「猪突猛進」という四字熟語があります。普段の文章でもよく使われており、ニュースなどでも目にする言葉です。
漢字から推測すると、「何かに向かって突き進む」というイメージではないでしょうか。ただ、この言葉は「良い意味・悪い意味」のどちらで使うか迷う人も多いです。
そこで今回は、「猪突猛進」の意味や使い方、語源・類語などを分かりやすく解説しました。
猪突猛進の意味・読み方
最初に、読み方と基本的な意味を紹介します。
【猪突猛進(ちょとつもうしん)】
⇒一つのことに向かって、向こう見ずに猛烈な勢いで、つき進むこと。
出典:三省堂 大辞林
「猪突猛進」は「ちょとつもうしん」と読みます。まれに「しょとつ」と読んでしまう人がいるので注意してください。
意味は、「一つの事に向かって、激しい勢いで突き進むこと」です。上の説明の「向こう見ず」とは「後先や将来のことを考えない様子」のことだと考えてください。
例えば、入社して間もない経験が浅い社員がいたとします。
彼は若さゆえに、先のことを考えずに無計画で行動する悪い癖がありました。そして、上司からもその癖を注意されていました。
このような場面では、「彼は猪突猛進する悪いクセがある」などと言うことができます。
あるいは仕事でなくても構いません。スポーツや戦いなどで事前の作戦を無視して我先にと勢いだけで突き進むような人がいたとします。このような人も、「猪突猛進である」と言うことができます。
つまり、「猪突猛進」とは後先を考えずに勢いだけで激しく突き進む様子を表す四字熟語ということです。
この言葉には、考えの浅さ・融通の利かなさなど人間の性格における負の側面が含まれています。したがって、原則として否定的な意味として使われると考えて問題ありません。
猪突猛進の語源・由来
「猪突猛進」は、「猪突」と「猛進」から成る四字熟語です。
まず「猪突」は「猪(いのしし)が突(つ)く」と書くので、「猪がまっすぐ突く様子」を表します。そして、「猛進」は「猛々(たけだけ)しく進む」と書くので、「勢い激しく進む様子」を表します。
よって、「猪突猛進」とは「イノシシのように激しく直線的に突き進む様子」を表す言葉となります。転じて、現在では「後先考えずに突き進む」という意味で人に対して使われているのです。
イノシシという動物は猫やライオンなどの爪で襲い掛かる動物とは違い、頭を一直線に向けて攻撃してきます。「猪突猛進」とはそのような激しく突き進むイノシシの様子を表した四字熟語ということです。
猪突猛進の良い言い方は?
ところで、「猪突猛進」を良い意味として使うにはどうしたらよいでしょうか?すでに説明した通り、この言葉は原則として悪い意味で使います。
よって、どうしても良い意味として使いたい場合は、前後に補足的な文を加えるのがよいでしょう。例えば、以下のような文です。
- 彼はよく猪突猛進するが、若い内は行動力があった方がよい。
- 全く行動しないよりも、猪突猛進した方がよい場合もある。
前者の文は、「若い内は勢いよく突き進むことも必要である」という意味合い、そして後者の文は「向こう見ずに行動するのも時には大事である」という意味合いで用いられています。
「猪突猛進」には「がむしゃらに進む」という一種のエネルギッシュな要素が含まれています。したがって、行動力や実行力を強調した文にすれば、自然と前向きで良い意味の文となるのです。
また、その他の方法としては「違う四字熟語を使う」という選択肢もあります。例えば、「勇往邁進(ゆうおうまいしん)」という四字熟語です。
「勇往邁進」とは「目的に向かって、勇ましく突き進むこと」を意味する四字熟語です。
こちらは純粋に良い意味でしか使いません。そのため、もしも行動力がある人をほめたい場合は「猪突猛進」よりも「勇往邁進」を使う方が無難だと言えます。
猪突猛進の類義語
続いて、「猪突猛進」の「類義語」を紹介します。
以上、五つの類語を紹介しました。
様々な言い換えがありますが、この中では「一意専心」と「真往邁進」の二つが良い意味として使います。他の四字熟語は、「猪突猛進」と同様にすべて悪い意味として使われます。
猪突猛進の対義語
逆に、「対義語」としては次の二つが挙げられます。
こちらは「よく考える・深く考える」といった意味の四字熟語です。行動する前によく考えたり計画を練ったりする言葉が反対語となります。
他には、「石橋を叩いて渡る」なども反対語に含まれます。「石橋を叩いて渡る」とは「用心の上にさらに用心を重ねて物事を行うこと」を表したことわざです。
猪突猛進の英語訳
「猪突猛進」は、英語だと次の二つの言い方があります。
①「rush recklessly」
②「make a headlong rush」
①の「rush」は「急ぐ」という意味の動詞、「recklessly」は「無謀に・むやむやたらに」という意味の副詞です。両者を合わせることで、「むやみやたらに急ぐ」=「猪突猛進」と訳すことができます。
また、②の「headlong」も「向こう見ずに・軽率に」などの意味を表す副詞です。こちらも「向こう見ずに急ぐこと」を表した表現となっています。
例文だと、それぞれ以下のような言い方です。
You should stop rushing recklessly.(猪突猛進するのはやめた方がいい。)
He is the type that make a headlong rush.(彼は猪突猛進型である。)
猪突猛進の使い方・例文
最後に、「猪突猛進」を使った例文を紹介しておきます。
- 社長は猪突猛進型の人間なため、無謀な決断をすることが多い。
- 彼は思い立つと猪突猛進になり周りが見えなくなってしまう癖がある。
- 猪突猛進で頑張るのもいいが、もっと慎重になった方がいいと思います。
- 猪突猛進タイプの指揮官なため、周囲の部下は皆不安がった様子を見せた。
- 猪突猛進型な彼女は、冷静に状況を分析する能力が低いことで知られている。
- 猪突猛進のごとく、相手チームを勢いよく攻め落とす姿が印象的だった。
- 彼は今までとは異なり、敵陣に向かって猪突猛進の勢いで突き進んでいった。
猪突猛進は、例文のように相手の性格を否定的に表すような場面で使うのが基本です。「向こう見ずな行動」「熟慮しない行動」「融通の利かない行動」などをイノシシに例えて用いられます。
ただし、場合によっては、軍事やスポーツなどの状況を表す場面で使われることもあります。例えば、最後の2つの文(6と7)です。
この場合は、「良い・悪い」というよりも「突き進む時の勢いの激しさ」を強調するような時に使います。基本は否定的な使い方をしますが、このような用例もあるということを覚えておきましょう。
まとめ
以上、本記事のまとめです。
「猪突猛進」=向こう見ずに激しい勢いで突き進むこと。
「語源・由来」=イノシシのように、激しく直線的に突き進む様子から。
「使い方」⇒原則として、悪い意味で使う。
「類義語」=「暴虎馮河・匹夫之勇・直往邁進・一意専心・直情径行」
「対義語」=「熟慮断行・深謀遠慮」
「英語訳」=「rush recklessly」「make a headlong rush」
目標に向かって突き進むのは、決して悪いことではありません。しかし、猪突猛進が言いたいのはあくまで、行動する前によく考える必要があるということです。