日程やスケジュール、温度などを整えることを「調整」もしくは「調節」と言います。どちらの言葉も日常的によく使われているものです。
ただ、この場合両者をどのように使い分ければいいのかという問題があります。そこで今回は、「調整」と「調節」の違いについて詳しく解説しました。
調整の意味
まずは、「調整」の意味からです。
【調整(ちょうせい)】
① 調子の悪いものに手を加えてととのえること。
② ある基準に合わせてととのえること。過不足なくすること。
③ つり合いのとれた状態にすること。折り合いをつけること。
出典:三省堂 大辞林
「調整」とは「調子の悪いものを整えたり、過不足に手を加えたりして、全体として釣り合いのとれた状態にすること」を意味します。
例えば、以下のように使います。
- 「機械を調整する」⇒故障した状態から元に戻す。
- 「会社が年末調整する」⇒税金額の過不足を計算する。
- 「みんなの意見を調整する」⇒賛成・反対と乱れた意見をまとめる。
このように、物事の全体を悪い状態から整えることを「調整」と言うわけです。
ポイントは、「悪い状態」と「全体」の二点にあります。逆に言えば、良い状態から整えたり、部分的に整えたりするような際は「調整」は使いません。
調節の意味
続いて、「調節」の意味です。
【調節(ちょうせつ)】
⇒物事の具合がよいようにととのえること。ほどよく釣り合いがとれるようにすること。
出典:三省堂 大辞林
「調節」とは「物事の具合がよいように整えること。ほどよく釣り合いがとれるようにすること」などを意味します。
例えば、以下のような使い方です。
- 部屋の室温を調節する。
- テレビの音量を調節する。
- お風呂の湯加減を調節する。
「調節」は、物事の程度を現在の状態から程よい具合にすることを表します。
ポイントは、「現在の状態から」という点です。言い換えれば、「調節」の場合は良い・悪いなどの絶対的な基準はないことになります。
部屋の室温やテレビの音量、お風呂の温度などは人によって好みが違います。このような絶対的な基準がないものを整えることを「調節」と言うわけです。
調整と調節の違い
ここまでの内容を整理すると、
「調整」=物事の全体を悪い状態から整えること。
「調節」=物事の程度を現在の状態から程よい具合にすること。
ということでした。
両者の違いを二つの点から比較したいと思います。
一つ目は、「状態の違い」です。
「調整」は、調子の悪い状態から整えるような際に使います。具体的には、機械の故障や税金の過不足、意見の不一致といった悪い状態にある時です。
一方で、「調節」は現在の状態から整える時に使います。この時に「良い・悪い」などの条件は特に指定されません。あくまで、その時の状態から程良くいい状態へするという意味です。
そして二つ目は、「対象のとらえ方の違い」です。
「調整」は、物事を全体として見て望ましい状態に整えるときに使います。例えば、日程やスケジュールなどは「調整する」と言います。これはなぜかと言いますと、「自分や相手の日程を合わせながら、仕事全体の予定をととのえる」という意味だからです。
一方で、「調節」は、全体というよりも個々の機能を整えるときに使います。例えば、エアコンの温度などは「調節する」と言いますが、その理由は「エアコンの機能の中の一つを整える」という意味だからです。
以上の事から考えますと、「調整」の方が「調節」よりも物事を広くとらえた言葉という結論を出すこともできます。
なお、両者の違いは漢字の語源から比較しても分かりやすいです。
「調整」の「整」は「整理・整頓」などの言葉があるように「そろえる・乱れたものをきちんとする」という意味があります。対して、「調節」の「節」は「節制」「節度」などがあるように「ほどよい・適度」という意味があります。
ここから両者を比較すると、次のような意味になります。
「調整」=乱れをなおして、そろえる。「調節」=ほどよく適切にする。
つまり、「調整」を使う時は大前提として「乱れた状態にある」ということです。一方で、「調節」の方は必ずしも乱れた状態にあるとは限りません。
「調節」は、あくまで物事の程度やさじ加減を適切にする言葉であることが分かるかと思います。このように漢字本来の意味から覚えておけば、両者の違いを忘れにくいでしょう。
使い方・例文
最後に、それぞれの使い方を例文で確認しておきます。
【調整の使い方】
- 時計が壊れてしまったので、調整してもらうことにした。
- 来月の日程調整はマネージャーにすべて任せることにします。
- 総理は各国の意見を調整して最終的な結論を出したようです。
- 去年払いすぎた税金があるので、うまく調整するようにした。
- 成績が良くないため、しばらく二軍の施設で調整することになった。
【調節の使い方】
- 冷房の温度を調節して、程よい快適な空間にする。
- テレビの音を聞きやすいように、音量を調節した。
- 机のねじの締め付けをドライバーで程よく調節した。
- 火加減を調節しながら、うまく肉を焼いてください。
- イスの高さを自分の座高に合うように調節する。
「調整」の方は、悪い状態にある全体を整えるような時に使われます。例文にあるように、壊れた時計や整っていない日程、まとまらない意見などといったものです。
対して、「調節」を使う対象は「温度」「音量」「火加減」「高さ」など絶対的な基準がありません。言ってみれば、「人の好み」のようなものです。このような「良い・悪い」などの判断がつかないものに対しては「調節」を使うことになります。
まとめ
以上、本記事のまとめとなります。
「調整」=調子の悪いものを整えたり、過不足に手を加えたりして、全体として釣り合いのとれた状態にすること。
「調節」=物事の具合がよいように整えること。ほどよく釣り合いがとれるようにすること。
「違い」⇒「調整」は「悪い状態から全体を整えること」で、「調節」は「現在の状態から個々の機能を程良くすること」を表す。
「調整」は、乱れをなおしてそろえることですが、「調節」は、ほどよく適切にすることです。「調節」に関しては絶対的な基準などはないということも覚えておきましょう。