「熟読」という言葉は普段からよく使われています。
ただ、具体的な使い方や言い換え表現をどうすればいいのかという問題があります。特にビジネスにおいて目上の人に使う際は、迷う人も多いはずです。
そこで今回は、「熟読」の意味や使い方・類語・反対語などを詳しく解説しました。
熟読の意味・読み方
まずは、基本的な意味と読み方からです。
【熟読(じゅくどく)】
⇒文章をよく味わいながら読むこと。十分に内容を読み取ること。
出典:三省堂 大辞林
「熟読」とは「文章をよく味わいながら読むこと。十分に内容を読み取ること」などを意味します。
例えば、「教科書を熟読する」であれば、「1ページ目から最後のページまでじっくり読むこと」を表します。
また、「資料を熟読する」であれば、「書かれている内容をじっくりと最後まで読みこむ」といった意味になります。
このように、与えられた文章を十分に読みこむことを「熟読」と言うわけです。
「熟読」の「熟」という字は、「熟睡」「熟成」「完熟」などがあるように、「完全・十分な状態に達する」という意味があります。
したがって、中途半端に読むのではなく、しっかりとちゃんと読むような場合に「熟読」を使うのです。
熟読をビジネスで使う場合
「熟読」をビジネスで使う場合は、「敬語(丁寧語)」として用いるのが一般的です。
例えば、上司や取引先の関係者に対して文書をじっくりと読んでもらうような場面です。
この場合は単に「ご熟読ください」と言うのではなく、「ご査収ください」「ご一読ください」などに言い換えるのがよいです。
【ご査収(さしゅう)の使い方】
明日の資料を提出いたしますので、ご査収くださいますようお願い申し上げます。
【ご一読(いちどく)の使い方】
今回の資料の改善点をまとめましたので、ご一読の程をお願い申し上げます。
「ご査収」とは、「検査して収める」、すなわち「内容をよく確認してから受け取る」という意味です。「ご査収」は「熟読」の敬語表現としてよく使われる言葉です。
また、「ご一読」の方は、「一度読むこと」すなわち「さっと読むこと」を表します。こちらは「熟読」の意味とは少し異なりますが、相手に対してさっと文書を確認してもらいたい時に使えます。
ただ、実際にはちゃんと読んでほしい文書に対しても謙遜の意味を込めて使う場合があります。
いずれにせよ、上司や取引先に文書を読んでもらう場合は、熟読ではなく「ご査収」か「ご一読」を使うのが一般的です。
どちらも相手に敬意を表した表現なので、状況に応じてうまく使い分けるようにします。
熟読の類義語・言い換え
続いて、「熟読」の「類義語」を紹介します。
基本的には、「じっくり読むこと・味わいながら読むこと」を表す言葉が類義語となります。
それぞれ微妙に意味が異なりますが、「精読」はほぼ同じ意味の言葉です。したがって、「精読」は「熟読」の「同義語」と言ってもよいでしょう。
ちなみに、「四字熟語」だと「熟読玩味(じゅくどくがんみ)」という類義語があります。
「熟読玩味」とは「詩文をよく読み、その意味を十分に味わうこと」という意味です。
普通の文章にも使えますが、詩文に使うことが多いという点が違いとして挙げられます。
熟読の対義語・反対語
逆に、「熟読」の「対義語」としては以下のような言葉が挙げられます。
「通読」とは「全体を通して読むこと」です。主に文章の全体像を大まかに把握するような時に使います。
また、「流し読み」とは文字通り「流して読むこと」です。反対語の場合は基本的に「文章全体をさっと読むような行為」を表します。
熟読の英語訳
「熟読」は、英語だと次の2つの言い方があります。
①「careful reading(注意深い読み)」
②「read thoroughly(徹底的に読む)」
①の「careful」は「注意深い」という意味の形容詞、「reading」は「読書・読むこと」などを表す名詞です。
また、②の「thoroughly」は「徹底的に」という意味の副詞です。動詞の「read」と合わせて使うことで「徹底的に読む」=「熟読」と訳せます。
例文だと、それぞれ以下のような言い方です。
The paper is worth careful reading.(その論文は熟読に値する。)
You should read this book thoroughly.(あなたはその本を熟読すべきだ。)
熟読の使い方・例文
最後に、「熟読」の使い方を例文で紹介しておきます。
- 渡された資料をちゃんと熟読しておいてください。
- 来週はテストがあるので、教科書を熟読しておこう。
- この小説は名作と聞いたので、熟読しています。
- 生徒が提出した詩文を熟読玩味している段階です。
- 最近の彼の楽しみは、新聞を熟読することです。
- 一生涯で一度は熟読玩味すべき古典文学と言える。
「熟読」という言葉は「教科書・新聞・小説・資料・詩文」などあらゆる書物に対して使うことができます。そのため、非常に使いやすく汎用性がある言葉だと言えます。
もちろん、普段の用途だけではなくビジネスに対して使うことも可能です。ただ、ビジネスでは前述した通り「熟読」ではなく「ご一読」「ご査収」を使うようにします。
まとめ
以上、本記事のまとめとなります。
「熟読」=文章をよく味わいながら読むこと。十分に内容を読み取ること。
「敬語」=「ご熟読」ではなく「ご査収」もしくは「ご一読」を使う。
「類義語」=「精読・味読・耽読・判読・玩読・熟読玩味」
「対義語」=「通読・流し読み」
「英語訳」=「careful reading」「read thoroughly」
「読む行為」を表す言葉は、多くあります。その中でも「熟読」はよく使われる表現なので、この機会に使い方を覚えておきましょう。