この記事の読了目安: 522

来るべき民主主義 解説 解説 意味調べノート 現代文 教科書 200字要約

 

『来るべき民主主義』は、教科書・現代の国語に出てくる文章です。定期テストなどにも出題されています。

ただ、本文を読むとその内容が分かりにくいと感じる部分も多いです。そこで今回は、『来るべき民主主義』のあらすじや要約、語句の意味などを簡単に解説しました。

『来るべき民主主義』のあらすじ

 

本文は、内容により4つの段落に分けることができます。ここでは、各段落ごとのあらすじを簡単に紹介していきます。

あらすじ

①政治とは何だろうか?政治の本質を考えるには哲学を経由するのがよい。二人の哲学者を通じて考えてみよう。

②一人目は、哲学者シュミットである。彼は、どんな分野もそこで扱われている諸問題を突き詰めていくと、ある究極的な区別に到達すると述べた。そして、政治の分野における区別は、「敵と友」であり、政治は、敵/友人の概念で定義されると考えた。

③もう一人の哲学者はアレントである。アレントは、人間の行為を<労働><仕事><活動>の三つに分類した。「労働」は、消費財を作る行為を指し、「生命」という人間の条件のために必要である。「仕事」は、この世界そのものを作り替えていくことを指し、人間が「世界」の中で生きなければならないので必要である。<活動>は、人間が物を介さずに行う唯一の行為であり、多数で生きねばならないと運命づけられているために行う人間の交わりである。そして、この多数性こそが政治の条件であるという。

④政治は複数の人間と単数の決定を結びつける営みである。だが、多と一を結びつけることは原理的に困難である。政治とはこの困難を無理にやっていることである。多から一を選ぶには必ず争いが生じ、敵と友との区別が出現する。アレントが指摘する人間の多数性こそが、政治がこのようなものでしかありえないことの条件である。

『来るべき民主主義』の要約&本文解説

 

200字要約政治の分野を特徴づけ、定義するのは敵か友かという区別である。政治は「活動」から生じる営みであり、「人間の条件」は多数性である。人間の多数性こそが、多数の人間の間を取りもつための政治という営みを要請する。したがって、多と一を結びつける政治には原理的困難があり、そこには必ず争いが生まれ、敵と友の区別が出現する。アレントの指摘する人間の多数性は、政治がそのようなものでしかありえないことの条件である。(198文字)

筆者はまず、二人の哲学者の意見を紹介して政治の本質を説明しています。

シュミットは、政治の分野を特徴づける区別は「敵と友」であると述べました。そして、アレントは人間の行為を「労働」「仕事」「活動」の三つに分類し、政治は「活動」から生じる営みであり、多数性こそが人間の条件だと述べました。

人間は必ず複数人存在しており、お互いが交流しながら生きています。一人だけで社会を生きるということはできません。社会は、多くの人が混じり合う多数性によって成り立っているのです。

しかし、そうだとするとここで問題が起こります。それは、政治における決定は一つしかありえないため、ある問題を解決する際には、必ず争いが生まれ、敵と友の区別が出現するということです。

例えば、橋を作るか、作らないかという問題は、どちらか一つに決定するしかありません。そのため、必ず賛成する人と反対する人に分かれて、敵と友が出現することになります。

このように、多と一を結びつける政治は、敵と友の区別を出現させてしまうことを避けられないものだと筆者は考えているわけです。

『来るべき民主主義』の意味調べノート

 

【本質(ほんしつ)】⇒物事の根本的な性質・要素。

【哲学(てつがく)】⇒世界や人生などの根本原理を追求する学問。

【経由(けいゆ)】⇒何かを行うとき、中間の機関などを通すこと。

【定義(ていぎ)】⇒物事の意味や内容を他と区別できるように、言葉で明確に限定すること。

【究極的(きゅうきょくてき)】⇒物事を最後まできわめるさま。

【道徳(どうとく)】⇒人が社会生活をするうえで守るべき行動の規範。

【教訓(きょうくん)】⇒教えさとすこと。いましめになる言葉。

【採算(さいさん)】⇒利益があるかどうか、収支を計算すること。

【根源(こんげん)】⇒物事のおおもと。

【美学(びがく)】⇒美の本質や構造を考察する学問。

【論点(ろんてん)】⇒議論の中心となる問題点。

【推進(すいしん)】⇒物事を目的に向けて進めること。

【政策(せいさく)】⇒政府や正統の施政方針や方策。

【概念(がいねん)】⇒事物の本質をとらえる思考の形式。また、あるものに対する大まかな理解やイメージ。

【生臭い(なまぐさい)】⇒欲望・利害などがからんでいるさま。

【初頭(しょとう)】⇒ある時代・時期の初めのころ。

【亡命(ぼうめい)】⇒主に政治的な理由により、自国から他国へ逃れること。

【テクノロジー】⇒科学技術。広く人間生活に必要なものを供給する科学的方法のすべて。

【耐久性(たいきゅうせい)】⇒長く耐えられ、長持ちする性質。

【営み(いとなみ)】⇒行為。行い。

【必要条件(ひつようじょうけん)】⇒ある事柄が成り立つために、必ずなくてはならない条件。

【敷衍(ふえん)】⇒広げること。広げて説明すること。

【要請(ようせい)】⇒必要だとして、強く願い求めること。

【取りもつ】⇒両者の間に入り、その仲をとりなす。

【合意を取り付ける】⇒互いの意見を一致させる。

【見解(けんかい)】⇒物事に対する考え方や価値判断。

【厄介(やっかい)】⇒扱いに手数がかかり、わずらわしいこと。

【提示(ていじ)】⇒差し出して見せること。

『来るべき民主主義』のテスト対策問題

 

問題1

次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。

①大阪をケイユして東京へ行く。

②開発計画をスイシンする。

タイキュウ性を確認する。

④会長就任をヨウセイする。

ヤッカイな事件に巻き込まれた。

解答①経由 ②推進 ③耐久 ④要請 ⑤厄介
問題2『政治の分野においてはそれは何か?』とあるが、ここでの「それ」とは何を指すか?
解答例政治の分野において、政治を特徴付け、定義する究極的な区別。
問題3『シュミットと同世代のもう一人の哲学者からそのことを考えよう。』とあるが、「そのこと」とは何を指すか?
解答例我々にとって大切な政治の中に敵と友という対立が現れてくる理由。
問題4『それに対応する<人間の条件>は、「多数性」である。』とあるが、ここでの「多数性」とはどのようなことか?
解答例人間は一人ではなく多数いて、互いに混じり合い、交流しながら生きることを運命付けられた存在であるということ。
問題5『政治が困難で厄介なのは、この原理的に無理なことをやっているからだ。』とあるが、「原理的に無理なこと」とはどのようなことか?
解答例様々な見解が存在することがらについて、多と一を結びつけて一つの決定を導き出すこと。

まとめ

 

以上、今回は『来るべき民主主義』について解説しました。ぜひ定期テストの対策として頂ければと思います。

The following two tabs change content below.

国語力アップ.com管理人

大学卒業後、国語の講師・添削員として就職。その後、WEBライターとして独立し、現在は主に言葉の意味について記事を執筆中。 【保有資格】⇒漢字検定1級・英語検定準1級・宅地建物取引士など。

最新記事 by 国語力アップ.com管理人 (全て見る)