「物心両面」という四字熟語をご存知でしょうか?
一般的には「物心両面の幸せ」「物心両面の幸福」などのように用います。古くからある言葉ですが、最近では会社の経営理念などにも使われているようです。
今回は実生活でもよく目にする「物心両面」の使い方や類語、英語などをわかりやすく解説しました。
物心両面の意味・読み方
最初に、読み方と基本的な意味を紹介します。
【物心両面(ぶっしんりょうめん)】
⇒物的な事柄と心的な事柄の両方の側面。人が感じる豊かさや幸福さなどに関して、特に事件の被害者や被災者をどのように支援するかといった文脈で用いることが多い。
出典:精選版 日本国語大辞典(小学館)
「物心両面」は、「ぶっしんりょうめん」と読みます。意味は「物的な事柄と心的な事柄の両方の側面」を表したものです。
主に被害者や被災者をモノと心の両方で支援するような場面で使われます。
例えば、自宅が盗難の被害にあった人は貴重品というモノを失いますし、またいつか盗難されるのでは?という心の不安も襲ってきます。
また、災害などの被災者も家や車を失った物質的な被害、家族や仲間を失った精神的な被害の両方があります。
このような場面では、彼らに対して「物心両面にわたる支援を行う」などのような文が使われることがあります。つまり、「物的・心的の両方にわたってサポートをする」という意味です。
「物心両面」とはこのように「物と心の両方の要素」を表した四字熟語ということになります。
物心両面の語源・由来
「物心両面」は「物心」と「両面」の二語から成る四字熟語です。
まず、「物心」とは文字通り「物」と「心」を表しています。「物」はお金や車、荷物などの目に見えるもの、一方で「心」は目に見えない気持ちや感情を表します。
そして、「両面」とは「両方の面」すなわち「二つの面」という意味です。「両面」という言葉は「両面テープ」などがあるように「二つの側面」を表すため、上記のような意味になります。
以上、両者を合わせることで、「物心両面」=「物と心の二つの面」を表した言葉となるわけです。
世の中には、「男と「女」、「水」と「火」、「表」と「裏」、「月」と「太陽」など正反対同士のものがあります。「物心両面」も同様に「物」と「心」という正反対のものを組み合わせることにより、両者を対比した四字熟語にしているということです。
なお、この四字熟語は中国の故事などに由来するものではありません。
物心両面の類義語
続いて、「物心両面」の「類義語」を紹介します。
以上、4つの類義語を紹介しました。共通点は「すべての事柄に行き渡る」という意味です。
すでに確認したように、物心両面は「物と心の両方」という意味でした。したがって、有形無形のように「目に見えるもの・見えないものを含んだすべて」を表す言葉が類義語となります。
物心両面の英語訳
「物心両面」は、英語だと次の二つの言い方があります。
①「both physical and spiritual aspects」
②「both moral and material」
①の「physical」は「物質」、「spiritual」は「精神」という意味です。また、「aspects」は「面」という意味なので、「both physical and spiritual aspects」で「物質と精神の面」と訳せます。
②の「moral」は「道理的」、「material」は「原料・道具」などの意味です。「道理的」とは「人として行うべき正しい道」すなわち「人の心」を表します。そして、「原料」は「物」なので「物心両面」となります。
どちらにも共通する「both A and B」は、「AとBの両方・どちらでも」という意味の構文だと考えて下さい。
例文だと、それぞれ次のような言い方です。
I owe my father both physical and spiritual aspects.(私は父に物心両面にわたって世話になっています。)
Somebody receive support, both moral and material.(誰であっても、物心両面にわたる支援を受け取ることができます。)
物心両面の使い方・例文
最後に、「物心両面」の使い方を例文で紹介しておきます。
- 物心両面の幸福はいつまでも続くものではないと言える。
- 事件が起きて、はじめて物心両面の幸せが大切だと気づいた。
- 大人は子どもたちの物心両面の豊かさを守らなければならない。
- いつ災害が起きても困らないように、物心両面の準備をしておこう。
- 物心両面豊かに暮らすことができたのはあなたの支援のおかげです。
- 被害も落ち着いてきたので、今後は人々の物心両面の幸福を追求する必要がある。
- 弊社の経営理念は、物心両面で顧客サービスを充実させることです。
上記のように、「物心両面」は事件や災害など非日常の場面に対して使われる言葉です。よく見られるのは、「物心両面の支援」といった使い方です。第三者が、被害者・被災者に対して「すべての面で支援する」という意味で使います。
人は何事もなければ、物に囲まれて安心して過ごすことができます。しかし、予期せぬ事態に巻き込まれると、当たり前にあるはずの「物心」を満たすことができません。そうした状況では、「物心」をそろえて「人としての幸福」を取り戻すことが求められるということです。
また、「物心両面」は最後の例文のように会社の経営理念に対してもよく使われます。この場合は、お客様に対して「すべての面から支援する」といった意味で使われることが多いです。つまり、ただモノを提供するだけでなく、お客様の心も同時に満たすということです。
いずれにせよ、「物心両面」は物と心の両方を満たすような場面で使われる言葉だと考えて問題ありません。
まとめ
以上、本記事のまとめです。
「物心両面」=物的な事柄と心的な事柄の両方の側面。物質と精神との両方の面。
「語源・由来」=「物」と「心」の二つの側面を表した言葉から。
「類義語」=「全面的」「至れり尽くせり」「有形無形」「物心にわたる」
「英語訳」=「both physical and spiritual aspects」「both moral and material」
「物心両面」の意味が分かると、日常生活のありがたさがよく分かります。もしもの時があったときは、あなたもこの四字熟語を使ってみてはいかがでしょうか?