「賛否両論」という四字熟語をご存知でしょうか?
新聞やテレビ、ネットニュースなどでもよく目にする言葉です。特に議論のテーマなどを語る際に用いられています。
ただ、具体的にどう使うのかが分かりにくい言葉でもあります。
そこで本記事では、「賛否両論」の意味や語源、使い方、類義語などを含め詳しく解説しました。
賛否両論の意味・読み方
最初に、読み方と基本的な意味を紹介します。
【賛否両論(さんぴりょうろん)】
⇒賛成意見と反対意見の二つがあること、またその二つのそれぞれの意見のこと。賛成と反対が対立して、意見がまとまらず、議論の余地があること。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「賛否両論」は、「さんぴりょうろん」と読みます。
意味は「賛成意見と反対意見の二つがあること。賛成・反対それぞれの意見のこと」を表したものです。
例えば、あるテーマで議論をする上で、賛成と反対に意見が真っ二つに分かれたとします。このような場面では、賛成意見と反対意見の二つがあるので「賛否両論」だと言うことができます。
実際には、両方の意見がまったく同じ数である必要はありません。6:4あるいは7:3であったとしても賛否両論に当てはまります。
議論の展開には様々なものがあり、賛成意見と反対意見の対立の結果、意見がまとまらないということもあります。このような、「答えが定まらない」「結論が出ない」「まだ議論の余地がある」といった状態も「賛否両論」と言うことができます。
私たちは、皆それぞれの意見や考え方を持っています。そして、価値観や道徳観といったものは誰一人として同じものを持っていません。
ゆえに、一つのテーマに対して意見がまとまらないのは当然とも言えます。そこで、「意見がそれぞれ存在する」という意味で「賛否両論」を使うわけです。
賛否両論の語源・由来
「賛否両論」は、「賛否」と「両論」から成る四字熟語です。
まず、「賛否」は字の通り「賛成と否定」を表しています。つまり、「賛成と反対」と言い換えることができます。そして、「両論」は「両方の議論」、すなわち「賛成と反対の意見」を意味しています。
この事から、「賛否両論」は「賛成と反対の相対する議論」を表していることになります。
転じて、現在では「意見がまとまらない状態」「議論の余地がある状態」などを表す言葉として使われているわけです。
なお、この四字熟語は中国の故事に由来するものではありません。詳細な起源などは不明ですが、日本で日本人により作られた造語である可能性が高いです。
賛否両論の類義語
続いて、「類義語」を紹介します。
この中でも、「議論百出」は比較的よく使われる四字熟語です。
また、慣用句ですが「水掛け論(みずかけろん)」という言葉もあります。
「水掛け論」とは、「お互いが自分の主張にこだわり、意見がまとまらない」という意味です。議論が延々とずっと続くような状態を表すので、基本的にネガティブな場面で使われます。
賛否両論の対義語
逆に、「対義語」としては次のような言葉が挙げられます。
【満場一致(まんじょういっち)】⇒全員の意見が一致すること。違う意見のないこと。
【異口同音(いくどうおん)】⇒多くの人が口をそろえて、同じことを言うこと。また、皆の意見が一致すること。
「反対語」の場合は、「皆の意見が一致する」「皆が同じこと言う」といった意味になります。この中でも「満場一致」は特によく使われ、主に「満場一致で可決する」などのように使います。議論のテーマに対してはもちろん、国会の法案可決などにも使える言葉です。
賛否両論の英語訳
「賛否両論」は、「英語」だと次のような言い方があります。
①「pros and cons」 (賛否両論)
②「arguments for and against 」(議論に賛成か反対か)
③「opinions are divided about ~ 」(~で意見が分かれている)
①の「pros and cons」は「賛否両論」を表す代表的な英語です。
語源はラテン語で「賛成(for)」を意味する「 pro」 と、「反対 ( against ) 」を意味する 「contra」の「con」 から来ています。必ず複数形で使われますので、pro and con とするのは誤りです。
また、②は直訳すると「賛成と反対の議論」、③は「意見が~に分かれる」となります。「argument」は「議論」、「opinion」は「意見」、「divide」は「分かれる・分割する」という意味です。
例文だと、それぞれ次のような言い方となります。
There were pros and cons on that subject.(そのテーマについては賛否両論だった。)
There are both arguments for and against on that issue.(その問題は賛否両論がある。)
Opinions are divided about gun control regulations.(銃の規制については意見が分かれている。)
賛否両論の使い方・例文
最後に、「賛否両論」の使い方を例文で紹介しておきます。
- 漫画の実写化はファンの間でも賛否両論に分かれた。
- 監督の不可解な采配に、ネット上では賛否両論が巻き起こった。
- この論文の主張は、学者たちの間でも賛否両論に分かれている。
- 尊厳死の是非は、賛否両論を巻き起こしやすいテーマである。
- 彼が下した決断には、いまだに賛否両論が巻き起こっている。
- Twitterのタイムラインには、賛否両論の意見が入り乱れていた。
「賛否両論」は、例文のように答えが出ないようなテーマに対して使うのが基本となります。
例えば、尊厳死が良い事が悪い事かなどは答えが出ないもしくは答えが出にくいテーマです。このようなテーマは、当然、賛成と反対の意見に分かれやすいので、賛否両論を使うのに適しているということです。
また、言い回しとしては、後ろに「分かれる」「巻き起こる」といった動詞が来ることが多いです。特に、「賛否両論が巻き起こる」という言い方は新聞の記事などでも頻繁に使われる用例となります。
まとめ
以上、本記事のまとめです。
「賛否両論」=賛成意見と反対意見が対立し、まとまらないこと。
「語源・由来」=賛成と反対の両方の議論が、対立することから。
「類義語」=「議論百出・諸説紛紛・毀誉褒貶・甲論乙駁」
「対義語」=「満場一致・異口同音・挙国一致」
「英語訳」=「pros and cons」「arguments for and against」「opinions are divided about~」
「賛否両論」が巻き起こるのは、決して悪いことではありません。人間は議論をすることにより、頭脳や知能を発達させてきました。この四字熟語が使われている社会こそ、健全な世の中であるとも言えるでしょう。