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指針 方針 違い 意味 使い分け 英語 類義語

 

指針」と「方針」は、どちらもビジネスにおいて用いられている言葉です。主に「指針を得る」「方針を誤る」などのように使われています。

また、似たような横文字で「ガイドライン」などの用語を目にすることもあります。今回はこれらの言葉の違いや使い分け、類義語・英語訳などを詳しく解説しました。

指針の意味とは

 

まず、「指針」の意味を辞書で引いてみます。

【指針(ししん)】

①磁石盤・時計・各種メーターなどの指示装置についている針。

②物事を進めるうえでたよりとなるもの。参考となる基本的な方針。手引き。「人生の指針とする」

出典:デジタル大辞泉(小学館)

指針」には2つの意味がありますが、一般には「物事を進める上で頼りとなるもの」という意味で使われます。

「指針」は「指し示すこと」を表す「指」という字と、「進路」を表す「針」という字から成る熟語です。

つまり、「このようにすべきだ」「こうしたほうがいい」のような基準を示す内容が「指針」ということです。

例えば、ある若手社員が経験豊富な上司から参考になるアドバイスをもらったとします。

具体的に言いますと、「まずは仕事ができる上司の真似から始めるべきだ」「自分も最初は上司の真似をする事で上達してきた」「慣れ始めたら徐々に自分のオリジナルを出していけばいい」といったものです。

とても説得力のあるアドバイスだったので、そのやり方を実践してみようと考えました。

このような時に、「上司の仕事のやり方を指針とする」などのように言うわけです。言い換えれば、「上司のやり方を頼りとして仕事を進めていく」ということです。

「指針」は、「一般的・標準的なやり方はこれである」という「手引き」や「ガイドライン」のような役割を持っています。

そのため、一言で「ガイドライン」と言い換えられることもあります。

【指針の類義語】⇒「方向・方角・指示・指令・バイブル・目安・手がかり・指標・目標」など。

方針の意味とは

 

次に、「方針」の意味を辞書で引いてみます。

【方針(ほうしん)】

①方位を示す磁石の針。磁針。

②めざす方向。物事や計画を実行する上の、およその方向。「方針を決める」「方針を誤る」「教育方針」

出典:デジタル大辞泉(小学館)

方針」にも2つの意味がありますが、一般には「物事や計画を実行する上でのおよその方向」という意味で使われます。

この「方向」というのは「自らが考えて進んでいく方向のこと」だと考えて下さい。

逆に言えば、他人に影響を受けたり他人の助言を受けた結果、向かう方向性ではないということです。

例えば、あなたが「東大に受かる」という計画を自ら立てたとします。東大に受かるためには、今まで費やしてきた無駄な時間は減らさなければいけません。

テレビやスマホをみる時間を減らすのは当然として、友達と遊ぶ時間なども減らす必要があります。そして、無駄な時間を減らすと同時に、毎日の勉強時間をもっと増やし、過去問の研究などを徹底的に行う必要があります。

このような、目標を達成するまでのおおよその方向性を表したものを「指針」と言うわけです。今回の例だと、「遊ぶ時間を減らし、勉強時間を増やす」といったおよその方向性のことです。

「方針」の「方」は「方向」の「方」を表しています。したがって、「物事の方向性」や「計画の方向性」を示すような時に「指針」を使うのです。

【方針の類義語】⇒「主義・信条・方策・ポリシー・やり方・方向・路線・方角・手段」など。

指針と方針の違い

指針 方針 違い 使い分けは

 

ここまでの内容を整理すると、

指針」=物事を進める上で頼りとなるもの。

方針」=自らが考えて進んでいく方向のこと

ということでした。

どちらも「物事を進めていく上で定めるもの」という意味は共通しています。

ただ、「指針」の方は外部の情報を受けてそれを頼りにした結果、設定するものです。つまり、自分の意思によって設定して物事を進めていくようなものではないということです。

一方で、「方針」の方は外部ではなく自身の意思もしくは自身が所属する組織自体の意思によって物事を進めていく際に設定するものです。

決して、他者からの影響を受けてそれを頼りに設定するものではありません。ここが両者の一番の違いだと言えます。

「一般的にこうあるべきだ」「できればこうしたほうがよい」のように、誰かに対して手本を示したものが「指針」です。

そのため、「指針」は「命令」というよりは「助言」に近く、物事を進めていく上で相手を親切に導くガイドライン的な役割を持っています。

対して、「自分はこうする」「みんなでこっちに行く」のように、自身の方向性を自らがはっきりと定めたものが「方針」です。

したがって、「方針」は半ば強制的な「命令」に近く、進んでいく人物や組織の強い意志が反映されたものだと言えます。

以上の事から考えますと、「指針」は「受動的な言葉」であり、「方針」は「能動的な言葉」であるという結論が出せます。

「指針」は外部からの頼りを元に設定されるので、自分が受ける受動的な言葉です。逆に、「方針」は自ら作ることによって設定されるので、自分が定める能動的な言葉です。

そのため、「教育方針を定める」とは言いますが、「教育指針を定める」とは言いません。なぜなら、「教育方針」というのは学校や塾、親などが他者とは関係なく自主的に定めるものだからです。

また、「彼の考え方を指針とする」とは言いますが、「彼の考え方を方針とする」とは言いません。これも同じく、他人の考え方を頼りにする行為自体が、受動的であり能動的ではないからです。

指針と方針の英語訳

指針の英語訳

pointer」⇒「(計器などの)指針」

needle」⇒「(磁石版などの)針」

guideline」⇒「指針・ガイドライン」

 

「指針」の英語訳は「物理的な針」を指すのか、それとも「ガイドライン」を指すのかによって異なってきます。

前者の場合は「pointer」や「needle」などを使います。対して後者の場合は「guideline」を使います。

それぞれの例文は以下の通りです。

Please measure the length of the pointer.(指針の長さを測ってください。)

I’m going to check if the magnetic needle is broken.(磁石版の針が故障していないか確認するつもりです。)

His actions will be the guideline for the future.(彼の行動は今後の指針となることだろう。)

方針の英語訳

policy」⇒「方針」

course」⇒「進路」

plan」⇒「計画」

 

「policy」は「方針」以外に「政策、方策、やり方、手段」などを表す単語です。会社、個人を問わずその人が定める方針に対して使うことができます。

また、「course」は「進路」の意味だけでなく、「進行・過程・経過」などの意味があります。カタカナで「コース」と訳しても構いません、

最後の「plan」は「計画」を意味する単語です。今後行う方向性を示したものなので、「方針」と同じような意味で使うことができます。

それぞれの例文は以下の通りです。

The president decided to change the management policy.(その社長は経営方針を変えることにした。)

Have you decided on your future course?(今後の進路というのは決めたのでしょうか?)

The company’s plan is to radically improve profits.(会社の計画は徹底的に利益を追求することです。)

指針・方針の使い方・例文

指針 方針 例文

 

最後に、それぞれの使い方を例文で紹介しておきます。

 

【指針の使い方】

  1. 上司の生き方が参考になったので、今後の人生の指針にするつもりです。
  2. 水の使用量は、水道メーターの指針を元に調べられるようになっている。
  3. 彼の時計は指針がいくつもあるので、一見すると時間が分かりにくい。
  4. 数年前に読んだ1冊の本が、現在でも私の人生の指針となっています。
  5. 師匠の言葉をずっと指針としてきたからこそ、今の私があるといっていい。
  6. 在宅勤務(テレワーク)に対する指針が、厚生労働省から発表された。
  7. 熱中症対策についての指針を示したガイドラインを読むようにして下さい。

【方針の使い方】

  1. 受験を合格するためには、まず大まかな方針を決めることが重要である。
  2. ビジネスで成果を出すために、今年一年の方針を定めることにした。
  3. 私は御社の経営方針と経営理念に対して、非常に共感を得ています。
  4. 母は自分の教育方針が父と異なるため、いつも対立して喧嘩しています。
  5. 今の会社の方針は納得できないので、彼は転職をすることを決めた。
  6. あなたの仕事の進め方は間違っているので、方針を転換したほうがいい。
  7. 政府の基本方針が定まったが、去年とは大きな変化はないようだ。

 

「指針」は、時計の針やメーターの針、生き方、本など様々な対象に使われています。その他には、国が作成する「ガイドライン」としての用例も多いです。

「指針」はビジネスで使われることもなくはないですが、実際には「方針」の方がビジネスとして使われます。「方針」は会社の中での目標を定めた上で、その目標に達するまでの会社の方向性を表すような時に使います。

例えば「コストを削減する方向性で行くのか?」「社員を増やす方向性で行くのか?」といったことです。この意味の場合は「経営方針」とも言いますが、似たような言葉で「経営理念」があるので注意が必要です。

「経営理念」とは、その会社が存在する目的やビジネスを行う根本的な考え方を示したものです。

ビジネスでは、「経営理念」を元にその後の「経営方針」を定めます。そして、最終的に個々の「目標」を達成していくというのが基本的な流れとなります。

まとめ

 

以上、今回は「指針」と「方針」について解説しました。

指針」=物事を進める上で頼りとなるもの。基本的な手引き。ガイドライン。

方針=物事や計画を実行する上でのおよその方向。目指す方向のこと。

違い」⇒「指針」は外部の影響を受けて設定する受動的な言葉。「方針」は自らの意思によって設定する能動的な言葉。

英語」⇒「指針」は「pointer」「needle」「guideline」、「方針」は「policy」「course」「plan」

似たような意味を持つ言葉ですが、どちらも普段からよく使われています。この記事によって両者の使い分けを理解して頂ければと思います。

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国語力アップ.com管理人

大学卒業後、国語の講師・添削員として就職。その後、WEBライターとして独立し、現在は主に言葉の意味について記事を執筆中。 【保有資格】⇒漢字検定1級・英語検定準1級・宅地建物取引士など。

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