消費されるスポーツ 解説 200字要約 テスト 学習の手引き

『消費されるスポーツ』は、現代文の教科書に出てくる評論文です。ただ、実際に本文を読むと筆者の主張などが分かりにくい箇所も多いです。

そこで今回は、『消費されるスポーツ』のあらすじや要約、テスト対策などを簡単に解説しました。

『消費されるスポーツ』のあらすじ

 

本文は、内容により4つの段落に分けることができます。ここでは、各段落ごとのあらすじを簡単に紹介していきます。

あらすじ

①アメリカのスポーツは、産業社会の中で発生してきた「大衆」を基盤にして形成された。「大衆」はスポーツを日常的に消費し、消費者としての「観客」を形成し、その観客に向けてスポーツはビジネス化していった。「大衆」を「観客」に形成するうえで顕著な効果を持つのはメディアである。アメリカのスポーツは、メディアとともに発達していったのだ。

②最初のメディアである新聞は、しだいに読者の関心を引き始め、取り上げるスポーツの種類が増えていった。ついでラジオの発明と普及という画期的な出来事が起こり、スポーツはメディアとの関係を深め、完全に商品としての情報になった。そしてついにテレビが登場し、中心的なメディアとなっていった。ベルトランは、テレビが1960年代以後の中心的なメディアになっていく理由を三つ挙げた。一つは、人口の郊外への移動、第二に、映像を操作するテクノロジーの発達、第三に、ABCがスポーツ番組を独占して勢力を伸ばしてきたことである。これにより、スポーツ番組をめぐるテレビの競争は激化していった。

③テレビは一つの権力となり、いつの間にかメディアはスポーツに要求を押しつけることができるようになった。そして、さまざまなスポーツがルールさえも変更するという事態が起こった。また、スポーツはメディアによって階層化され、人々はそれを常識的なものとして無意識に受け入れるようになった。メディアとスポーツの関係はアメリカだけでなく、日本でも全く同じことが言える。日本でもメディアはスポーツの観客を新しく産出し、スポーツを社会的な現象にしているのである。

④スポーツはイギリス社会に生まれ、洗練された形式を持つようになった後、アメリカ社会を通過することにより、大きな変化を破った。スポーツが、大衆消費社会という新しい次元に展開するようになったのである。この経験は、社会についての考え方を変えさせるため、スポーツと社会との関係は、今までとは違った視線で見なければならない。「社会」というものはアプリオリにはなく、定義する必要もない。スポーツもその一つの活動であるような、さまざまな活動の総体として発見できるような何ものかである。「社会」はスポーツに類する幾つかの形式の活動をしているからこそ、奥行きのあるものとして捉えることができるのだ。

『消費されるスポーツ』の要約&本文解説

 

200字要約アメリカのスポーツは大衆を基盤にして形成され、メディアの発達とともに変質してきた。特に一つの権力となったテレビは、スポーツのルールまでを変える大きな影響力を持つようになった。日本でも同様に、メディアはスポーツの観客を作り出して消費させ、社会的な現象にしている。もともとは社会がスポーツを生み出したのだが、現在のスポーツはメディアを介して観客を含む社会的出来事そのものとして生み出されているのである。(199文字)

筆者はまず第一段落で、「アメリカにおけるスポーツのビジネス化」について述べています。元々、スポーツというのは手軽に消費できる娯楽であり、観客がいることですぐにビジネス化することができました。

さらに、大衆を観客にするうえでメディアが効果的な働きをしたため、どんどんとスポーツが発達していったという内容です。

次の第二段落では「アメリカにおけるメディア・テクノロジーの変遷」について述べています。

アメリカでは、新聞⇒ラジオ⇒テレビのようにメディアが変遷していきましたが、その都度メディアが重要な役割を担ってきました。

特にテレビは様々な影響力があったため、中心的なメディアになっていったという内容です。

第三段落では、「メディアがスポーツに及ぼす影響」について述べています。権力を持ったメディアは、スポーツに対して要求を押し付けることができるようになりました。

例えば、ルールの変更や放送時間の短縮といったことです。このような関係は、アメリカだけでなく日本でも起きているということも触れられています。

第四段落では「スポーツと社会との関係」について述べています。筆者は、スポーツと社会との関係は、これまでとは違った視線で見なければならないと言います。

なぜなら、現在の世の中は社会からスポーツが生まれるというよりも、スポーツから社会が生まれるといった逆転の現象になっているからです。この事を筆者は「スポーツが社会を可視化している」と述べています。

そして、最後の結論として「現在のスポーツは、メディアを介して観客を含む社会的出来事そのものとして生み出されているのである」と述べています。本作は「スポーツ」「メディア」「社会」などが主なキーワードですが、最も筆者が主張したい内容はこの一文となります。

『消費されるスポーツ』のテスト対策問題

 

問題1

次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。

タイシュウの支持を得る。

キロクを更新する。

エンカクの地に住む。

④自動車がフキュウする。

カッキテキな提案。

⑥現実と夢がコウサクする。

ヤクドウ的な動き。

解答①大衆 ②記録 ③遠隔 ④普及 ⑤画期的 ⑥交錯 ⑦躍動
問題2「極限的な差異の競争」とは、ここでは何を意味するか?
解答例特別な存在となったスポーツ選手が、他の選手よりもほんのわずかでも上の記録を目指して競うこと。
問題3「それらは特に野球の周りに神話的な雰囲気を作り出すの役立っていた。」とあるが、「神話的な雰囲気」とはどういう雰囲気のことか?
解答例人間離れした偉大なヒーローが存在するように感じられる雰囲気。
問題4「メジャーなスポーツとマイナーなスポーツは、競技人口の大小も影響しているが、メディアによる階層化の方が強力である。」とあるが、「メディアによる階層化」とはどういうことか?
解答例メディアに取り上げられる時間の増減により、スポーツの中で序列や順位が決められるということ。
問題5「もともとは社会が近代スポーツを生み出したことは否定できないが、この関係は反転した。」とあるが、「この関係は反転した。」とはどういうことか?
解答例もともとは社会によって生み出されていたスポーツが、現在はメディアを介して観客を含む社会的出来事そのものとして生み出されているということ。
問題6

次の内、本文の内容を表したものとして適切でないものを選びなさい。

(ア)スポーツはメディアの発達とともに変質してきたが、特にテレビは大きな権力を持ち、スポーツのルールを変えるほどの影響力を持つようになった。

(イ)権力が大きくなったメディアにより、人々は情報の分類を、常識的な知のカテゴリーとして積極的に受け取るようになった。

(ウ)日本でもメディアはスポーツの観客を新たに産出し、観客のスポーツの消費を方向づけつつ、スポーツを社会的な現象にしている。

(エ)「社会」というものはアプリオリにはなく、スポーツもその一つの活動であるような、さまざまな活動の総体として発見できるような何ものかである。

解答(イ)「積極的に」ではなく「無意識に」と本文中にはある。

まとめ

 

以上、今回は『消費されるスポーツ』について解説しました。ぜひ定期テストなどの対策として頂ければと思います。なお、本文中の重要語句については下記の記事でまとめています。