「羽化登仙」という四字熟語をご存知でしょうか?使い方としては、「羽化登仙の境地です」などのように用います。
中国の故事が元になったものですが、そこまで有名なものではありません。ただ、漢字検定や受験などでは過去に出題されたことがあります。
本記事では、そんな「羽化登仙」の意味や読み方、由来、類義語などを解説しました。
羽化登仙の意味・読み方
最初に、この四字熟語を辞典で引いてみます。
【羽化登仙(うかとうせん)】
⇒羽が生えて仙人になって空を飛ぶ意から、酒に酔っていい気分になること。
出典:学研 四字熟語字典
「羽化登仙」は「うかとうせん」と読みます。意味は「酒に酔って、いい気分になること」です。
言い換えれば、「うっとりした気分」や「ふわふわした気分」になることを表します。
例えば、あなたが会社の仕事で成果を出したこともあり、上司から昇格を言い渡されました。そして、お祝いの席で楽しくお酒を飲みながらいい気分に酔ってきたとします。
このような時に、「羽化登仙の境地に至る」などのように言うわけです。
つまり、「羽化登仙」とはお酒を飲んでいる時のその人の気分の良さ、心地良さなどを表した四字熟語ということです。
羽化登仙の語源・由来
「羽化登仙」は、中国北宋時代の書物『前赤壁賦(ぜんせきへきのふ)』が由来となっています。『前赤壁賦(ぜんせきへきのふ)』とは、文豪家であった「蘇軾(そしょく)」という人物が記したものです。
その中の一節に、次のような一文があります。
簡単に訳すと、「身体に羽が生え、仙人になって天へ登っていくような気分である」という意味です。つまり、この一文が現在の「羽化登仙」の語源ということです。
「羽化」という言葉は「蛾などの幼虫が成虫になり羽ばたくこと」を表しますが、ここでの「羽化」も同じような意味として使われています。人間に羽が生えて、まるで空を飛び立っていくかのようなことを表した言葉です。
そして、「登仙」とは「仙人になって天へ登ること」を表しています。
両者を合わせることで、「羽化登仙」=「身体に羽が生えて、仙人のように気持ち良く飛び立つこと」。転じて、「気分が良くなること」という意味で使われているわけです。
実際に人に羽が生えるなんてことはありませんが、それほどの心地よさ・気持ち良さを表した表現ということになります。
羽化登仙の類義語
「羽化登仙」の「類義語」は以下の通りです。
「羽化登仙」を言い換えた語はいくつかありますが、全く同じ意味の言葉(同義語)はありません。
「類語」の場合は基本的に、「気持ち良くなること」「気分がよくなること」などを表した言葉が多いです。そこに「お酒を飲みながら」という意味まで加わると「羽化登仙」と同じ意味になります。
この中でも、「酒池肉林」や「自己陶酔」は比較的よく使われるので覚えておくとよいでしょう。
羽化登仙の対義語
逆に、「対義語」としては以下の言葉が挙げられます。
「対義語」の場合は「気分が良くない様子」すなわち「苦しかったり辛かったりすること」を表す四字熟語となります。いずれも人が苦しむ様を表す言葉なので、良い意味としては使われません。
羽化登仙の英語訳
「羽化登仙」は、英語だと次のように言います。
「a sense of release (as if one had wings and were riding on air)」
直訳すると「まるで羽を持って空気に乗るような解放感」となります。
「sense」は「感覚」、「release」は「解放」を意味する単語です。また、「as if ~」は「まるで~のような」という意味の熟語、「wing」は「翼」、「ride」は「~に乗る」、「air」は「空気」という意味です。
これらの単語を合わせることで、「まるで羽で空を飛ぶような心地よい気分」と訳すことができます。
英語の場合は「仙人が羽を持って~」のように訳してもなかなか意味が通じません、そのため、上記のように多少長くなっても単語を多く使って正確に相手へ伝えます。
羽化登仙の使い方・例文
最後に、「羽化登仙」の使い方を例文で紹介しておきます。
- 打ち上げの席では皆とお酒を飲み合い、まさに羽化登仙の境地でした。
- 久しぶりにお酒を飲んだので、いつの間にか羽化登仙するところであった。
- 昨日は幼なじみの友人と朝までお酒を飲み、羽化登仙の世界にひたりました。
- こんなに高価なお酒をご馳走してくださりありがとうございます。羽化登仙の気分です。
- 仕事も成功し、おいしいお酒もたっぷり飲めている。羽化登仙の境地とはこのことである。
- お酒もだいぶ進み、気分も良かったので、羽化登仙の心地でそのまま寝入ってしまった。
「羽化登仙」は、主に飲み会や宴会などでお酒を楽しんでいるシーンで用いられます。
プライベートでの友人や先輩、会社の同僚、上司など相手は誰でも構いません。特定の相手とお酒を飲んでいて、心地良い気分になれば、その状態は「羽化登仙」だと言えます。
人の気分の良さを表す言葉はいくつかありますが、その中でもお酒を飲んでいる時の気分の良さを表した四字熟語が「羽化登仙」ということです。なお、言い回しとしては「羽化登仙の気分」「羽化登仙の境地」「羽化登仙の心地」などが多いです。
まとめ
以上、本記事のまとめとなります。
「羽化登仙」=酒に酔って、いい気分になること。
「語源・由来」=身体に羽が生え、仙人のように気持ち良く飛び立つことから。『前赤壁賦』(蘇軾)
「類義語」=「壺中之天・酒池肉林・恍惚状態・活計歓楽・自己陶酔・浅酌低唱」
「対義語」=「阿鼻叫喚・地獄絵図・艱難辛苦」
「英語訳」=「a sense of release (as if one had wings and were riding on air)」
「羽化登仙」は、飲みの席で気分がよくなることの例えとして使うことができます。ただ、飲みすぎてしまっては元も子もないので程々にしておくことも重要です。程よい気分で心地よくなってきた時にこの四字熟語を使うようにして下さい。