「folklore(フォークロア)」と言います。

「フォークロア」は、1846年にイギリスのタムズという人が初めて使った言葉だと言われています。

彼は、「古くから伝わるしきたり」という意味でこの言葉を作りました。

その後、各国でも民間伝承によって庶民の文化を研究する学問として使われるようになったのです。

「民俗学」は、決して日本固有の学問というわけではありません。あくまで海外発祥の学問です。

日本の民俗学は、ヨーロッパの影響を受けた後に、柳田国男という学者によって成立されたものと言われています。

民族学とは

 

次に、「民族学」の意味です。先に「民族」の意味を辞書で引いてみます。

【民族(みんぞく)】

言語・人種・文化・歴史的運命を共有し、同族意識によって結ばれた人々の集団。

出典:デジタル大辞泉(小学館)

民族」とは「言語や人種・宗教などによって分けられた集団」を表します。例えば、以下のような集団です。

  • 日本語を話す日本人。
  • ドイツ語を話すドイツ人。
  • アメリカに住んでいるアメリカ人。
  • フランスに住んでいるフランス人。
  • ユダヤ教を信じているユダヤ人。

このように、言語・人種、宗教などの同族意識によって一つに結ばれている集団を「民族」と言うのです。

したがって、「民族学」とは「世界の民族について研究する学問」を表すことになります。

「民族」というのは客観的な基準はなく、同一の文化や風習を共有している集団であれば全て「民族」と呼びます。

言いかえると、民族への帰属というのは「主観的」ということです。

民俗学と民族学の違い

民俗学 民族学 違い 使い分け

ここまでの内容を整理すると、

民俗学」=一般庶民の生活・文化の歴史について研究する学問。

民族学」=世界の民族について研究する学問。

ということでした。

両者の違いは、2つの点から比較すると分かりやすいでしょう。

1つ目は、「研究方法」の違いです。

「民俗学」は「民間伝承」を参考に研究していきます。一方で、「民族学」は「文字の記録」を参考に研究していきます。

文字というのは、元々、特権階級だけが手にできるものでした。そのため、一般庶民たちは自分たちの生活記録を口伝えで残すしか方法がありませんでした。

つまり、両者の研究方法の違いは言わば必然だったことになります。

そして2つ目は、「研究対象の違い」です。

「民俗学」は、文化や風習・神話など一般庶民の生活の歴史を研究します。

一方で、「民族学」は、言語・生活習慣・信仰など民族の文化や社会について研究します。

すなわち、「民族学」の方は「民族そのものについて幅広く研究する学問」ということです。

「民族学」は「文化人類学」とも呼ばれており、一般庶民の研究というよりは人類そのものを明らかにしていくという意味が強いのです。

以上の事から考えますと、研究対象の範囲で言えば、「民俗学」よりも「民族学」のほうが大きいとも言えるでしょう。

使い方・例文

 

最後に、それぞれの使い方を実際の例文で紹介しておきます。

【民俗学の使い方】

  1. 民俗学とは民間伝承を主な研究領域にしている学問である。
  2. 民俗学は人間の生活史について豊富な知識を与えてくれる。
  3. 彼は歴史と文化が好きなため、大学で民俗学を勉強している。
  4. 今回の研究テーマは歴史学だけでなく民俗学とも関わっています。
  5. 妖怪伝説について調べたり研究したりするのは、民俗学に含まれる。

【民族学の使い方】

  1. 民族学という言葉は、文化人類学とほぼ同義である。
  2. この博物館には、民族学的な資料も保存されている。
  3. 大阪府の国立民族学博物館では、民族学の展示がある。
  4. 当時のヨーロッパについて、民族学的な調査を行う。
  5. 歴史は好きだが、民族学についてはまだ習っていない。

 

現代文では「民俗学」というキーワードは、「伝統社会」について書かれた文章でよく出てきます。特に使われるのが、「近代社会」との対比です。

「近代社会」では、集団よりも個人を重視していました。一方で、「伝統社会」では逆に個人よりも集団を重視していました。

そこで、両者のメリット・デメリットを比較する文章が書かれやすいということです。一般的には、「近代」での理性を重視する価値観を批判した上で、「伝統社会」について論じる内容が多いです。

まとめ

 

以上、本記事のまとめとなります。

民俗学」=一般庶民の生活・文化の歴史について研究する学問。

民族学」=世界の民族について研究する学問。

違い」⇒「民俗学」は民間伝承を参考に一般庶民を研究していくが、「民族学」は文字の記録を参考に人類そのものを明らかにしていく。

どちらも大切な言葉ですが、「民俗学」の方は特に現代文でよく使われます。正しい意味を理解した上で、実際の文章を読んで頂ければと思います。