『主体という物語』は、教科書・現代の国語に収録されている文章です。定期テストの出題範囲にも含まれています。
ただ、本文を読むと筆者の主張が分かりにくいと感じる人も多いと思われます。そこで今回は、『主体という物語』のあらすじや要約、語句の意味などを簡単に解説しました。
『主体という物語』のあらすじ
本文は、内容により三つの段落に分けることができます。ここでは、各段落ごとのあらすじを簡単に紹介していきます。
①自分のことは自分が一番よく知っているという常識は、一種の信仰にすぎない。好き嫌いという素朴な感情にも主体性は及ばない。日常的な行為や判断は、たいてい無意識のうちに生ずる。判断や行動に対して、本人が想起する理由は無関係な場合が多い。
②行為や判断は、何らかの合理的理由があって主体的に選び取っている印象がある。だが、もっともらしい理由を捏造していることもある。自分の行為の原因がわからないから、妥当そうな理由が無意識に捏造されるのだ。
③我々は、自分の感情・意見・行動を理解したり説明したりする際、実際に生ずる心理過程の記憶に頼っているのではない。人間が心の動きを理解するのは、その人の所属する世界観による。自分の行動を誘発した真の原因は別にあっても、それが社会的な常識になじまない場合は、もっともらしい理由を選んで援用する。人間は理性的動物というよりも、合理化する動物だという方が実状に合っている。
『主体という物語』の要約&本文解説
筆者は、人間は自らの行動や判断によって主体的に物事を選ぶのではなく、何らかの情報によって無意識に物事を選ぶのだと主張しています。その事を証明するために、本文中では、靴下を使った実験や催眠術にかけられた人の例が挙げられています。
靴下を使った実験では、被験者が無意識にもっともらしい理由を捏造して自らの選択を正当化したこと、そして催眠術にかけられた人は、妥当そうな理由を持ち出して自らの行為を正当化したことが説明されています。
私たち人間は、たとえ本当の理由があったとしても、それが常識になじまなければ、無意識に妥当そうな理由を捏造するのだと筆者は考えているわけです。そしてその行為や判断は、所属する社会に広がっている世界観から来ているのだと述べています。
最終的に筆者は、人間は理性的動物というよりも、合理化する動物であると結論付けています。
「理性的動物」とは、合理的な理由に基づいて行為や判断をする動物のこと、そして「合理化する動物」とは、自分の行為の原因がよく分からないにもかかわらず、自分の属する社会や文化の常識に合わせて、もっともらしい理由を捏造する動物のことです。
つまり、人間は物事を客観的に正しく認識して行動する動物というよりも、自ら道理にかなったようにしようと思って行動する、あるいは無意識にするような動物だと筆者は考えているわけです。
『主体という物語』の意味調べノート
【信仰(しんこう)】⇒特定の対象を絶対のものと信じて疑わないこと。
【口実(こうじつ)】⇒一応の理由。
【舞台裏(ぶたいうら)】⇒ある事柄の行われる裏面。
【伏せる(ふせる)】⇒隠す。
【丈夫(じょうぶ)】⇒物がしっかりしていて壊れにくいさま。
【言及(げんきゅう)】⇒話がある事柄までふれること。
【皆無(かいむ)】⇒全くないこと。
【不合理(ふごうり)】⇒道理や理屈に合っていないこと。筋の通らないこと。
【虫の知らせ(むしのしらせ)】⇒はっきりした根拠はないが、何かよくないことが起こりそうであると感じること。
【吟味(ぎんみ)】⇒物事を念入りに調べること。
【被験者(ひけんしゃ)】⇒実験の対象となる人。
【素朴(そぼく)】⇒素直で飾り気のない様子。
【投影(とうえい)】⇒映し出すこと。
【当てずっぽう(あてずっぽう)】⇒いいかげんな見通しで事を行うこと。
【捏造(ねつぞう)】⇒でっちあげること。事実でないことを事実のようにこしらえること。
【人の常(ひとのつね)】⇒人間においては、ごく普通のこと。
【律する(りっする)】⇒ 一定の規範を設けて統制・管理する。
【想起(そうき)】⇒以前にあったことなどをおもいおこすこと。
【幻覚(げんかく)】⇒実際に感覚的刺激や対象がないのに、あるように感じること。
【~にすぎない】⇒それ以上ではない。ただ、~であるだけだ。
【生理的次元(せいりてきじげん)】⇒体の機能などの水準。
【経験則(けいけんそく)】⇒今まで経験した中で知った知識。
【喜怒哀楽(きどあいらく)】⇒喜びと怒り、悲しみと楽しみ。人間のさまざまな感情。
【合理的(ごうりてき)】⇒道理にかなっているさま。論理が通っているさま。
【繕う(つくろう)】⇒はたから見た感じがいいように、体裁をよくする。
【~にもかかわらず】⇒~のであるのに。
【暗示(あんじ)】⇒他人の心に無意識のうちに、ある観念をうえつけること。
【仕草(しぐさ)】⇒何かをするときのちょっとした動作や身のこなし。
【流布(るふ)】⇒世に広まること。広く世間に行き渡ること。
【因果律(いんがりつ)】⇒ある原因があって、そこから必然的な結果が生じること。
【援用(えんよう)】⇒自分の主張を助けるために、他の意見や文献などを引用すること。
【広義(こうぎ)】⇒広い意味。
【文化的産物(ぶんかてきさんぶつ)】⇒その人の属する文化における常識によって生み出される行為であること。
【あたかも】⇒まるで。
【依拠(いきょ)】⇒あるものに基づくこと。よりどころとすること。
【実状(じつじょう)】⇒ものごとの実際の状況。
『主体という物語』のテスト対策問題
次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。
①机をセッチする。
②勝つ見込みはカイムだ。
③材料をギンミする。
④吐き気をモヨオす。
⑤サイミン術をかける。
⑥ダトウな理由。
⑦悪い噂がルフする。
まとめ
以上、今回は『主体という物語』について解説しました。ぜひ定期テストの対策として頂ければと思います。