現代文の問題や小論文などにおいて、「要旨」と「要約」という言葉をよく目にします。
「要旨をまとめよ」「簡単に要約せよ」
さらに、場合によっては「要点」という言葉が使われることもあります。
本記事では、これらの言葉の違いや具体的な書き方について解説しました。
要旨の意味
まず、「要旨」の意味を調べると次のように書かれています。
【要旨(ようし)】
⇒述べられていることの主要な点。また、内容のあらまし。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「要旨」とは「述べられていることの主要な点」という意味です。
簡単に言うと、「筆者が言いたいこと」を表したものとなります。
例えば、「A」⇒「B」⇒「C」⇒「D」という4つの段落構成の文章があったとします。
この場合の「要旨」は、「何文字で書きなさい」などの指定がない限り、「一文」もしくは「短い文章」になることが多いです。
なぜなら、重要なポイントを短く簡潔にまとめたものが「要旨」だからです。
さらに、段落の順番や大小などは考慮されません。したがって、もしも「D」段落に筆者の言いたいことが書かれていたとしたら、「D」中心に要旨を書くことになります。
要約の意味
続いて、「要約」の意味です。
【要約(ようやく)】
①文章などの要点をとりまとめること。また、そのまとめたもの。
②約束を結ぶこと。また、約束。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「要約」とは「文章の要点をとりまとめること」という意味です。簡単に言うと、「内容をまとめること」を表します。
こちらも具体例を出しましょう。同じく、「A」⇒「B」⇒「C」⇒「D」という段落構成の文章があったとします。
この場合の「要約」というのは、不必要な部分を削りながら文章をまとめることとなります。
そのため、基本的には「A」「B」「C」「D」それぞれの段落から大事な点をまとめることになります。
また、要約した文章は、文章構造や論理構造などを正確にしなければいけません。したがって、要約する順番も元の段落通りにする必要があります。
【例】
「正」⇒A⇒B⇒C⇒D
「誤」⇒C⇒A⇒D⇒B
要旨と要約の違い
ここまでの内容を整理すると、
「要旨」=筆者が言いたいこと。(段落の順番・大小は考えない)
「要約」=内容をまとめること。(段落の順番通りにする)
ということでした。
「要旨」は、文章全体で筆者が言いたいことです。そのため、極端な話、単語や箇条書きだけでも「要旨」と言えます。
一方で、「要約」の方は、各段落の内容を論理的にまとめることです。まとめる時は、各段落の大事な部分を削ったり肉付けしたりします。
したがって、基本的にはそれぞれの大事な点を順番にまとめた文章となります。
以上の事から考えますと、両者の違いは次のように定義することもできます。
「要旨」=筆者の言いたいことをまとめたもの。
「要約」=長い文章を論理的に短くまとめたもの。
要点の意味
似たような言葉で、「要点」があります。
【要点(ようてん)】
⇒物事の中心となるところ。重要な点。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「要点」とは「物事の中心となるところ。重要な点」という意味です。
この場合の「重要な点」とは、各段落の範囲内でのことだと考えてください。
例えば、「A」⇒「B」⇒「C」⇒「D」という段落があったとしたら、それぞれの中に書かれている重要な点を「要点」と言うのです。
イメージとしては、「要旨」や「要約」よりも小さい範囲を示すのが「要点」ということになります。
「要旨」や「要約」は、各段落を比較しながら、筆者の主張や論理構造をまとめます。
一方で、「要点」の場合は、各段落に注目して「ここが重要だ」と思った点を抜き出すのです。
要旨・要約・要点の書き方
では、それぞれの違いを理解できたか確認しておきましょう。以下は、有名な物語である【桃太郎】です。
もしも実際に文章の「要旨」「要約」「要点」をまとめるとしたらどうなるでしょうか。
①昔々、あるところにおじいさんとおばあさんがいました。おじいさんは山へ柴刈りに、おばあさんは川へ洗濯に行きました。おばあさんが川で洗濯していると、どんぶらこ、どんぶらこと大きな桃が流れてきました。
②おばあさんはその桃を家に持ち帰り、食べようと割りました。すると、中から元気な男の子が出てきました。おじいさん、おばあさんは大変喜んで、桃から生まれたので、桃太郎と名付けて育てました。
③大きくなった桃太郎は、鬼退治に行くことになりました。桃太郎は、おばあさんが作ってくれたきび団子を持ち、早速出発しました。一人では物足りないため、途中で犬・猿・キジを仲間に入れました。
④鬼ヶ島についた一行は、酒を飲んでいた鬼たちに奇襲を仕掛け、見事に勝利を収めました。その結果、鬼が今まで集めた宝物を村へと持ち帰りました。めでたしめでたし。
この場合の解答例は、以下のようになります。
「要旨」
桃太郎が、犬・猿・キジを連れて鬼退治をした。
「要約」
おばあさんが川で洗濯していると、大きな桃が流れてきました。
その桃を割ると、中から元気な男の子が出てきたので「桃太郎」と名付けました。
大きくなった桃太郎は、犬・猿・キジを連れて鬼退治に行きました。
見事に勝利を収めた桃太郎は、鬼に盗られた宝物を持ち帰りました。
「要点」
- 川から大きな桃が流れてきた。
- 中から出てきた子を、桃太郎と名付けた。
- 桃太郎は、犬・猿・キジを連れて鬼退治に行った。
- 見事に勝利を収めた。
うまく書けたでしょうか?あくまで解答例ですが、大まかな書き方は上記のようになります。
ただし、場合によっては「〇〇文字以内で要旨をまとめよ」などのように条件付きで問題が出されることもあります。その場合は、当然問題の指示に従うようにしてください。
例えば、「100字以内で要旨をまとめよ。」であれば最低でも80文字以上、できれば90文字以上は要旨を書く必要があります。
また、「100文字程度で要約しなさい。」であれば、100文字をはさんで、90文字から110文字程度は要約を書く必要があります。
まとめ
以上、本記事のまとめとなります。
「要旨」=筆者が言いたいこと。(段落の順番・大小は考えない)
「要約」=内容をまとめること。(段落の順番通り)
「要点」=物事の中心となるところ。重要な点。(各段落の範囲内)
「要旨」は「文章全体を通して筆者が言いたいこと」、「要約」は「長い文章を論理的にまとめること」、「要点」は「各段落の大事な点」です。それぞれの意味を理解した上で、実際の問題などを解いて頂ければと思います。