「津々浦々」という四字熟語を聞いたことがあるでしょうか?
主に「全国津々浦々」などのように用い、日本の地理を語る際によく用いられるものです。ただ、具体的な由来や成り立ちなどが分かりにくい言葉でもあります。
そこで本記事では、「津々浦々」の意味や読み方、語源・短文などを含めなるべく簡単に解説しました。
津々浦々の意味・読み方
最初に、「津々浦々」の意味を辞書で引いてみます。
【津々浦々(つつうらうら)】
⇒《「つづうらうら」とも》全国いたるところの港や海岸。また、全国いたるところ。国じゅう。「津津浦浦に行きわたる」
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「津々浦々」は、「つつうらうら」もしくは「つづうらうら」と読みます。どちらの読み方でも可能ですが、一般的には「つつうらうら」と読むことの方が多いです。
「津々浦々」とは「全国いたるところの港や海岸」という意味です。
日本は周りを海に囲まれた島国なので、各都道府県に港や海岸があります。このような全国各地にある港や海岸のことを「津々浦々」と言うわけです。
また、辞書の説明にもあるように「津々浦々」は「全国いたるところ・国じゅう(国内)」などの意味で使われることもあります。この場合は文字通り、「日本全国のあらゆる場所」という意味です。
日本であれば北は北海道から南は沖縄まで全国いたる所を含めた場所です。つまり、一国の領域内の場所であれば、それはどこであっても「津々浦々」と呼べることになります。
津々浦々の語源・由来
「津々浦々」は「津々」と「浦々」の二つに分けることができます。まず前半の「津」という字ですが、これは「船が停泊するところ・港」という意味です。
右側の部分の「聿」は、元々「進(シン)」と同じ読みを持っていたことから「すすむ」という意味を持ちます。そして、左側のサンズイの部分は「水」を表す部首です。この事から、「津」という字は「船の発着所」を表すことになります。
そして後半の「浦」は、「海や湖が陸地に入り込んだところ・入り江」という意味です。
「浦」という字は左側が同じく「水」を表すサンズイ、右側が「耕地」を表す象形文字でした。この事から、「海や湖などの水が陸地に入り込んでいるところ」を表す漢字として使われるようになりました。
以上、両者を合わせて同じ漢字を繰り返し使うことにより「あらゆる箇所の港や入り江」という意味になるわけです。なお、「津々浦々」は中国の故事に由来するような四字熟語ではありません。
津々浦々の類義語
【一天四海(いってんしかい)】⇒天下のすべて。全世界。「一天」は「天の下」すなわち「天下」、「四海」は「四つの方角の海」を表す。
【天上天下(てんじょうてんげ)】⇒天の上の世界と天の下の世界のこと。世界や宇宙のすべて。釈迦(しゃか)が生まれた時に言ったとされる「天上天下唯我独尊(てんじょうてんげゆいがどくそん)」が由来。※「てんか」とは読まない点に注意。
【三千世界(さんぜんせかい)】⇒全宇宙。この世のあらゆるところのすべて。仏教の世界では、一世界が千個集まったものを小千世界、小千世界が千個集まったものを中千世界、中千世界が千個集まったものを大千世界と言うため。
「津々浦々」を言い換えた四字熟語はいくつかありますが、同義語というのはありません。この中だと、比較的意味が近いのは「四方八方」です。
その他の四字熟語は、全国のいたるところというよりは、世界や宇宙などもっと規模の大きな範囲を表した四字熟語となります。
津々浦々の英語訳
「津々浦々」を英語にすると、次のような言い方があります。
「all over the country(国中のあらゆるところに)」
「far and wide(遠くまで広がる・あらゆるところへ)」
「from coast to coast(海岸から海岸まで)」
「all over~」は「~のあらゆるところに」という意味です。「country」を「world」に変えて、「世界中のあらゆるところに」という意味にすることもできます。
また、「far」は「遠く」、「wide」は「広い」という意味ですが、「far and wide」とすることで「津々浦々」と同じような意味として使うことができます。
最後の「from coast to coast」は、大陸続きになっているアメリカならではの表現です。東西に長い地形をしているアメリカでは、「国中のあらゆるところ」という意味を表現するには「海岸から海岸まで」という訳になります。
そのため、「coast(海岸)」を二つ使って表現しているということです。「港や入り江がたくさんある」という意味での「津々浦々」とは異なる表現なので、言葉からも国の違いを読み取ることができます。
それぞれの例文は、次のようになります。
Her name is known all over the country.(彼女の名前は国中で知られている。)
The rumor spread far and wide.(噂は津々浦々にまで広まった。)
He’s spread that from coast to coast.(彼はそれを国中あらゆるところに広めている。)
津々浦々の使い方・例文
最後に、「津々浦々」の使い方を例文で紹介しておきます。
- 今年は全国津々浦々の名産品を食べにいく予定です。
- いつか彼女と一緒に全国津々浦々を旅してみたいものです。
- 彼は全国津々浦々に友人がいる非常に人脈の広い人間である。
- 将来は全国津々浦々に知れ渡るような有名人になるつもりです。
- この学校には全国から津々浦々の秀才たちが一同に集まってくる。
- 彼女の働きのおかげで、この商品は全国津々浦々にまで知れ渡った。
- 今回のイベントは津々浦々で行われるみたいなので、楽しみにしています。
「津々浦々」は「全国の港や海岸」もしくは「日本各地のあらゆるところ」という二つの意味があるということでした。
ただ、例文をみても分かるように実際に使う際には後者の意味として使うことの方が多いです。すなわち、「日本各地のあらゆるところ」という意味です。
特に頭に「全国」を付けて「全国津々浦々」という表現が用いられることが非常に多いです。全国を付ける場合と付けない場合の両方がありますが、意味自体は変わりないと考えて問題ありません。
まとめ
以上、本記事のまとめです。
「津々浦々」=全国いたるところの港や海岸。全国いたるところ・国じゅう。
「語源・由来」=「津」は「港」、「浦」は「入り江」を表すことから。
「類義語」=「四方八方・一天四海・天上天下・三千世界」
「英語訳」=「all over the country」「far and wide」「from coast to coast」
「津々浦々」は「全国各地」「日本のあらゆるところ」という意味を簡潔に伝えられる便利な四字熟語です。今後の文章の中にぜひ取り入れてみてはいかがでしょうか?