自動車やエアコン、家などを直すことを「修理」あるいは「修繕」と言います。また、場合によっては「修復」と言ったりもします。
これらの言葉はどう使い分ければよいのでしょうか?本記事では「修理」と「修繕」の違い、さらに「修復」についても解説しました。
修理の意味
まずは、「修理」の意味からです。
【修理(しゅうり)】
⇒壊れたり傷んだりした部分に手を加えて、再び使用できるようにすること。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「修理」とは「壊れたり傷んだりした部分に手を加えて、再び使えるようにすること」を意味します。
主な使い方としては、以下の通りです。
- テレビを修理する。
- 冷蔵庫を修理する。
- 時計を修理する。
「修理」は「再び使えるようにする」という点がポイントです。具体的には、物の部品やパーツなどを交換し、壊れた機能を回復させるようなことをします。
したがって、「修理」するものは基本的に機械や電化製品など機能があるものが対象となります。
修繕の意味
続いて、「修繕」の意味です。
【修繕(しゅうぜん)】
⇒壊れたり悪くなったりしたところを繕い直すこと。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「修繕」とは「壊れたり悪くなったりしたところを繕い直すこと」を意味します。
「繕(つくろ)う」とは簡単に言うと「見た目を整えること」だと考えてください。つまり、「見た目を整えて直すこと」を「修繕」と言うわけです。
主な使い方としては、以下のようになります。
- くつを修繕する。
- ズボンを修繕する。
- マンションを修繕する。
「修繕」は、衣類やマンションなどを直す場合によく使われます。この場合は「直す」と言っても、完全に使えない状態のものを対象とするわけではありません。
例を挙げますと、ズボンであれば「穴があいた」、マンションであれば「屋根にヒビが入った」といった程度です。
つまり、「機能は果たしているけども、見栄えが悪いから直そう」。こういった場合に「修繕」を使うことになります。
修理と修繕の違い
ここまでの内容を整理すると、
「修理」=壊れた物を再び使えるようにすること。「修繕」=壊れた物を繕い直すこと。
ということでした。
つまり両者の違いを一言で言うと、「直し方の違い」ということになります。
「修理」は、部品を交換するなどしてモノの機能を直すような場合に使います。一方で、「修繕」は、服をぬったり屋根を交換したりなどモノの見た目を直すような場合に使います。
簡単に言えば、「修理」は「機能を直すこと」を表し、「修繕」は「見た目を直すこと」を表すということです。
大前提として、「修理」する対象は機能を果たせなくなった状態にあります。対して、「修繕」する対象は機能を果たせなくなった状態とは限りません。
場合によっては、見た目が悪いだけということもあります。そのため、「機能と見た目のどっちを直すか」という判断が実質的な基準となるわけです。
ただし、この判断は場合によってはどちらにすればよいか分かりにくいケースもあります。例えば、くつを直すような場合です。
くつに関しては、小さな穴が空いた程度なら「修繕」でいいでしょう。ところが、かかとの部分が壊れてしまった場合はどうでしょうか?
この場合は、本来の「歩く」という機能ができなくなっています。したがって、かかとが壊れてしまった場合は、「修理」を使うのが妥当とも言えるのです。
また、車を直すような場合でも、細かなキズ程度であれば「修繕」ですが、エンジンが故障してしまったなら「修理」です。
では、衝突事故で車体が破壊されてしまった場合はどうでしょうか?この場合は、「修繕」も含んだ「修理」とも言えます。つまり、この辺りの判断は直す対象によっても異なってくるわけです。
ちなみに、大手自動車メーカーのトヨタでは下記のように社内独自の基準を持っているようです。
「修理」=原因を取り除き、同じ故障が起きないように調整する。
「修繕」=原因は取り除かず、応急処置だけをする。
上記の基準は、それぞれの言葉の語源を比較すると納得できます。
「修理」の「理」は、「理由」「理性」などの言葉があります。ここから、「壊れた理由を分析し、再び壊れないように直す」という意味で使っているのだと思われます。
一方で、「修繕」の「繕」は、「つくろう」という意味です。これはすでに説明した通り、「見た目や外観を良くする」という意味があります。
ここから、「見た目だけでも応急処置する」という意味で使っているのだと思われます。
ただし、この基準はあくまで自動車業界に限った話です。例えば、マンションの修繕などは明らかに応急処置ではありません。
そのため、自動車業界以外では必ずしもこの基準に当てはまるわけではないと考えて下さい。
修復の意味
似たような言葉として、「修復」があります。
【修復(しゅうふく)】
①建造物などの、傷んだ箇所を直して、もとのようにすること。しゅふく。
②破綻をきたした関係を元通りに戻すこと。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「修復」とは「建造物などの傷んだ箇所を直して、元通りにすること」を意味します。
使い方としては、以下の通りです。
- 仏像を修復する。
- 寺の本堂を修復する。
「修復」は、主に建物を元通りにする時に使う言葉です。したがって、機械や家電などを直す時のような「機能を戻す」という意味までは含まれていません。
また、「修復」は基本的に見た目を直す場合に使います。ここまでは「修繕」と同じ意味ですが、「修繕」との違いは「直し方の完成度」にあります。
「修復」は、限りなく100%に近い状態まで戻すような場合に使います。
一方で、「修繕」は、ある程度繕った状態まで戻す場合に使います。そのため、ズボンや服を直すのは縫い目が残ってしまうので、「修復」ではなく「修繕」を使うのです。
さらに補足すると、「修復」は人間関係にも使うことができるのが特徴です。例えば、「友好関係を修復する」のように破綻をきたした関係を元通りにするような意味として使うこともできます。
「修理」や「修繕」に関しては、当然このような使い方はできません。
使い方・例文
最後に、それぞれの使い方を例文で確認しておきましょう。
【修理の使い方】
- 業者が家に来て、冷蔵庫の修理をしてもらった。
- テレビが故障してしまったので、修理を依頼した。
- エアコンの修理を業者にお願いするつもりです。
- タイヤがパンクしたので、自転車を修理に出した。
- 長年使っている古い時計を、修理に出すことにした。
【修繕の使い方】
- 傷がついてしまった服を、修繕に出すことにした。
- 地震で屋根が傷んでしまったので、修繕してもらう。
- 壁に穴を空けてしまったので、業者へ修繕を依頼した。
- マンションの修繕費用として、毎月1万円が徴収される。
- 築30年以上の物件なので、そろそろ修繕が行われる予定だ。
【修復の使い方】
- 銅像の壊れた箇所を元の姿に修復する。
- 彼との関係修復を目指して対話を続ける。
- 両国の関係は、もはや修復不可能となった。
まとめ
以上、本記事のまとめとなります。
「修理」=壊れたり傷んだりした部分を再び使えるようにすること。
「修繕」=壊れたり悪くなったりしたところを繕い直すこと。
「修復」=建造物などの傷んだ箇所を直して、元通りにすること。破綻をきたした関係を元通りに戻すこと。
「違い」=「修理」は、機械や家電など壊れたモノの機能を直すこと。「修繕」は、衣類や建物など傷んだモノの見た目を直すこと。「修復」は、建物や人間関係など壊れたモノを完全に元通りにすること。
それぞれを見分けるポイントは、「機能と見た目のどちらを直すか」「直し方の完成度」の二点だと覚えておきましょう。