「沈思黙考」という四字熟語をご存知でしょうか?
漢字だけを見ると「思」と「考」という字があるで、何となく思考に関する言葉というイメージを持てます。ただ、この言葉の具体的な使い方が分かりにくいと感じる人も多いようです。
そこで本記事では、「沈思黙考」の意味や読み方、由来、対義語などを含め詳しく解説しました。
沈思黙考の意味・読み方
最初に、読み方と基本的な意味を紹介します。
【沈思黙考(ちんしもっこう)】
⇒黙ってじっくりと深く物事を考え込むこと。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「沈思黙考」は、「ちんしもっこう」と読みます。よくある読み間違えとして、「ちんしもくこう」があるので注意してください。正しくは「ちんしもっこう」と読みます。
そして意味ですが、「沈思黙考」とは「黙ってじっくりと、深く物事を考えること」を表します。
例えば、ビジネスの現場でトラブルが起こり、解決しなければいけない問題が起こったとしましょう。問題を解決するには、まずどうして今回の問題が起こったかという原因を追究する必要があります。
そんな時に、どうすればいいかじっくりと考えたり、何をすべきかを深く頭の中で考え込んだりすることを「沈思黙考」と言うわけです。
「沈思黙考」は、ただ単に物事を考える行為ではありません。そして、ベラベラと話しながら考えを巡らすことでもありません。
「ひたすら言葉を発することなく、じっくりと深く物事を考え込むこと」。これが「沈思黙考」のイメージということになります。
沈思黙考の語源・由来
「沈思黙考」は、「沈思」と「黙考」の二つが合わさってできた四字熟語です。
まず、「沈思」とは「沈んで思うこと」と書くので、「頭の奥深くまでじっくりと思考を巡らすこと」を意味します。そして、「黙考」とは「黙って考えること」、すなわち「何も口を発さずに考え抜くこと」を意味します。
以上の事から考えますと、「沈思黙考」とは「じっくりと思考を巡らせ、かつ黙って考え抜くこと」を意味する言葉であることが分かると思います。
一言で「考える・思う」と言っても様々なタイプの人間がいます。
- 周りと相談しながら考えるタイプ。
- 口で言葉を発しながら考えるタイプ。
- 深く考えずに純粋に感じたことを思うタイプ。
「沈思黙考」というのは上記のようなタイプではなく、あくまで「一人で静かに、そしてじっくりと考えること」を意味するわけです。
なお、この四字熟語は中国の故事に由来するようなものではありません。明確な出典があるわけではないため、単に「沈思」と「黙考」を合わせて作られた四字熟語だと考えられます。
沈思黙考の類義語
続いて、「沈思黙考」の「類義語」を紹介します。
基本的には「じっくりと深く考える」という意味を持つ言葉が類義語となります。
「沈思黙考」の場合は、そこに「静かに」という意味が加わるため、「同義語」と呼ばれるものはありません。この中だと、「沈思凝想」は一番意味が近い四字熟語と言えるでしょう。
沈思黙考の対義語
「沈思黙考」の「対義語」は以下の通りです。
こちらは「物事を深く考えない様子」「軽々しい様子」などを表した言葉です。
「じっくりと考えること」の反対語なので、どれも「考えが浅いこと」を意味します。対義語の場合は、いずれも否定的な場面で使うのが特徴だと言えます。
沈思黙考の英語訳
「沈思黙考」は、「英語」だと次のような言い方があります。
「muse(熟考する)」
「meditate(沈思する・熟慮する)」
「sit in silent thought(熟慮する・熟考する)」
「muse」は「じっくりと深く考える」、「meditate」は「深く静かに考える」という意味の動詞です。それぞれ「瞑想する」という意味も持っており、心穏やかに考えるという点では共通しています。
最後の「sit in silent thought」は直訳すると、「静かな考えの中に座る」となります。落ち着いてどっしりと座ってから物事を考えるようなイメージが分かりやすいでしょう。
例文だと、それぞれ次のような言い方です。
I will muse on the difference between A and B.(私はAとBの違いについてじっくりと考えるつもりだ。)
She decided to meditate on the problem. (彼女はその問題について沈思することに決めた。)
I must sit in silent thought this problem.(私はこの問題については熟慮しなければならない。)
沈思黙考の使い方・例文
最後に、「沈思黙考」の使い方を例文で紹介しておきます。
- 沈思黙考の末、ようやく彼女は重い口を開き始めた。
- 彼は一見軽率に見えるけども、実は沈思黙考型の人間なのかもしれない
- 最近は仕事が忙しいので、なかなか沈思黙考する機会が取れないです。
- あいつは沈思黙考タイプの人間なので、あまり無茶なことはしないだろう。
- 複雑な問題なのですぐに答えを出す必要はない。もっと沈思黙考すべきだ。
- 素早く行動することも大事だが、時には沈思黙考してじっくり考えた方がいい。
- 人生について迷うのは当然である。誰しも沈思黙考にふける時間があってもいい。
「沈思黙考」は、上記のように「沈思黙考する」「沈思黙考型」「沈思黙考タイプ」など様々な使い方ができます。いずれの場合も共通しているのは良い意味として使うということです。
物事を始める時は、何事も「考えること」からスタートします。この「思考」の部分でつまづくと、その後の「行動」の部分で失敗することになってしまいます。
そのため、「冷静にじっくりと考える」「深く静かに考える」という意味でこの「沈思黙考」を使うわけです。もちろん、考えすぎて行動が遅くなるのは良くありませんが、「沈思黙考」にはそのような意味は含まれないものと考えて下さい。
まとめ
以上、本記事のまとめです。
「沈思黙考(ちんしもっこう)」=黙ってじっくりと、物事を深く考えること。
「語源・由来」=じっくりと思考を巡らせ、黙って考え抜くことから。
「類義語」=「沈思凝想・熟思黙想・千思万考・三思九思・熟慮断行・多謀善断」
「対義語」=「軽率短慮・軽慮浅謀・皮相浅薄・軽挙妄動」
「英語訳」=「muse」「meditate」「sit in silent thought」
人は沈黙してじっくりと考えることにより、物事の真理を突き止めることができます。「沈思黙考」とは、そのような深く考え込む様子を表した四字熟語だと覚えておきましょう。