この記事の読了目安: 652

舞姫 あら解説 本文 教科書 学習の手引き 簡単に

 

『舞姫』は、森鴎外による小説です。有名な作品なので、高校現代文の教科書にも載せられています。

ただ、本文を読むとその内容が分かりにくい箇所も多いです。そこで今回は、『舞姫』のあらすじやテスト対策、学習の手引きなどを含め簡単に解説しました。

『舞姫』のあらすじ

 

本作は、大まかに分けて10の段落から構成されています。ここでは、各段落ごとのあらすじを簡単に紹介していきます。

あらすじ

①五年前、官庁からの命で日本からドイツへ留学することとなった「余」は、現在、鬱々とした思いを抱えて帰国の途上にある。ある思いにさいなまれる「余」は、その原因となった留学体験にまつわる、人の知らない恨みを消し去りたいと思い、一人だけ船内に残り、手記をつづり始める。深い恨みの心は晴らしようがないが、以下にその思いの概略を記そうとする。

②「余」たる太田豊太郎は、幼少の頃から神童でエリートの道を歩み続け、ついに五年前に官命を受けてベルリンへの留学を果たす。栄達を願う豊太郎は、初めての西欧文化に触れるも、自己の研鑽に余念なく、官命の仕事にいそしむ日々を送る。

③ベルリンに来て三年が経ち、大学の自由な空気に触れて、豊太郎は内なる自我に目覚める。そして、今までの所動的、器械的な生き方に疑問を感じ、法律に限らない歴史や文学といった学問に興味を引かれるようになる。一方で、豊太郎は心の弱さから頑な面があり、それにより他の留学生との関係が悪くなり、妬まれ孤立していくことになる。

④ある日の夕暮れ、豊太郎はクロステルの裏街に寄り道をする。そこで、寺院の扉に寄りかかって泣いている少女エリスと出会う。豊太郎は、父が死んで葬式の費用もない踊り子エリスに同情し、急場を救うことになる。

⑤やがて豊太郎とエリスは付き合うようになる。しかし、このことを知った留学生仲間が、エリスとの仲を官長に告げ口し、結果、豊太郎には免官という厳しい処分が下される。母の訃報も重なり、苦しい状況の中で二人の関係は深いものとなる。

⑥在京の友人である相沢が、新聞社の通信員の職を斡旋してくれたために、豊太郎はベルリンにとどまることになった。そして、貧しくも楽しいエリスとの生活が始まる。学問は荒んだが、幅広い知識を得て仕事をするようになる。

⑦エリスの妊娠を知り不安になる豊太郎だが、一方で、天方大臣に随行してきた相沢の紹介で、大臣を訪れる機会を得る。相沢から、エリスとの関係を清算するように言われ、それを受け入れる約束をしたものの豊太郎は苦悩する。

⑧豊太郎は大臣からの依頼で、通訳として大臣に同行し、ロシアへと行く。しかし、その間もエリスから豊太郎への思いを込めた手紙が届き、豊太郎は改めて罪の意識に苦しんでいく。

⑨ベルリンに戻った豊太郎は、出産を控えて喜びに満ちたエリスの様子に接する。やがて、大臣に共に帰国することを勧められた豊太郎は承諾するものの、エリスに対する罪の意識から、家へたどり着けなくなり倒れてしまう。

⑩数週間後に豊太郎が意識を取り戻したときは、相沢が来てエリスに真相を語った後であった。豊太郎は、相沢から全てを聞いたエリスが精神に異常をきたしてしまったことを知る。エリスを残して帰国の途についた豊太郎は、相沢に対して、この上もない友だと思いながら、一方で、エリスのことについては、どうしても彼を恨む心が残った。

『舞姫』の本文解説

 

『舞姫』は、作者である森鴎外が1884年にドイツへ留学した際の経験をもとに書かれた作品です。つまり、実際にそのままあった話ではなく、実話をもとにしたフィクションということです。したがって、本作には多少の創作が含まれており、事実とは異なる部分も含まれています。

文章の形式としては、平安朝時代風の書き方である「雅文体(がぶんたい)」で書かれているのが特徴です。そのため、現代の私たちにとっては読みにくい文体であると言えます。

物語としては、豊太郎が近代的自我を確立しようとしながらも、舞姫エリスとの愛を貫き通すことができなかったことで、挫折と苦悩を味わったことで締めくくられています。

ただ、なぜ彼がこのような状況に陥ったのかという背景も考えることが大切です。

まず単純に、彼の人格に原因があるとするなら、この作品中の出来事だと母一人・子一人という家庭環境が作った、ものに感じやすい感性が、ベルリンに取り残される孤独に耐えられず、相沢の善意を裏切れなかったという行動につながったと考えられます。

次に、当時の時代背景を考えてみると、当時の日本は富国強兵や脱亜入欧などの政策的・思想的な流れが強かった時代でした。そのような時代の中で、彼は幼少期からエリートとして人格の基本を形成しました。

ベルリン大学の自由が、全く異なる生き方を示したとしても、当時の日本社会にはそれを受け止めるような社会的基盤はなかったと考えられます。

そのため、単に豊太郎を気の弱い青年と考えるのではなく、今と当時は何が違ったのか?という時代背景も考えながら本作を読むと、登場人物の心理もより分かりやすくなると言えます。

『舞姫』のテスト対策問題

 

問題0

次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。

①寺にもって修行する。

②人の出世をねたむ。

③人の失敗をあざける。

④口汚くののしる。

せる思いをする。

⑥病がえる。

解答①籠 ②妬 ③嘲 ④罵 ⑤痩 ⑥癒
問題1この作品は、太田豊太郎の手記の形式となっている。豊太郎は、「いつ・どこで」「なぜ」この手記を書こうとしているのか?
解答例

「いつ・どこで」⇒五年の洋行を経て日本へ帰国する船上。セイゴンの港に停泊中。

「なぜ」⇒人の心も「我が心」さえも信じることができなくなったいきさつを文につづり、苦しみを鎮めようとしているため。

問題2

次の三つの時期における豊太郎の内面の変化をまとめよ。

①留学の前後

②留学してからエリスに出会うまで

③相沢との出会い後

解答例

①【留学前】⇒幼少時から神童と言われ、大学も首席で卒業していたため、洋行の官命を受けるまでは、名を成し、家名を高めるという、当時の多くの青年たちが抱いた「立身出世の志」を持って生きていた。

【留学当初】⇒ベルリン到着後、華やかな光景に驚きながらも、外物に心を奪われまいとの決意で大学の講義を受け、一方で公務にも励んだ。この時点では、動揺はあっても変化は生じていない。

②留学して三年が経ち、大学の自由な精神の中で、次第に今までの自己の生き方の他律性・受動性に気づき、官長や母が認める生き方とは異なる真実の自己の存在を自覚する。一方で、他者と気軽に交流できない弱い自己という自己理解も示される。この時点では、真実の自我の発見という大きな変化と、それを貫けない心の弱さを抱えている。

③エリスとの関係を清算して元の世界への復帰を促す相沢と、エリスへの愛の間を揺れ動きながら、結局は相沢と天方大臣の世界を選ぶ自我の挫折が訪れる。

問題3

豊太郎と彼女との愛について、次の問いに答えなさい。

①二人の愛が急速に深まったのはなぜか?

②二人の愛が悲劇的な結末になったのはなぜか?

解答例

①元々二人の仲は憐憫と同情から始まった一種の師弟関係だったが、免官に続き母の死という二重の苦しみが豊太郎を襲い、公私にわたって故国とのつながりが断たれた孤独感と精神的な混乱状態の中で、エリスの美しくいじらしい姿が心を打ったため。

②天方大臣に随行してドイツに来た相沢が、まずエリスとの仲を断つことを忠告し、さらに天方大臣が日本への帰国を勧めた。この二つに対して、罪の意識を自覚しながらも承諾してしまう豊太郎自身の心の弱さが根底にあったため。

問題4

「相沢謙吉がごとき良友は世にまた得難かるべし。されど我が脳裏に一点の彼を憎むこころ今日まで残れりけり。」とあるが、相沢と豊太郎との友情について、次の問いに答えなさい。

①豊太郎にとって相沢が「良友」であるといえるのは、どのような点においてか?

②豊太郎が相沢に「憎むこころ」を抱くのはなぜか?

解答例

①豊太郎が免官になった際、相沢はベルリンでの生活のために新聞社の通信員の地位を世話し、さらに天方大臣に豊太郎の能力を示す機会を与えた。このように、常に無償で豊太郎の社会的地位の回復を支援した点。

②相沢は、豊太郎が発見した新たな自我に基づく生き方もその価値も理解しなかった。その結果、彼は善意で行動することで、豊太郎の自我の目覚めを挫折させ、エリスを破滅に追いやったため。

問題5第一段落(石炭をばはや~その概略を文に綴りてみん)は、この小説の中でどのような意味を持っているか?
解答例全体の序章として回想の場面を設定することで、豊太郎が現在深く抱える「恨み」がどうして起こったのか、その概略を手記の形で書こうとした動機をはっきりさせると同時に、主題とも密接に関わる意味を持っている。

まとめ

 

以上、今回は『舞姫』について解説しました。ぜひテスト対策として見直して頂ければと思います。なお、本文中の語句については以下の記事でまとめています。

The following two tabs change content below.

国語力アップ.com管理人

大学卒業後、国語の講師・添削員として就職。その後、WEBライターとして独立し、現在は主に言葉の意味について記事を執筆中。 【保有資格】⇒漢字検定1級・英語検定準1級・宅地建物取引士など。

最新記事 by 国語力アップ.com管理人 (全て見る)