人が住んでいる場所のことを「住所」と言います。また、「住所」と関連した言葉で「居所」や「所在地」などもあります。
これらの言葉は、住民票を移動させたり確定申告、年末調整などを行ったりする際によく使われます。ただ、似たような言葉なので違いが分かりにくいです。
そこで本記事では、「住所」「居所」「所在地」の違いをなるべくわかりやすく解説しました。
住所の意味
まず、「住所」の意味は以下の通りです。
【住所(じゅうしょ)】
①住んでいる場所。
②法律で、各人の生活の本拠である場所。法人の場合は、その主たる事務所の所在地。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「住所」とは簡単に言うと「住んでいる場所」という意味です。法律上だと、「各人の生活の本拠となる場所」のことを指しています。
要するに、人が食事や睡眠をとったりして、生活の本拠地としている場所が「住所」ということです。
「住所」は、一般に「人が住んでいる場所」という意味で使われます。ただ、場合によっては「会社の住所」などのように、「建物や会社がある場所」という意味で使うこともあります。
これはなぜかと言いますと、会社というのは法人であり、民法に「住所」という記載がされているためです。
「法人の住所は、その主たる事務所の所在地にあるものとする。」
出典:民法第60条
よって、会社の場所などについては「住所」と用いることが可能なのです。その他、法的な文書などに関しても「本社住所」といった表現が使われています。
居所の意味
次に、「居所」の意味です。
【居所(きょしょ)】
①居住する場所。いどころ。すみか。「―が定まらない」
②法律で、住所ではないが、人がある程度継続して住む場所。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「居所」とは「居住する場所」という意味です。法律上だと、「住所ではないが、人がある程度継続して住む場所」のことを指します。
例えば、工事現場の宿舎に長期にわたって滞在するような場合はそこが「居所」になります。また、単身赴任の人が暮らす社員寮やアパートなども「居所」となります。
すなわち、「居所」というのは人が多少の期間は継続して居住しているものの、その場所と生活との結びつきが「住所」ほど密接ではない場所を指すということです。
「居所」は、「民法」だと次のようにも記述されています。
住所が知れない場合には、居所を住所とみなす。
出典:民法第23条
これはつまり、住所が分からないもしくは住所がない場合は「居所」を「住所」の代わりとみなすという意味です。
例えば、山の奥深くにある別荘やセカンドハウスなどは住所が分かりません。このような場所は法律上「居所」にするということです。
所在地の意味
最後に、「所在地」についてです。
【所在地(しょざいち)】
⇒人や物が存在する土地。「県庁所在地」
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「所在地」とは「人や物が存在する土地」のことを指します。簡単に言えば、「場所」のことです。
「所在地」は文字通り「所在する場所」を示す言葉なので、人や物、建物などがある場所の事を指します。そのため、基本的には対象を問わずに使うことができます。
ただ、一般に人が住む場所については「所在地」は使いません。「所在地」は、物や建物がある場所を指して使われることが多いです。
その他、不動産の存在する場所のことも「所在地」と言います。これは不動産の取引をする際に契約書などにも記入される項目です。
例えば、建物が何も建っていない更地などを購入する際は、当然人は誰も住んでいません。このような土地は、住所などもないため国としても具体的な場所を特定する必要が出てきます。
そこで、「所在地」という名称を使うことによりその場所を公的に示すわけです。
住所・居所・所在地の違い
ここまでの内容を整理すると、
「住所」=住んでいる場所。
「居所」=住所ではないが、人がある程度継続して住む場所。
「所在地」=物や建物がある場所。
ということでした。
「住所」と「居所」は、どちらも人が住む場所に対して使われます。ただ、「住所」の場合は役所へ届け出ることにより、初めて住所として登録がされます。
厳密に言うと、引っ越した直後など必ずしも住民票が現在の証明とならない場合もありますが、一般には「住民票の登録」=「自分の家が住所となる」と考えて問題ありません。
対して、「居所」というのは役所などへ届け出るということはありません。なぜなら、生活の拠点になるような場所ではないからです。
「居所」は、別荘やセカンドハウスなどその人が一時的に暮らす場所を指します。したがって、役所などへの届け出をするということはないのです。
ただ、「住所」が今現在ない人などの場合は、法律上、「居所」が「住所」に準じた扱いがされることもあります。この場合は、確定申告時の納税場所として便宜上、「居所」が選択されることになります。
「所在地」に関しては、原則として人が住む場所については使われません。
「所在地」は、土地や建物などのモノが所在する場所を表す言葉です。人に対して使うのは、「住所」や「居所」ということになります。
住所・居所・所在地の例文
最後に、それぞれの使い方を例文で紹介しておきます。
【住所の使い方】
- 友人から現在の住所と電話番号を教えてもらった。
- 現在あなたがお住いの住所を記入してください。
- 所得税法では、住所と居所は明確に区別されている。
- 住民票を旧住所から新住所へと移す変更手続きを行った。
- 住民税は一般に、1月1日に住んでいる住所に対して課せられる。
【居所の使い方】
- 居所とは生活の本拠とまでは言えないような場所を指す。
- 一人暮らしだが、住所ではなく居所扱いの社宅にいます。
- 現在は長期療養中の入院先にいるので、居所扱いです。
- 国内に住所がない場合は、現在の居所地が納税地となる。
- 住所が知れない時及び分からない時は居所を住所とみなす。
【所在地の使い方】
- 埼玉県の県庁所在地はさいたま市である。
- 事務所の所在地を確認してからお越しください。
- 本社所在地においても、営業を再開する事となった。
- 不動産の所在地と住居表示は異なるものである。
- 今回調査する物件の所在地を公図を使って確認する。
補足すると、「居所」よりもさらに関係の薄い場所を「現在地」と言ったりします。「現在地」とは「人や物が現在いる場所」という意味です。
文字通り「現在の場所」なので、数時間~数日単位で人や物が移動するような場所となります。グーグルマップなどで人が移動する際によく使われる言葉です。
まとめ
以上、本記事のまとめとなります。
「住所」=人が住んでいる場所。
「居所」=人が一定期間だけ住む場所。生活の拠点とはならない。
「所在地」=物や建物などがある場所。人に対しては使われない。
「住所」は住民票を登録することで正式な場所となります。「居所」は住所よりも生活への結びつきが弱く、生活の本拠とはなりません。「所在地」に関しては、人ではなくモノに対して使われる言葉となります。