この記事の読了目安: 739

社会の壊れる時 要約 あらすじ テスト 解説 教科書 学習の手引き

 

『社会の壊れる時-知性的であるとはどういうことか』は、現代文で学ぶ評論です。高校の定期テストなどにおいても出題されています。

ただ、本文を読むと筆者の主張などが分かりにくい箇所もあります。そこで今回は、『社会の壊れる時』のあらすじや要約、学習の手引きなどをわかりやすく解説しました。

『社会の壊れる時』のあらすじ

 

本文は、行空きによって4つの段落から構成されています。ここでは、各段落ごとのあらすじを簡単に紹介していきます。

あらすじ

①「話せば分かる」-。これは、五・一五事件の時に犬養毅が銃撃された直前に口にした言葉として伝えられている。こうした言葉が、何の逡巡もなしに無視される時、社会は壊れる。問題なのは、意見の対立が激化したことではなく、対立が対立として認められる場所そのものが壊れてしまったことである。「私たち」という語を使う時、そこには同意への根拠なき期待がある。「私」とはそのように語るものであるという権利、というか了解を他者に求めているのである。しかし、その襲撃の場では、「私」という第一人称と「君たち」という第二人称を包括する「私たち」が一方的に否認されたのである。

②社会の中にある差異によって、最終的な解体や崩壊にまで転げ落ちることがないのは、それらの差異をある共通の理念で覆いえてきたからだ。だが、共通の理念を共有しようという意志そのものが押し付けられると、さまざまな軋轢が生じる。西欧発の「近代性」は、ヨーロッパから世界へと同心円状に広がっていく過程で、希望を育むと同時に軋みや傷や歪みを強いてきもした。そうした経験を経て現在、それぞれの地域でそれぞれに異なる「近代性」が模索されつつある。

③「近代性」という信仰は普遍性を謳うものなので、これに従わない人たちの存在を否認し、政治という交渉の場から排除してしまう。そのため、ある社会を構成する複数文化の共存が重要となる。エリオットは、共存の可能性を特定の理念の共有にではなく、社会の諸構成部分の間の「摩擦」の中にこそあると示唆した。「摩擦」を消去し、一つの信仰へとならしてゆこうとする社会は、牽引力と反発力との緊張をなくし、その生命を失ってしまうだろう。

④社会を壊さないためには、「摩擦」を消すのではなく、「摩擦」に耐えること、つまり煩雑さへの耐性というものが人々に求められる。そのことがいっそう明確に見えてくるということ、それが知性的ということなのだ。世界を理解するうえでのこの複雑さの増大に堪えきれる耐性を身につけていることが、知性的ということだ。

『社会の壊れる時』の要約解説

 

要約社会が壊れるのは、意見の対立が激化する時ではなく、対立が対立として認められる場所そのものが壊れてしまう時である。西欧発の「近代性」は普遍性を謳うものなので、それに従わない人たちの存在を否認してしまう。だからこそ、ある社会を構成する複数文化の共存が重要となる。共存の可能性は、社会の諸構成部分の間の「摩擦」の中にあり、その摩擦に耐え、複雑さへの耐性を身に付けていることが知性的ということなのだ。(196文字)
本文解説

わたしたちは、ますます複雑化していく世界に対して、その複雑さに耐え切れず「簡単な答え」を欲しがってしまいます。あるいは、「簡単な答え」に飛びついてしまいがちです。

そのような「簡単な答え」は、対立する意見に「問答無用」として耳を貸さず、否定して抹殺してしまうことから生まれることが多いものです。筆者はこうした問題に対して、エリオットの説を用いて、リアルで明快な解答を出しています。

それは、「話しても分からない」ことがいっぱいある世界で、そこに生じる摩擦により、むしろ社会の重大な生命が育まれるのだ、という説です。筆者はこのエリオットの考えを引用しながら、現代に生きるための指針を与えてくれています。

全体を通して筆者が結論付けたいことは、最後の「世界を理解するうえでのこの複雑さの増大に堪え切れる耐性を身につけていることが、知性的ということなのです。」という一文に集約されています。

つまり、「知性的」であるとはどういうことなのか?が、本文の最大のテーマということです。

筆者は、「知性的」=「複雑さへの耐性を身につけること」だと述べています。この主張を読みとれるかどうかが読解のポイントとなります。

『社会の壊れる時』のテスト対策問題

 

問題0

次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。

リロ整然。

②背後からシュウゲキする。

③意見がブンレツする。

④幕府がホウカイする。

⑤解決策をモサクする。

シンコウ心が揺らぐ。

⑦罪状をヒニンする。

カンヨウな態度。

⑨構造上のケッカン

⑩予算をシュクゲンする。

ハンエイした町。

⑫責任をカイヒする。

解答①理路 ②襲撃 ③分裂 ④崩壊 ⑤模索 ⑥信仰 ⑦否認 ⑧寛容 ⑨欠陥 ⑩縮減 ⑪繁栄 ⑫回避
問題1「『私』が『私たち』を僭称する」とは、どういうことか?
解答例自分の個人的な主張なので「私」を主語にすべきところを、勝手に「私たち」という第一人称複数形を主語として語ること。
補足「僭称(せんしょう)する」とは、本来は「勝手に自分の身分より上の称号を名乗ること」という意味。ただ、ここでは「私たち」という言葉が本当は「私」でしかないのに、勝手に他者を巻き込んだ意味で使われてしまっていることを表す。例えば、「私たちはこう思います」と書いたとき、書いた「私」は「私」以外の他者に実際にそう思うのかを確かめてはいない。にもかかわらず、「私たち」と書いてしまうことがある。筆者はそれが悪いと言っているのではなく、そうした言い方はある意味では「当然の権利」だと言っている。「私」は、もともと純粋なものではありえないし、他者との共存の中で生きている。だから、そういう者として語るしかないのだということ。
問題2「一つの社会、一つの文化が壊れてしまいます。」とは、どういうことか?
解答例社会や文化がその成立の根拠を失うことで、統一した形で存在することができなくなるということ。
問題3「普遍性を謳う」とは、どういうことか?
解答例全てに当てはまるものだと、強く主張するということ。※「普遍性」とは「いつでも、どこでも、すべてのものに例外なく当てはまるさま」という意味。
問題4「野蛮と頽廃」とは、ここでは何を指すか?
解答例

「野蛮」⇒特定の信仰やイデオロギーの共有を強いて、それに従わない人々を排除すること。

「頽廃」⇒他者との対話や理念の共有への意志を放棄して、相互に遮断すること。

補足「過度の統一は野蛮に起因する場合が多く、~」と「過度の分割は頽廃に起因する場合が多く」に注目して、そこからまとめる。
問題5「公分母」とは、ここでは何を意味するか?
解答例対立が対立として認められる場所。
補足「公分母」は、本来は数学用語で「二つ以上の分数を通分した時の共通の分母」という意味。ただ、ここでは比喩的に「二つ以上のものの間にある共通したもの」という意味で使われている。第二段落にある「共通の理念」と考えてもよいが、ここでは第一段落の「対立が対立として認められる場所」と考える。
問題6「そのように語る者」とは、どのように語る者のことか?
解答例自分の個人的な主張に対して、他の人も同意してくれるだろうという期待を持って語る者。
補足「私」と言おうが「私たち」と言おうが、何かを「語る」という行為には、その中に「他者の同意への期待」が込められているということ。そうでないと、人は語ることができない。「問答無用」といって、語ることを拒むのは「語る場」を破壊したのだというのが筆者の主張となる。
問題7「ある理念を共有しようというその意志は、一定の権勢を持つ集団による他集団の同化というふうに、いわば同心円状にそれを拡大したところに成り立つものであってはなりません。」とあるが、それはなぜか?
解答例異なった歴史的成り立ちや文化を持つ他の集団に、軋みや傷、歪みを強いることになるから。
補足「一定の権勢を持つ集団による他集団の同化」とは、例えば、征服者が被征服者を自分たちに強制的に同化させようとして、自分たちの言語や文化、習慣などを押し付けること。また、「同心円状に」とは、権勢を持った少数の人間が、徐々にその勢力を周辺部へ拡大していくさまをたとえた表現。
問題8「綱渡りのように極めて困難な課題」とあるが、それはなぜか?
解答例他者を受け入れる寛容の精神は、自らの精神と相反する他者の自由に対して非寛容な人たちも排除しないことを求めるものだが、そうした寛容の精神を身に付けることは非常に難しいため。
補足「綱渡りのように」という表現は、ただ単に「困難」という意味ではなく、極めて失敗しやすく、致命的になりやすい危うさを含んでいることを意味する。いくら寛容を心がけても、ちょっとしたことで「排除」へと転換してしまう、という意味。
問題9「何かある信仰やイデオロギーの共有」を目指す態度と、「あえて『摩擦』を維持する」態度とは、どのように異なるか?
解答例前者は、「摩擦」を縮減して消去し、特定の一つの「信仰やイデオロギー」へとならそうとする態度を表すのに対し、後者は、相互の違いやそれによって生じる諸問題を消去せず、緊張や刺激を維持しようとする態度を表す。
補足後者の態度こそが、筆者が主張したいもの。前者のように「摩擦」を縮減しようとすれば、対立する意見を封じることになるし、まして「摩擦」を消去することは他者を圧殺することでしかなしえない。そうではなく、「摩擦」を維持しようとする態度が重要ということ。
問題10「知性的ということ」の意味について、筆者の主張をまとめなさい。
解答例複雑な物事を単純化して分かりやすくしようとすることではなく、物事の複雑さを見極め、複雑な物事を複雑なまま受け入れ、考え続ける耐性を持っていることこそが「知性的」であるということだ。

まとめ

 

以上、今回は『社会の壊れる時』について解説しました。ぜひ本文の内容を正しく理解して頂ければと思います。なお、本文中の重要語句については以下の記事でまとめています。

The following two tabs change content below.

国語力アップ.com管理人

大学卒業後、国語の講師・添削員として就職。その後、WEBライターとして独立し、現在は主に言葉の意味について記事を執筆中。 【保有資格】⇒漢字検定1級・英語検定準1級・宅地建物取引士など。

最新記事 by 国語力アップ.com管理人 (全て見る)