如才ない 語源 由来 元々の意味 本来の意味 褒め言葉

「如才ない」という慣用句をご存知でしょうか?主に、「如才ない立ち回りだ」「彼女は如才ない女性だ」などのように用いられます。

何となく褒め言葉として使われている印象ですが、実際の所、良い意味と悪い意味のどちらで使うか迷うという人も多いと思います。また、元々の意味がどんなものであったかも気になる所です。

そこで本記事では、「如才ない」の由来や使い方、本来の意味などを詳しく解説しました。

如才ないの読み方・意味

 

まず最初に、「如才ない」を辞書で引いてみます。

【如才ない(じょさいない)】

気がきいていて、抜かりがない。

出典:デジタル大辞泉(小学館)

気がきいて人をそらさない。行き届いていて愛想がよい。

出典:三省堂 大辞林

上記、二つの辞書から引用しました。「如才ない」は「じょさいない」と読みます。

「にょさいない」とは読まないので注意して下さい。「如」という漢字は「如実(にょじつ)」などの熟語があるため、「にょ」と読むことも可能ですが、この場合は「じょ」と読みます。

そして意味ですが、「如才ない」とは「気がきいていて、手抜かりがない」「気がきいて人をそらさず、愛想がよい」などの意味です。

それぞれの意味を簡単に説明すると、次のようになります。

  • 手抜かりがない」=不注意による油断やミスがない。
  • 人をそらさない」=相手に不快な気持ちを与えない。
  • 愛想がよい」=人当たりがよくて明るい。

つまり、「相手に対して気がきいて、油断やミスがないこと」「明るい対応で人を不快にさせないこと」などを「如才ない」と言うわけです。

「如才ない」という慣用句は、人と人がコミュニケーションを行う際に使われます。例えば、何気ない行動や細かい気配り、愛想のあるセリフなどにより、周囲の雰囲気を明るくしてくれる人というのはいます。

このように、さりげない言動で相手から「この人、気がきくな~」と思ってもらえる人であれば、それは「如才ない」と言えるわけです。

如才ないの語源・由来

 

「如才ない」の「如才」は、「形だけの敬意」というのが本来の意味です。「如才ない」は後ろに「ない」が付くことからも分かるように、「如才」を否定した言葉です。

元々、「如才」という漢字は「如在」と書いていました。この言葉自体は中国の『論語』から来ています。以下、『論語』の中の実際の一文です。

「祭如在、祭神如神在(祭ることいますが如くし、神を祭ること神いますが如くす)」

 

これを簡単に訳しますと、「眼の前に神様がいるかのように、謹(つつ)しみかしこまって丁寧に接する」となります。つまり、「如在」は元々は「敬意」を表す言葉だったのです。

ところが、この「敬意」の意味がしだいに「形だけの敬意」や「形式的」といった否定的な意味で誤用されるようになりました。

そのため、「如在(形ばかりの敬意)」は「手抜かりがある」という意味で使われるようになりました。この「如在」を「ない」で否定するので、「如才ない」=「手抜かりがない」という肯定的な意味で使われているのです。

なお、「如才」という言葉自体は、単体で使われるようなことはまずありません。そのため、「如才ない」のように常に否定形で使われると考えてよいです。

実際に使われる際は、「如才ない」と書く場合と「如才無い」と書く場合に分かれますが、どちらを使っても意味自体は変わりません。

如才ないの類義語

如才ない 類義語 言い換え 対義語 反対語

続いて、「如才ない」の類義語を紹介します。

  • よく気が利く
  • よく気を配る
  • とても注意深い
  • しっかりしている
  • 人当たりがよい
  • ソフトな
  • 温和な
  • 柔和な

「如才ない」を言い換えた語はいくつかありますが、全く同じ意味の語(同義語)というのはありません。

前半四つは「手抜かりがない」という意味の類義語、そして後半四つは「愛想がよい」という意味の類義語です。両方の意味を含んだ慣用句が「如才ない」となります。

如才ないの対義語

 

逆に、対義語としては以下のような言葉が挙げられます。

  • 気が利かない
  • 行き届いていない
  • 十分でない
  • 配慮に欠ける
  • 気配りが足りない
  • ぶっきらぼうな
  • 冷たい
  • つれない

 

こちらは「配慮が足りない」「冷たい」「細かい所まで気遣いができない」といった意味を表す言葉です。反対語なので、当然良い意味としては使われません。

如才ないの英語訳

 

「如才ない」は、英語だと次のような言い方があります。

sensible(気が利く)」

smart(賢い)」

affable(愛想のよい)」

amiable(愛想のよい)」

suave(物柔らかな・丁寧な)」

 

英語だと様々な表現がありますが、「sensible」が一番日本語訳としては分かりやすいです。

「sensible」には「感受性がある・気づくことのできる」などの意味があります。そのため、「如才ない」という意味でも使うことができます。

それぞれの例文も紹介しておくと、次のようになります。

  • He is a sensible man.(彼は如才ない男だ。)
  • She is smart in her service.(彼女は接客において如才がない。)
  • The teacher is always affable to us.(先生はいつも私たちに愛想がよい。)
  • She was an amiable manner.(彼女は愛想のよい態度であった。)
  • He is a man of suave manners.(彼は物柔らかな人柄だ。)

如才ないの使い方・例文

 

最後に、「如才ない」の使い方を例文で紹介しておきます。

  1. 急な来客であったが、彼女は如才ない対応をして周囲の評価を上げた。
  2. 質問がたくさんきたのに難なく受け答えするなんて彼女は如才ない女性だね。
  3. 彼はおとなしそうに見えるが、如才ない交渉術をするやり手として有名らしい。
  4. 如才ない人付き合いができる彼女は、私からするとうらやましいものがある。
  5. 訪問先に向かうと、顔なじみの奥さんが如才ない笑顔で私を出迎えてくれた。
  6. 今の私があるのは、助手の彼が如才なく衣装の準備をしてくれるおかげです。
  7. 如才ないことと思いますが、今回の件については内密にお願いいたします。

 

「如才ない」は、基本的に褒め言葉として使われます。言い換えれば、良い意味として使われる慣用句ということです。

ただし、皮肉をこめるような場面では必ずしも良い意味として使うとは限りません。例えば、例文の3です。

「やり手」とは「腕の立つ人」という意味ですが、この言葉自体はあまり良い意味では使いません。むしろ、悪い意味として使うことの方が多いです。

いくら仕事ができたとしても、面と向かってほめ言葉としては使うものではありません。したがって、このような否定的な場面では「如才ない」は悪い意味として使われることになります。

なお、最後の例文のように「如才ない」は改まった場で使うこともあります。この場合は、次のように一種の敬語のような形で使います。

  • 如才ないことながら、
  • 如才ないことと思いますが、
  • 如才ないこととは存じますが、

意味としては「手抜かりはないとは思いますが、~」のように相手へ確認をするような一文となります。ビジネスシーンでは使われる機会も多いので、これらの用例も覚えておくとよいでしょう。

まとめ

 

以上、今回は「如才ない」について解説しました。

如才ない」=気がきいていて手抜かりがない気がきいて人をそらさず、愛想がよい

語源・由来」=「如才(形だけの敬意)」=「手抜かりがある」を否定するため。

類義語」=「よく気がきく・注意深い・しっかりしている・人当たりが良い・温和な」など。

英語訳」=「sensible」「smart」「affable」「amiable」「suave」

【使い方】⇒原則として「褒め言葉」として使う。(良い意味)

「如才ない」は一見すると使いにくそうな言葉にも見えますが、実際には幅広い場面で使うことができます。意味を覚えたからにはぜひ普段の文章で使って頂ければと思います。