ヒューマニズムとは 意味 簡単に わかりやすく 

「ヒューマニズム」という言葉は、高校国語の現代文や世界史などで登場します。ただ、どのような意味を持つのか分かりにくいと感じる人も多いと思われます。

そこで今回はこの「ヒューマニズム」について、具体例などを交えなるべく簡単に分かりやすく解説しました。後半では、歴史や時代背景などについても触れています。

ヒューマニズムの意味

 

まず、「ヒューマニズム」の意味を調べると次のように書かれています。

【ヒューマニズム】

人間性を称揚し、さまざまな束縛や抑圧による非人間的状態から人間の解放を目ざす思想。

㋐「人文主義」に同じ。

17~18世紀にイギリス・フランスで、普遍的な人間性を認め、いくつかの市民革命の指導理念となった思想。市民的ヒューマニズム。

新人文主義。ネオヒューマニズム。

資本主義による人間の自己疎外から人間性の回復を目ざす プロレタリア階級の運動。社会主義的ヒューマニズム。

人道主義。

出典:デジタル大辞泉(小学館)

ヒューマニズム」とは「人間性を称揚し、さまざまな束縛や抑圧による非人間的状態から人間の解放を目ざす思想」を表します。

簡単に言えば、「神様ではなく人間を大事にしようとする考え」のことです。

一般に、「ヒューマニズム」は「人文主義(じんぶんしゅぎ)」「人道主義(じんどうしゅぎ)」などと訳されています。

なぜこのような訳になるのかと言いますと、「人間」というキーワードが含まれるためです。

「ヒューマニズム」は、英語で「humanism」と書きます。

「human」は「人間」、「ism」は「考え方・主義」を表すことから、「humanism」を直訳すると「人間の考え方」となります。

転じて、「人文主義・人道主義」という意味で使われているのです。

では、「人文主義」や「人道主義」とはどういう意味なのでしょうか?詳しくみていきましょう。

人文主義の意味

ヒューマニズム 人文主義

人文主義」とは「古代ギリシャやローマ時代の古典文学に戻り、人間らしさを取り戻す考え」のことを意味します。

元々、「ヒューマニズム」という言葉は、14世紀~16世紀のルネサンス期に登場したと言われています。

当時のヨーロッパは、「近代」という時代でした。

そして、近代より前の時代は「前近代」という時代でした。

「前近代」では神様が世界の主役であり、人間は脇役という時代でした。すなわち、人間そのものよりも神様の方に価値を置いていた時代ということです。

ところが、近代になり、世界は「理性」を重視する時代に入ります。

そして、理性を重視した結果、価値の基礎を神様ではなく人間に求めることになったのです。

近代の人達は、人間としてのすばらしさは神様などの非科学的なものではなく、文学などの教養だと考えました。

ここから、当時の多くの人は「古典文学を通して、いかに人間が理性的ですばらしいか」という考え方へ移っていきます。

これが、「ヒューマニズム(人文主義)」という考え方なのです。

人道主義の意味

ヒューマニズム 人道主義 簡単に

人道主義」とは「世の中から人間の争いごとをなくし、世界を平和にしていこうとする考え」のことを意味します。

一言で言うと、「平和を目指す考え」ということです。

簡単な例を挙げますと、「暴力問題をなくす考え」などが挙げられます。

世の中には、家庭内暴力や幼児虐待など、常に暴力の問題があります。ヒューマニズムの観点から考えれば、暴力は当然あってはならないことです。

これらの暴力をなくしたり減らしたりするような考え方は「ヒューマニズム」だと言えます。

他には、「貧困問題を減らす考え」なども挙げられます。

世界では、満足にご飯を食べられない子供がたくさんいます。また、お金が足りなくて義務教育すら受けられないという子供もたくさんいます。

こういった貧困問題に正面から向き合う考えは、まさに「ヒューマニズム」と言えるのです。

以上の事から考えますと、人間らしい価値や尊厳を重視する考え方を「ヒューマニズム(人道主義)」と呼ぶことが分かるかと思います。

ヒューマニズムの使い方

ヒューマニズム 使い方

ここまで、「人文主義」と「人道主義」について解説してきました。

内容を整理すると、

人文主義」=古代文学に戻って、人間らしさを取り戻す考え。

人道主義」=人間らしい価値や尊厳を重視し、平和を目指す考え。

ということでした。

一般的には、「ヒューマニズム」は上記のどちらかの意味として使われます。しかし、本来の意味としては「人文主義」として使うのが正しいです。

すでに説明した通り、「ヒューマニズム」という言葉は、元々ルネサンス時代に出てきました。

そのため、時系列としては「人文主義」の後に「人道主義」という考えが生まれました。

つまり、「平和」や「平等」などの意味は、後から付け加えられたということです。

大まかな流れとしては、

「古代文献時代」⇒「神が世界の中心という時代」⇒「古代文献のような人間らしさを取り戻す時代」⇒「現代」

このように考えると分かりやすいです。

現在では「人道主義」と「人文主義」のどちらの意味でも使うことが可能です。

しかし、元々の由来としては「人道主義」は「人文主義」の方から派生して生まれた言葉ということは覚えておいたほうがよいでしょう。

なお、「ヒューマニズム」は場合によっては「人間中心主義」という意味で使われることもあります。

「人間中心主義」とは「人間本位の思想」を表し、現代思想の分野では思想家や哲学者からの批判対象となりやすい言葉です。

近代的な人間観によれば、人間は理性を持つ存在のことです。理性を正しく用いれば、どのような問題でも解決できると考えられています。

こうした態度により、人間を頂点とするピラミッドができあがり、人間本位な思想が近代の主流となっていきました。言いかえれば、「人間こそが世界の中心である」という思想が広まったわけです。

こうした考えは、「人間を大事にすること」の負の一面とも言えます。そのため、現代の思想家たちは、近代が人間本位的な考え方から成立していることを「ヒューマニズム(人間中心主義)」を使い、批判しているということです。

ヒューマニズムの例文

 

最後に、「ヒューマニズム」の使い方を実際の例文で紹介しておきます。

  1. ヒューマニズムとは、人間性を尊重し、神という古い考えから脱却することである。
  2. 神に代わり個人が主役になったことにより、ヒューマニズムという考えが生まれた。
  3. ヒューマニズムにより、人々は、神が世界を操る時代から脱却したと言える。
  4. ヒューマニズムという考えで大事なことは、まず人の命を大事にすることだ。
  5. 奴隷的な労働をさせるブラック企業は、ヒューマニズムの問題だけではない。
  6. 国際紛争が常に起こる現代は、ヒューマニズムの観点から考えるとあってはならない。
  7. 近代のヒューマニズムは人間本位の考えを基礎にしているため、批判の的となる。

 

現代文では、近代的なテーマを扱った文章に「ヒューマニズム」がよく出てきます。その場合は、「人文主義」の意味で使われることが多いです。

一方で、現代の人権問題などについて論じる内容は、「人道主義」の意味で使われる場合もあります。どちらで使われているかは、話のテーマや文脈などによって判断する必要があります。

まとめ

 

以上、本記事のまとめとなります。

ヒューマニズム」=神様ではなく、人間を大事にしようという考え。(人文主義・人道主義)

人文主義」=古代文学に戻って、人間らしさを取り戻す考え。

人道主義」=人間らしい価値や尊厳を重視し、平和を目指す考え。

人間中心主義」=人間本位の思想。人間中心的な思想。

ポイントは時代の流れを把握することです。「古代」~「現代」までの大まかな流れが分かれば、「ヒューマニズム」を理解しやすくなるでしょう。