漱石枕流 意味 例文 漢文 由来 語源 類語 英語

「漱石枕流」という四字熟語を聞いたことがあるでしょうか?

夏目漱石の「漱石」という言葉が入っているので、何となくの想像は付くかもしれません。ただ、初めて目にした人にとってはその意味や由来などが分かりにくいという人も多いと思われます。

そこで本記事では、「漱石枕流」の意味や読み方、語源、現代語訳などを含め詳しく解説しました。

漱石枕流の意味・読み方

 

まず、読み方ですが「漱石枕流」は「そうせきちんりゅう」と読みます。「沈」という字は「沈没」「沈思」などの熟語があるように、「ちん」と読みのがポイントです。

意味は「負け惜しみの強いこと・自分の失敗を認めず、言い逃れをすること」などを表したものです。

例えば、受験に落ちて失敗した人が周りからその理由を聞かれたときに、「本気を出していなかったから」などと言い逃れをすることは「漱石沈流」だと言うことができます。

また、スポーツの試合で負けた人が素直に敗北を認めるのではなく、「グラウンドの条件が悪かったから」などと見苦しい難癖をつけるのも「漱石枕流」です。

「漱石枕流」とはこのように、屁理屈を述べて言い訳をしたり自分の意見を頑なに押し付けたりして、言い逃れをすることを表した四字熟語となります。簡単に言えば、「ひどいこじつけをすること」です。

漱石枕流の語源・由来

 

「漱石枕流」は、「石に漱(くちすす)ぎ流れに枕(まくら)す」というセリフが語源です。このセリフは、中国春秋時代の晋という国の「孫楚(そんそ)」と呼ばれる武将が言い放ったものと言われています。

孫楚は若い頃から能力が高く、政治家・武将としてその才能を大いに発揮していました。ただ、その才能を誇り過ぎたために人を見下すこともあったので、周囲からの評判はあまりよいものではありませんでした。

ある時、孫楚は友人の王武子に対して「沈石漱流(ちんせきそうりゅう)」の生活をすることを打ち明けようとします。「沈石漱流」とは「石を枕のようにして寝て、川の流れのように漱ぐ(うがいをする)」といった意味です。要するに、俗世間を離れて山奥などでひっそりと住むような隠遁生活を望んだということです。

ところが、実際に王武子にこの話をする際に、誤って「漱石枕流」と言ってしまいました。すると、王武子から「石に漱ぎ、流れに枕するとは一体なんのことだ?」とからかわれてしまうことになります。

そこで孫楚は苦し紛れに「石を口に含んで歯を磨くのだ。川の流れを枕にして耳を洗うのだ。」と答えました。この逸話がきっかけとなり、「負け惜しみを言うこと・言い逃れをすること」を「漱石枕流」と言うようになったわけです。

つまり、現在使われている「漱石枕流」は、「沈石漱流」を孫楚が誤って言い間違えてしまった結果生まれた四字熟語ということになります。

なお、近代文学を代表する有名な小説家である「夏目漱石」の名前はこの「漱石枕流」が元になっています。

意外かもしれませんが、「漱石枕流」が先で、その後に「夏目漱石」がこの名前を使うようになったのです。夏目漱石の本名は「夏目金之助」と言い、「漱石」というのは元々、正岡子規が使っていたペンネームでした。

漱石本人は過去に正岡子規が使っていた名前であることは知らなかったものの、自分のことを「意地っ張りで頑固な性格」と認識していました。そのため、のちに正岡から譲り受けるようになったのが、この「夏目漱石」という名前の由来だと言われています。

漱石枕流の類義語

漱石枕流 類義語 言い換え

「漱石枕流」の「類義語」は以下の通りです。

一言居士(いちげんこじ)】⇒どんな事にも何か自分の意見を言わないと気が済まない人。「一言」とは「ひとこと」、「居士」とは「学徳は高いが仕官しない人」を指す。
頑固一徹(がんこいってつ)】⇒自分の意見や考えを頑なに押し通すこと。「一徹」とは「一つに押し通すこと」という意味。
牽強付会(けんきょうふかい)】⇒自分の都合のいいように、強引に理屈をこじつけること。「牽強」「付会」ともに、道理に合わないことを無理にこじつけることから。
堅白同異(けんぱくどうい)】⇒矛盾する内容を無理やりこじつけること。中国戦国時代の公孫竜が「堅い石は手で触ると分かるが色は分からない一方で、白い石は目で見ると分かるが、堅さは分からない」と説いたことから。
指鹿為馬(しろくいば)】⇒道理の通らないことを無理やり押し通すこと。秦の始皇帝の死後、権力を得ようとした趙高が二世皇帝に鹿を馬と偽って献上したことを処罰したという故事から。

類義語は自分の意見を強引に押し通したり、こじつけをしたりすることを表した言葉となります。同義語というのはありませんが、この中だと「一言居士」「牽強付会」などは比較的よく使われます。

その他、ことわざだと「篦を使う(へらをつかう)」なども類義語に含まれます。

「篦を使う」とは「どちらつかずのあいまいな言い逃れをすること」を表した言葉です。「篦」は塗るのにも剥がすにも使用するので、このような意味となります。

漱石枕流の英語訳

 

「漱石枕流」は、英語だと次のように言います。

「He is too proud to acknowledge his defeat.」(彼は負け惜しみが強い。)

直訳すると、「彼はプライドが高すぎて負けを認めることができない」となります。

「be too proud to~」で「~するのはプライドが許さない」という意味の熟語なので、上記のような訳となります。

その他には、次のような表現を使うことも可能です。

Sour grapes are not strongly talked about.(負け惜しみが強くて話にならない。)

「Sour grapes 」で「負け惜しみ」という意味なので、「Sour grapes are strong」⇒「負け惜しみが強い」という役になります。

漱石枕流の使い方・例文

 

最後に、「漱石枕流」の使い方を例文で紹介しておきます。

  1. 彼の苦し紛れの言い逃れは本当に見苦しいね。まさに漱石枕流の人だと言えるよ。
  2. 無理にこじつけるようなことはやめた方がいい。漱石枕流だと思われても仕方ないよ。
  3. 兄は漱石枕流なところが多々あり、言葉で指摘しても素直に認めるようなタイプではない。
  4. 彼女は自分が間違っていても謝らないことが多い。漱石枕流のようなことはやめてほしいよ。
  5. あいつは屁理屈が多く、聞いていられないような漱石枕流の弁明を平気ですることがある。
  6. 今さら負け惜しみを言ってもしょうがないだろう。私は漱石枕流のようなことはしない。

 

「漱石枕流」は例文のように、無理にこじつける人・負け惜しみが強い人などを対象とします。

そのため、基本的に良い意味としては使われない四字熟語です。多くはその人の見苦しさを指摘したり、素直でないことを注意したりするような際に使われます。

なお、言い回しとしては「漱石枕流の~」「漱石枕流のような~など」が多いです。

まとめ

 

以上、本記事のまとめです。

漱石枕流」=負け惜しみの強いこと・自分の失敗を認めず、言い逃れをすること

語源・由来」=春秋時代の武将・孫楚が「沈石漱流」を誤って「漱石枕流」と言い間違えたことから。

類義語」=「一言居士・頑固一徹・牽強付会・堅白同異・指鹿為馬」

英語訳」=「He is too proud to acknowledge his defeat.」「Sour grapes are not strongly talked about.」

「漱石枕流」は夏目漱石というペンネームにまで影響を与えた四字熟語です。使われる機会も意外と多いため、ぜひこれを機に正しい意味を覚えて頂ければと思います。