「象徴」という言葉は、高校国語の評論文にもよく出てくる印象です。ただ、同時に意味が分かりにくいと感じる人も多いと思われます。
そこで今回はこの「象徴」についてなるべく簡単にわかりやすく解説しました。後半では、「類義語」や「対義語」「英語訳」などにも触れています。
象徴の意味を簡単に
まず、「象徴」の意味を辞書で引くと次のように書かれています。
【象徴(しょうちょう)】
⇒抽象的な思想・観念・事物などを、具体的な事物によって理解しやすい形で表すこと。また、その表現に用いられたもの。シンボル。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「象徴」とは「抽象的なものを具体的なものによって表現すること」を意味します。
「抽象的」とは「はっきりとした姿や形などがないさま」、一方で「具体的」とは「はっきりとした姿や形があるさま」を表します。
つまり、「形のないものを形のあるもので表現すること」を「象徴」と呼ぶわけです。
例えば、よく使われる表現として「ハトは平和の象徴」というのがあります。
「平和」というのは形がありません。もしもリンゴのようなものであれば、「赤くて丸くて固い」といった具体的な形が存在します。
しかし、「平和」という言葉自体から、何か具体的な姿や形を想像することはできないです。
一方で、「ハト」というのは形があります。灰色で羽があって小さい鳥といった具体的な形を誰もがイメージできるでしょう。
そこで、「形のないもの(平和)」を「形のあるもの(ハト)」で表現するということです。
ちなみに、なぜハトが平和の象徴かというと、旧約聖書の「ノアの箱舟」に由来しているからです。
「ノアの箱舟」と言えば、大洪水の話で有名です。簡単にあらすじを説明すると、以下のようになります。
大洪水が起こった後、ノアは陸地が出ているか確認しようとハトを放った。するとハトがオリーブの葉をくわえて戻ってきた。その瞬間に、ノアは洪水が引いたことに気づいた。
「ハトが戻って来た瞬間」というのは、まさに人類にとって平和が訪れた時でした。このシーンがきっかけで、「ハトは平和の象徴」と呼ばれるようになったのです。
象徴の具体例
「象徴」を使った具体例は、他にどんなものがあるでしょうか?以下に代表的なものを3つ挙げました。
①「国」
1つ目は、「国」です。
「国」というのは具体的な形が存在しません。「国ってどんな形をしているの?」と聞かれても、誰一人として答えられないでしょう。
そこで、「国」という言葉を具体的なもので表す必要が出てきます。例えば、「国旗」です。
上の画像のように、世界各国には様々な種類の国旗があります。国旗には、それぞれの国が歩んできた歴史や文化の違いが反映されています。
そのため、具体的な特徴をしている国旗は、形のない国を表す上で大変便利なものなのです。
②「自由」
2つ目は、「自由」です。
「自由」も「象徴」の例としてよく挙げられます。「自由」という言葉は、具体的な姿・形がないため頭の中でイメージしにくいです。
辞書の説明だと、「自分の意のままに振る舞うこと」とも書かれていますが、この説明では意味が想像できにくいです。
そこで、「自由」という言葉を何か具体的な形を使って表す必要性が出てきます。それがアメリカにある「自由の女神像」と呼ばれるものです。
自由の女神像は、右手にはたいまつ、左手には独立記念日が刻印されたタブレットを持っています。そして、足元には引きちぎられた鎖と足かせがあります。
この銅像を見れば、「自由」という言葉は、抑圧からの解放や人類は皆平等であるという考えから生まれた言葉だと分かるようになっているのです。
③「美」
3つ目は、「美」です。一言で「美しさ」と言っても、それが何を表しているかは相手に伝わりにくいです。
「形がよい」とか「見た目がすばらしい」などと言われても、ではどのように良いのか?と言われると返答に困ってしまいます。
そこで、「花は美の象徴だ」「ダイヤモンドは美の象徴だ」などのように言います。すると、「美しさ」というものを相手に分かりやすく伝えられるということです。
このように、「象徴」という言葉は抽象的なものを具体的なもので間接的に表現します。そのため、相手にイメージを伝えやすくするという効果があるのです。
象徴の類義語
続いて、「象徴」の類義語を紹介します。
基本的には、形のないものを間接的に表現した言葉が類義語となります。そのため、広い意味ではメーカーの文字やマークなども類義語に含まれます。
なお、「象徴」の「対義語」は「抽象(ちゅうしょう)」と言います。
「抽象」とは「具体的なものが持つ共通点に着目し、意味をまとめること」です。
形のある言葉を形のない言葉に変換していく作業なため、「象徴」の反対語だと言えます。
象徴の英語訳
「象徴」は、英語だと「symbol」と言います。
他にも「sign」「emblem」などの単語がありますが、英語の場合は「symbol」を使うことがほとんどです。
「symbol」は、日本語でもカタカナで「シンボル」と書いて使われているほど有名な単語です。
例文だと、次のような言い方です。
The dove is a symbol of peace.(ハトは平和の象徴である。)
The lion is a symbol of ferocity. (ライオンは獰猛さの象徴である。)
The cross is the symbol of Christianity.(十字架はイスラム教の象徴である。)
象徴の使い方・例文
最後に、「象徴」の使い方を実際の例文で紹介しておきます。
- きつねというのは、ずるがしこさを象徴する動物である。
- かき氷やスイカは、夏という季節を象徴する食べ物の一つである。
- 自由の女神像は、アメリカ人の自由を象徴して建てられたものである。
- 1989年のベルリンの壁崩壊は、冷戦の終わりを象徴するものであった。
- バブルを象徴する出来事が、土地や建物などの不動産価格の上昇であった。
- 今回の勝利は、今後の人生を決定づけるほど象徴的なものだったと言える。
「象徴」は後ろに「的」が付いて、「象徴的」という使い方をすることもあります。「象徴的」の場合は「形容動詞」になるので、「形のないものを形があるもので表現する様子」という意味になります。
まとめ
以上、本記事のまとめとなります。
「象徴」=抽象的なものを具体的なものによって表現すること。
「具体例」=「ハト・国・自由・美」など。
「類義語」=「表徴・表象・エンブレム・記号・比喩」など。
「英語訳」=「symbol(シンボル)」
世の中には形がないことでイメージがしにくい言葉があります。その言葉を形のあるもので表現するのが「象徴」ということになります。