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忘れられる権利 現代文 教科書 テスト 学習の手引き 簡単に まとめ

 

『忘れられる権利』は、高校国語・現代文の教科書に出てくる評論文です。ネットのプライバシー権を主な内容としたもので、学校の授業においても学びます。

ただ、実際に本文を読むと筆者の主張が分かりにくいと感じる箇所も多いです。そこで今回は、『忘れられる権利』の要約やあらすじ、テスト対策などをわかりすく解説しました。

『忘れられる権利』のあらすじ

 

本文は4つの段落から構成されています。ここでは、各段落ごとのあらすじを紹介していきます。

あらすじ

①人は忘れるが、インターネットは忘れない。ひとたびインターネット上に出た情報は、半永続的に残されたままとなる。「忘れない」インターネットの世界において、「忘れる」ことの必要性から「忘れられる権利(right to be forgotten)」が登場した。

②「忘れられる権利」は、欧州委員会が提唱した新たな権利である。当初の個人情報の利用目的から、不必要になった場合や本人からの申し出があった場合には、個人情報の削除を求めることができると規定されている。EUにおける「忘れられる権利」は、ヨーロッパにおける人間の「尊厳」という価値に根ざしている。

③一方で、「忘れられる権利」に批判的な立場を採ってきたのがアメリカである。アメリカでは、強力な表現の自由の法理の下、プライバシー権はあくまで政府からの「自由」として構成され、むしろ表現の自由や知る権利の侵害として認められないと考えられてきた。真実を知る権利や表現の自由が問題となった場合、アメリカではプライバシー権利は一歩後退することとなる。

④ヨーロッパとアメリカでは、プライバシー哲学に違いがあるが、日本ではどうであろうか。日本も「忘れられる権利」について、世界が注目するグローバルな課題であることを認識し、なぜプライバシーが権利として保障されなければならないのか、という基本的な哲学を見直す時期にさしかかっている。

ポイント

  • インターネットは人と違い、「忘れない」という特徴があることを理解する。
  • EUとアメリカでは、プライバシー権に対する考え方が対立していることを理解する。
  • 日本ではまだ権利が確立されていないプライバシー権について筆者が問題提起していることを理解する。

『忘れられる権利』の要約&本文解説

 

要約

「忘れない」インターネットの世界において、「忘れる」ことの必要性が改めて認識され始めてきた。「忘れられる」権利は、欧州委員会が提唱したもので、ヨーロッパにおける人間の「尊厳」という価値に根差している。

アメリカでは強力な表現の自由の法理の下、プライバシー権はあくまで政府からの「自由」として構成されるため、「忘れられる」権利は表現の自由や知る権利の侵害として認められないと考えてきた。

日本も「忘れられる権利」について、世界が注目するグローバルな課題である事を認識し、なぜプライバシーが権利として保障されなければならないのか、という基本的な哲学を見直す時期にきている。(281文字)

筆者はまず第一段落で、インターネットは「忘れない」ものであると述べられています。例えば、学生の頃の一枚の写真が、その後の人生をも左右してしまうほどずっと大きな影響を及ぼしてしまうことも少なくありません。

こういった「忘れない」インターネットの世界だからこそ、「忘れる」ことの必要性が求められ「忘れられる権利」が登場したというものです。

次に、第二段落では、EUにおける「忘れられる権利」について述べられています。ヨーロッパではかつて、身分制社会の下の層にいた者は私生活や名誉が十分に保障されていませんでした。そのため、EUでは人間の尊厳を大事にするために「忘れられる権利」が生まれたというものです。

そして第三段落では、「アメリカの表現の自由とプライバシー権」について述べられています。アメリカという国は歴史をたどればわかるように、元々、自由を求めて誕生した国です。

一方で、EUというのはヨーロッパの国々がもう戦争をしないようにと平和を求めて作られた組織です。そのため、アメリカには基本的な哲学として「自由」を基軸とする考え方があり、逆にヨーロッパには「尊厳」を基盤とする基本哲学がある、という両者の対比が語られています。

最後の第四段落では、「日本におけるプライバシー権保障の必要性」について述べられています。ヨーロッパでは尊厳を求め、アメリカでは自由を求めている。では日本ではどうなのか?ということです。

現在の日本でも、プライバシーに関する事件はインターネット上で常に起こっており、無視できる問題ではありません。だからこそ、基本的な哲学を真剣に見直す時期にさしかかっているというものです。

『忘れられる権利』の意味調べノート

 

【インターネット】⇒世界中のコンピューターなどの情報機器を接続するネットワーク。1990年頃からグローバルに使われ始め、現在では情報伝達の不可欠な社会基盤である。

【半永続的(はんえいぞくてき)】⇒ほとんど永続的であるさま。「永続的」とは、いつまでも続くさまを表す。

【デジタル】⇒連続的な量を、段階的に区切って数字で表すこと。情報をコンピューターで扱えるデータにしたもの。⇔「アナログ」

【本性(ほんしょう)】⇒生まれつきの性質。もともとの性格。

【むろん】⇒もちろん。言うまでもなく。

【利便性(りべんせい)】⇒便利であること。

【掲載(けいさい)】⇒新聞・雑誌などに文章・絵・写真などをのせること。

【不祥事(ふしょうじ)】⇒関係者にとって不都合な事件や事柄。

【軽微(けいび)】⇒程度がわずかであること。

【提唱(ていしょう)】⇒意見・主張などを唱え、発表すること。

【瞬時(しゅんじ)】⇒またたく間。瞬間。

【明記(めいき)】⇒はっきりと書きしるすこと。

【規定(きてい)】⇒法令の条文として定めること。

【拡散(かくさん)】⇒ひろがり散ること。

【言及(げんきゅう)】⇒いいおよぶこと。話がある事柄までふれること。

【公人(こうじん)】⇒公務についている人。公務員や議員など税金によって雇われている人。

【過度(かど)】⇒度が過ぎること。

【干渉(かんしょう)】⇒他人のことに立ち入って、自分の意思に従わせようとすること。

【保障(ほしょう)】⇒侵されたり損なわれたりしないように守ること。ある状態がそこなわれることのないように、保護し守ること。

【階層(かいそう)】⇒社会的、経済的地位がほぼ同じ程度の人々の集団。社会階層。

【名誉(めいよ)】⇒社会的に認められて得る、その人の評判や人格的価値。

【欧州基本権憲章(おうしゅうきほんけんけんしょう)】⇒欧州連合域内住民の権利について定めた憲章。尊厳・自由・平等・連帯・市民権・司法・一般規定の7章から構成される。

【尊厳(そんげん)】⇒とうとくおごそかなこと。気高く犯しがたいこと。

【掲げる(かかげる)】⇒主義・方針などを人目につくように示す。

【人権(じんけん)】⇒人間が人間として当然に持っている権利。

【法理(ほうり)】⇒法律の原理のこと。

【根差す(ねざす)】⇒もとづく。

【インフラ】⇒社会的経済基盤と社会的生産基盤とを形成するものの総称。道路・港湾・河川・鉄道・通信情報施設・下水道・学校・病院・公園・公営住宅などが含まれる。「インフラストラクチャー」の略。

【寄与(きよ)】⇒貢献すること。役立つこと。

【判例(はんれい)】⇒裁判の先例。先例として価値を有する裁判の判決。

【プライバシー権(けん)】⇒私事(プライバシー)をみだりに第三者におかされない法的な権利。

【GPS】⇒人工衛星を使い、現在地情報を測定するシステム。

【侵害(しんがい)】⇒他人の権利をおかして損害を与えること。

【後退(こうたい)】⇒勢いが衰えたり程度が低くなったりすること。「一歩後退」で、ここでは「アメリカではプライバシー権よりも真実を知る権利や表現の自由が優先されること」を表す。

【不用意(ふようい)】⇒準備が十分に整っていないこと。

【萎縮(いしゅく)】⇒元気がなくなること。

【哲学(てつがく)】⇒ここでの哲学は、学問的な意味ではなく「考え方」や「人生観」を表す。

【差異(さい)】⇒違い。差。

【基軸(きじく)】⇒思想や組織などの根本・中心・基準となるもの。

【基盤(きばん)】⇒物事を成立させるための基礎となるもの。土台。

【大西洋(たいせいよう)】⇒南北アメリカ大陸とヨーロッパ大陸・アフリカ大陸との間にある大洋。

【差し止め(さしとめ)】⇒やめさせること。禁止すること。

【訴訟(そしょう)】⇒裁判。裁判所に訴えて、事件の法律的解決を求めること。

【合法(ごうほう)】⇒法律にかなっていること。法律的に問題ないこと。

【二重の基準(にじゅうのきじゅん)】⇒ここでは、「国によってプライバシー保護の基準が変わってしまうこと」を表す。

【グローバル】⇒世界規模。

『忘れられる権利』のテスト問題対策

 

問題1

次の文の下線部の漢字を答えなさい。

①企業のフショウジが起きる。

ケイビなミスなので許された。

カドに期待するのはやめよう。

④相手に対してカンショウしない。

⑤地域福祉の発展にキヨする。

⑥相手の土地をシンガイする。

⑦景気がコウタイするだろう。

解答①不祥事 ②軽微 ③過度 ④干渉 ⑤寄与 ⑥侵害 ⑦後退
問題2そこで登場したのが「忘れられる権利」である。とあるが、「忘れられる権利」とはどのようなものか?本文中の語句を用いて説明しなさい。
解答例当初の個人情報の利用目的から不必要になった場合や本人から申し出があった場合は、個人情報の削除を求めることができるという欧州委員会が提唱した権利。
問題3

次の内、本文の内容を適切に表したものを選びなさい。

(ア)EUにおける「忘れられる権利」は、ヨーロッパにおける人間の「尊厳」という価値に根差しているものである。

(イ)アメリカにおける「忘れられる権利」は、表現の自由や知る権利の侵害だとされてきたが、一定の権利として認められてはいた。

(ウ)アメリカ型プライバシーとヨーロッパ型プライバシーには対立があるものの、現実の理論においては共通する部分もある。

(エ)日本における「忘れられる権利」は、EUとは異なり、プライバシーが権利として保障される基本哲学が確立されつつある。

解答(ア)

まとめ

 

以上、本記事では『忘れられる権利』について簡単に解説しました。現代文では、情報について論じた文章は出題されやすいです。ぜひ定期テストなどの対策として頂ければと思います。

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国語力アップ.com管理人

大学卒業後、国語の講師・添削員として就職。その後、WEBライターとして独立し、現在は主に言葉の意味について記事を執筆中。 【保有資格】⇒漢字検定1級・英語検定準1級・宅地建物取引士など。