うだつが上がらない 意味 語源 由来 例文

「うだつが上がらない」という慣用句をご存知でしょうか?

使い方としては、「あの人はうだつが上がらない」「うだつが上がらない社員だ」などのように用いられます。

気になるのはやはり「うだつ」という言葉の意味だと思います。そこで今回は、「うだつが上がらない」の意味や語源、類義語などを含め詳しく解説しました。

うだつが上がらないの意味

 

最初に、基本的な意味を紹介します。

【うだつが上(あ)がらない】

世俗的な意味での出世が中々できない、金銭的に恵まれる状況にならない、などの意味の表現。

出典:実用日本語表現辞典

うだつが上がらない」とは「なかなか出世ができない・暮らしがよくならない」などの意味を表したものです。

例えば、今の会社にいたとしても、将来的に出世はできないだろうと考えている社員がいたとします。

具体的には、給料がほとんど上がらなかったり、部長や課長などの上からの評価が低かったりといったことです。

このような場面では、「うだつが上がらないので、彼は転職を考えている」などと言うことができます。つまり、なかなか出世ができないので転職を考えているという意味です。

「うだつが上がらない」はこのように、将来的に生活や地位などが向上されず、金銭的に恵まれない状況になることを表した慣用句となります。

うだつが上がらないの語源・由来

うだつが上がらない 語源 由来

「うだつが上がらない」の語源はいくつかありますが、一般的には次の二つの説が有力と言われています。

①「梲(うだち)が転じたもの」 ②「卯立(うだつ)が転じたもの

まず、「梲(うだち)」とは「建物の梁(はり)の上に立て、棟木(むなぎ)を受ける短い柱のこと」を指します。

簡単に言えば、「建物を建てる上で重要な木材」のことだと考えて下さい。目立つ部分ではないですが、建築上、重要な箇所と言われています。

この梲を上げることは昔から「棚上げ(たなあげ)」と言い、家を完成させることを意味していました。

つまり、「うだちを上げられない」=「家を持てない貧しい人」を指していたわけです。転じて、現在の「暮らしがよくならない」という意味につながったと言われています。

そして、もう一つは「卯立(うだつ)が転じたもの」という説です。「卯立」とは「屋根より少し高く張り出した壁のこと」を指します。

「卯立」を作る目的は色々あります。例えば、見た目をおしゃれにして装飾性を保ったり、雨風を防いだりといったことです。

しかし、一番の目的は隣家との間に壁を作り、火災を防止するためだと言われています。昔は木造住宅が主だったので、隣の家が燃えると飛び火により多大な被害を受けてしまいました。

そこで、「卯立」を設けて火災を予防したわけです。この「卯立」を作るには、それなりに裕福な家でないと作ることができません。

ここから同じく、「卯立を上げられない」=「お金に余裕がない人」を指すようになったと言われています。

以上、二つの語源を解説しました。いずれにせよ、「うだつ」という言葉は建築の用語からきたものだと言われています。

木材をそろえるには、ある程度のお金を用意しないといけません。そのお金を用意できないのは、「出世ができない人」だと判断されたわけです。

うだつが上がらないの類義語

 

続いて、「うだつが上がらない」の類義語を紹介します。

鳴かず飛ばす(なかずとばず)】⇒これといった活躍を何もしないこと。
芽が出ない(めがでない)】⇒物事がうまく行かず、停滞する様子。
三下(さんした)】⇒取るに足らない者。下っ端の者。※「ばくち」でサイの目が3より小さいのは、まず勝てないことから。
甲斐性なし(かいしょうなし)】⇒頼りにならないこと・頼りにならない人。「甲斐性」とはお金を稼ぐ力のことを指す。
ろくでなし】⇒仕事もせずに世の中の役に立っていない人。

ことわざや慣用句で類義語と呼べるのは、そこまで多くはありません。この中だと、「鳴かず飛ばす」は比較的意味も近い言葉だと言えます。その他、一般的な語だと、「売れない・評価されない」といった言葉も類義語に含まれます。

逆に、「対義語」としては「立身出世(りっしんしゅっせい)」が挙げられます。「立身出世」とは「社会的に高い地位を得ること」を表した四字熟語です。主に会社内での出世に対して使われます。

うだつが上がらないの英語訳

 

「うだつが上がらない」は、英語だと次のように言います。

not get on in the world

not get ahead the world

「get」は「手に入れる」ではなく、「出る」という意味もあります。そのため、「not get」で「出ない」という訳になります。

また、「world」は「世界」ではなく、ここでは「世間・世の中」などの意味で使われています。

以上、両者を合わせることで、「世の中に出ることがない」=「出世できない」という訳になります。

例文だと、それぞれ以下のような使い方です。

I can’t get on in the world if I remain here.(ここにいてもうだつは上がらないだろう。)

She doesn’t seem to get on in the world.(彼女はうだつが上がらないみたいだね。)

うだつが上がらないの使い方・例文

 

最後に、「うだつが上がらない」の使い方を例文で確認しておきましょう。

  1. そんな会社にいたら、いつまで経ってもうだつが上がらないだろう。
  2. 一流企業に入って10年。未だに平社員なんてうだつが上がらない状態だね。
  3. 私から見た第一印象は、うだつが上がらない情けない男という感じだった。
  4. 申しわけないが、娘にはうだつの上がらない彼と一緒に居て欲しくない。
  5. うだつの上がらないミュージシャンと付き合っている?早く別れなさいよ。
  6. 飲食店を開業してからずっとうだつが上がらない生活を続けています。

 

「うだつが上がらない」は、日常生活からビジネスまで幅広く使うことができます。どの場面でも共通しているのは否定的な意味として使うということです。

基本的にこの言葉を使う時は、現在の収入や地位がもっぱら低い人を対象とします。したがって、例文4や5のように「そんな人と付き合うのはよせば?」という一種の幻滅のような感情を込めて使うことが多いです。

なお、最後の例文のように自分自身に対して使う場合は自己を卑下する意味を込めて使われます。現在の自分の収入だけでなく、自分の境遇の悪さを嘆いたり情けなく感じたりする場面で用いられます。

まとめ

 

以上、本記事のまとめです。

うだつが上がらない」=なかなか出世ができない。暮らしがよくならない。

語源・由来」=「梲・卯立」を上げられないのはお金に余裕がないため。

類義語」=「鳴かず飛ばす・芽が出ない・甲斐性・ろくでなし」

英語訳」=「not get on in」「not get ahead」

「うだつ」の由来は「木材」と「防火壁」のどちらかから来ています。いずれにせよ建築に関係する言葉なので、この機会にぜひ使い方を覚えてみてはどうでしょうか。