「夜郎自大」という四字熟語をご存知でしょうか?
元々は中国の故事成語を由来とするものですが、最近ではビジネスで使われることも多くなりました。ただ、具体的な成り立ちや逸話、そもそもこの「野郎」とは一体誰なのかといった疑問があります。
そこで本記事では、「夜郎自大」の意味や読み方、語源、短文などを含めなるべくわかりやすく解説しました。
夜郎自大の意味・読み方
最初に、読み方と基本的な意味を紹介します。
【夜郎自大(やろうじだい)】
⇒自分の力量を知らずに仲間の中で威張っている者。
出典:三省堂 大辞林
「夜郎自大」は「やろうじだい」と読みます。
意味は「自分の力量を知らずに、仲間の中で威張っている者」を表したものです。
例えば、地元では優秀だともてはやされていた人が、東京などの都会に出てくるとその才能が簡単に埋もれてしまうようなことはよくあります。なぜなら、世の中には上には上の能力を持った人が多くいるからです。
仲間の中では優れていたとしても、いざ広い社会に出てみると、自己評価が高かっただけ、前の環境が良かっただけ、運が良かっただけなどの場合が多いものです。
ところが、世の中には自分の世界しか知らず、自分の力こそが優れていると尊大に振る舞う人は一定数存在します。
このような人物を「夜郎自大」と言うわけです。簡単に言えば、「世間知らずの人」を指す四字熟語ということになります。
夜郎自大の語源・由来
「夜郎自大」は、「夜郎」と「自大」から成る四字熟語です。
まず、「夜郎」とは「漢の時代に中国西南部にあった小国の名前」のことです。そして、「自大」とは「自分を大きく見せる尊大な態度」のことを表します。
そのため、「夜郎自大」は「「夜郎という国の自信過剰な君主の様子」が元となった四字熟語ということになります。
簡単にあらすじを説明しますと、漢が最も大きな力を持っていた当時、中国の西南部あたりに夜郎という小さな国をまとめる国がありました。そこへ、インドとの国交を交わす交通路を確保するために、漢の国が使者を派遣することになります。
ところが、野郎の君主は漢がいかに強大な国であるかを知らなかったため、漢からの使者に対して自国の勢力を自慢しました。さらに、自国のみが大国だと思い込んでいた彼は、得意のあまり次のような質問をしたのです。
「夜郎と漢はどちらが大きいのか?」
当然のごとく、漢の方が強大な国でした。周囲の人からすれば、力量知らずも甚だしい質問でしょう。この逸話がきっかけとなり、中国では「夜郎」=「自信過剰」の意味として使われるようになりました。
転じて、現在では「自分の力量を過信し、世間知らずに威張ること」という意味になったわけです。
当時の野郎は小国をまとめるリーダー的な存在でしたが、さらに大きくて圧倒的な国である漢という存在を知りませんでした。そのため、このような力量知らずの君主が自国を自慢するエピソードが誕生したわけです。
夜郎自大の類義語
続いて、「夜郎自大」の類義語を紹介します。
「夜郎自大」を言い換えた語はいくつかありますが、この中では「唯我独尊」が比較的よく使われる四字熟語です。
また、上記5つ以外だと「自信過剰」「優越意識」なども類語に含まれます。他の四字熟語も、「見識が狭い」「世間知らず」などの意味では共通しています。
その他、ことわざだと「井の中の蛙(かわず)大海を知らず」なども類語です。こちらは「井蛙之見」と同じ意味で、「狭い考えにとらわれ、広い世界を知らないこと」を表した言葉です。
夜郎自大の対義語
「夜郎自大」の明確な意味での対義語と呼べるようなものはありません。ただ、それに近い言葉というのはあります。
反対語の場合は、相手に対して謙虚に接したりわだかまりをなくした状態で接することを表した言葉となります。
夜郎自大の英語訳
「夜郎自大」は、英語だと次のように言います。
「ignorant of the world(世間知らず)」
「act with arrogance and recklessness(夜郎自大に振る舞う)」
「world」には「世界」以外に「世間」という意味もあり、「ignorant(無知)」と合わせることで「世間を知らないこと」すなわち「世間知らず」と訳すことができます。
また、「act」は「振るまう」、「arrogance」は「横柄」、「recklessness」は「軽率さ・無謀さ」という意味です。これらを合わせると、「横柄に軽率に振る舞う」となり、「夜郎自大に振る舞う」と訳すことができます。
例文だと、それぞれ次のような言い方です。
She is ignorant of the world.(彼女は世間知らずだ。)
He is a man who acts with arrogance and recklessness.(彼は夜郎自大に振るまう男だ。)
その他、ことわざだと「big fish in a small pond(小さな池の大きな魚)」などの言い方をすることも可能です。こちらは「小さな世界でしか影響力のない人」という意味です。同じく世間知らずな様子を表した表現となります。
夜郎自大の使い方・例文
最後に、「夜郎自大」の使い方を例文で紹介しておきます。
- 学校で良い成績を取ると、両親は常に「夜郎自大になってはいけないよ」と忠告してくれた。
- 会社内で営業成績が優秀だからといって、夜郎自大には振るまわないようにした方がいいだろう。
- 彼は中学時代はエリートだったが、高校進学後は落ちこぼれとなり、夜郎自大であったことに気付いた。
- 歌の上手さに自信がありオーディションを受けたが、他の参加者の歌声を聞き、夜郎自大だったと思い知った。
- 彼女は夜郎自大な発言ばかりをするので、周りの信頼をなくして仕事を任されることが少なくなった。
- 子供の頃は自分が一番だと思い込んでいるが、大人になってから夜郎自大だったと気付かされる人は多い。
「夜郎自大」は、基本的に良い意味で使われる四字熟語ではありません。
例文のように、多くは「力もないのに偉そうだ」「自分の実力をわきまえていない」といった不快な気持ちを表す時に使います。加えて、「世間知らずな人」に対して相手を馬鹿にするような皮肉を込めた使い方をする場合もあります。
一方で、自分自身に対して使う場合は少々意味合いが異なってきます。この場合は「狭い見識しかなかった自分を恥じる」「今後は過信しすぎず、謙虚に振るまう」といったある種の教訓的な使い方をします。
自分に対して使う場合は、簡単に言うと「反省を込めた使い方」ということです。
まとめ
以上、本記事のまとめです。
「夜郎自大」=自分の力量を知らずに威張っている者。
「語源・由来」=漢の強大さを知らない夜郎国の君主が、自国の力を自慢したことから。
「類義語」=「井蛙之見・用管窺天・遼東之豕・唯我独尊・尺沢之鯢」
「英語訳」=「ignorant of the world」「act with arrogance and recklessness」
自分の力量を過信してしまったり、うぬぼれてしまうことは誰にでもあります。重要なのは、視野を広げて自分の実力を客観視することです。「夜郎自大だ」と言われないのが一番ですが、もし言われてしまった時は、改めて自分自身を見直すチャンスなのかもしれません。