「小康状態」という四字熟語を聞いたことがあるでしょうか?
「小康状態を保つ」「小康状態です」などのように用いられ、主に病気やケガにかかった人を対象とします。
普通に生活する上では、なかなか聞かない言葉だと思われます。ところが、実際は病気以外にも天気や経済、外交など様々な場面で使われている言葉です。
本記事では、そんな「小康状態」の意味や使い方、語源、反対語などを解説しました。
小康状態の意味・読み方
最初に、読み方と基本的な意味を紹介します。
【小康状態(しょうこうじょうたい)】
⇒一旦悪くなっていたものがやや回復して落ち着いている状態のこと。
「小康を保っている」などとも言われる。
出典:実用日本語表現辞典
「小康状態」は「しょうこうじょうたい」と読みます。
意味は「いったん悪くなったものがやや回復し、落ち着いている状態のこと」です。
例えば、ある人が急に倒れて入院することになったとします。しかし、入院して次の日には容態が回復し始め、とりあえずは落ち着いている状態になりました。
このような状態は、まさに「小康状態である」と言うことができます。
「小康状態」は、危篤(きとく)の人の容体が少し回復した程度です。したがって、その人の完全な回復を示すものではありません。
あくまで最悪の状態は脱したものの、危険であることに変わりはないのです。
もしもこの言葉を医者から投げかけられたとしても、「依然として注意を要する状態」「いつ容体が急変してもおかしくない状態」だと考えて問題ありません。
明確な定義があるというわけではないですが、底を脱してわずかでも安定が見られるようであれば小康状態と言うことが多いです。
小康状態の語源・由来
「小康状態」は、「小康」と「状態」に分けることができる四字熟語です。
まず、「小康」の「小」は、「小さい・わずかな」という意味です。そして、「康」は、「健康」という言葉があるように、「無事・すこやか・安らか」などの意味です。
すわなち、「小康」とは「わずかな無事・わずかな安らかさ」を表すことになります。
一方で、「状態」は「ある時点での人やモノの様子」のことです。こちらは「精神状態」「膠着状態」などのように普段からよく使われている言葉です。
以上、まとめますと「小康状態」とは「小さな無事が続く様子」を表す言葉となります。転じて、現在の「いったんは落ち着いている状態」という意味になるわけです。
語源からみても、「小康状態」はまだまだ安心できない状態ということが分かるでしょう。
小康状態の類義語
続いて、「類義語」を紹介します。
「小康状態」と似た言葉はいくつかありますが、いずれも「最悪の状態からは脱する」という意味は共通しています。ただ、全く同じ意味の言葉(同義語)というのはありません。
なお、よく似た間違えやすい言葉として「危篤(きとく)」と「快方に向かう」があります。
「危篤」とは「病気の症状が重く、今にも死にそうな状態」のことです。
例えば、脳卒中で急に倒れて意識不明の人などが挙げられます。危篤は、小康状態のように若干の回復などはせず、その人の命が極めて危険な状態を表す言葉です。
また、「快方に向かう」とは「病気がどんどんと回復するような状態」のことです。完全な回復というわけではありませんが、それに近いほど病気が良い方向に向かっていく様子を表した表現です。
どちらも医療の現場ではよく使われるので、覚えておくとよいでしょう。
小康状態の対義語
「小康状態」の厳密な「対義語」と呼べるものは存在しません。ただ、それに近い意味の言葉というのはあります。
例えば、「悪化」や「良化」などです。「悪化」は「病気やケガの状態が悪くなること」、「良化」は逆に「病気やケガの状態が良くなること」です。
「小康状態」は、「しばらくの間は落ち着いている状態」を表す四字熟語でした。
したがって、「そこから大きく状態が動き出すこと」「急に事態が変化し出すこと」などの意味が反対語となります。
小康状態の英語訳
「小康状態」は、「英語」だと次の2つの言い方があります。
「lull(小やみ・小康)」
「remission(軽減・緩和・鎮静)」
「lull」は、動詞だと「やわらげる・静める」などの意味です。転じて、物事が沈静化した時などに使われる名詞としての意味も持つことになります。
また、「remission」は主に「(刑の)免除・減免」などを意味する単語ですが、怪我や病気の痛みを一時的に軽減するような時にも使えます。
例文だと、それぞれ以下のような言い方です。
The rain became a lull.(雨は小康状態になった。)
There has been a remission in her illness.(彼女の病気は小康状態だ。)
小康状態の使い方・例文
最後に、「小康状態」の使い方を例文で紹介しておきます。
- 祖母の容体は、小康状態に入ったと聞きました。
- 小康状態から一変、容体は急に悪化したそうです。
- 危篤状態を脱し、現在は小康状態に入りました。
- 小康状態を保つように、事態は落ち着いていった。
- 雨が小康状態になったので、さっさと帰宅しよう。
- 友人が小康状態に入ったらしいので、お見舞いに行く予定です。
- 最悪の状態から一転、米中は小康状態を保つように急接近した。
「小康状態」は、基本的に病気やケガなどの医療に対して使われる四字熟語です。ただし、あくまでこの言葉は医療用語ではなく一般用語なため、他の対象に対して使うことも当然あります。
よく使われるのが「天気」です。天気の場合は、大雨や暴風の状態から少し弱まった場合などに使います。例えば、大雨だったのが小降りになってきた時、暴風だったのが風が弱くなってきた時などです。
また、最後の例文のように「国と国の関係」に対して使うこともあります。これは新聞などでよく使われる用例で、「いったんの危機的状況は脱した」という意味です。両国が最悪の関係から脱した時などによく使われます。
いずれにせよ、小康状態は様々な状況や状態に対して使うことができる言葉ということになります。
まとめ
以上、本記事のまとめです。
「小康状態」=いったん悪くなったものがやや回復し、落ち着いている状態。
「語源・由来」=「小さな無事が続く様子」から。
「類義語」=「一段落・下げ止まり・若干の回復」
「英語訳」=「lull」「remission」
物事には「最悪の状態」「普通の状態」「最高の状態」など様々な状態があります。「小康状態」とはその中でも、最悪の状態から少し脱した状態だと覚えておきましょう。