「支援」と「援助」の違いはどこにあるのでしょうか?社会福祉や介護などに関する場面で、この二つの言葉をよく目にします。
さらに、似たような言葉で「補助」が使われることもあります。今回はこれらの言葉の使い分けについて詳しく解説しました。
支援の意味
まずは、「支援」の意味からです。
【支援(しえん)】
⇒力を貸して助けること。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「支援」とは「力を貸して助けること」を意味します。
「支援」は、文字通り「支える」と書きます。したがって、大まかなイメージとしては「部分的に助けてあげること」を表したものとなります。
例えば、「事業の支援」であれば「その事業の足りない部分に絞って金銭を与える」という意味です。また、「被災地の復興支援」であれば「食料や水などを与えて、できる範囲で助ける」という意味です。
このように、相手のことを部分的に助ける行為を「支援」と言うわけです。
「支援」と聞くと何となく全面的に助けるようなイメージですが、実際には相手のすべてを助けるわけではありません。元々この言葉は英語の「support(サポート)」を訳した語だと言われています。
サッカーの応援をしている人を、「サポーター(支援者)」などと呼びます。そのため、「支援」というのはあくまで部分的な脇役を表した言葉となるのです。
援助の意味
続いて、「援助」の意味です。
【援助(えんじょ)】
⇒困っている人に力を貸すこと。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「援助」とは「困っている人に対して力を貸すこと」を意味します。「援助」は「対象のほぼすべてを助ける行為」を表したものです。
例えば、「資金の援助」であれば「資金がないので、必要資金を全額与えてあげる」という意味です。また、「学費の援助」であれば「親が子供に学費を全面的に負担してあげる」という意味です。
つまり、大前提として援助される側は、自分では何もできない状況にあることが分かるかと思います。その中で、誰かに助けてもらうために「金銭や物品などをもらう」ということです。
なお、「援助」の方は英語だと「assistance(アシスタント)」と言います。こちらは普段はあまり耳にしませんが、マジシャンの「アシスタント」などの使い方があります。マジシャンの代わりに何か道具などを運んだりするような人のことです。
支援と援助の違い
ここまでの内容を整理すると、
「支援」=力を貸して助けてあげること。
「援助」=困っている人に対して力を貸すこと。
ということでした。
どちらもほぼ同じような意味ですが、実際には明確な違いが二つあります。
一つ目は、「助ける度合い」です。
「支援」は、ある程度できる人に対し、部分的に助けてあげることです。したがって、助ける度合いは小さい言葉だと言えます。
一方で、「援助」の方はできることが少ない・あるいは何もできない人を助けてあげることです。そのため、こちらは助ける度合いは大きい言葉だと言えます。
そして、二つ目は「助ける人のポジション」です。
「支援」をする人はあくまで脇役ということでした。そのため、最終的に行動する人は「支援をされる側(助けられる人の側)」ということになります。
対して、「援助」をする人は主役です。こちらは、できることが少ない人に対して主体的に動き、本人ができないことを代わりにやってあげることを表します。
これらの解説を踏まえた上で、「介護」という言葉で比較してみると、「介護支援」は一日の中の数時間だけヘルパーさんに助けてもらうようなイメージとなります。助ける度合いは小さく、ヘルパーさんも脇役と言っていいでしょう。
一方で、「介護援助」となると、重い病気や障害などで一日中ヘルパーさんに世話をしてもらうようなイメージとなります。助ける度合いは非常に大きく、ヘルパーさんも主体的に動かないと一日の作業は成り立ちません。
このように、同じ言葉で比較すると分かりやすいかと思います。
補助の意味
似たような言葉で、「補助」があります。
【補助(ほじょ)】
⇒不足しているところを補い助けること。また、その助けとなるもの。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「補助」とは「不足しているところを補い助けること」を意味します。
「補助」も「支援」や「援助」と似ていますが、最大の違いはその使い方にあります。「補助」は、介護や看護などの専門的な分野ではあまり使いません。
どちらかと言うと、もっと一般的な場面で使います。例えば、「アルバイトで生活費を補助する」のような使い方です。
まれに政治や福祉の分野などで使うことはありますが、「補助金」など限定的な使い方のみです。
また、その意味も若干異なります。「支援」や「補助」は、物事をゼロからプラスの方向性へ押し出すイメージですが、「補助」はマイナスからゼロにするようなイメージです。
つまり、同じ「助ける」でも「補助」の方が何かを埋め合わせるイメージが強い言葉ということになります。
使い方・例文
最後に、それぞれの使い方を例文で紹介しておきます。
【支援の使い方】
- 子どもの安全を支援するために、防犯対策がとられた。
- 経済的な支援のおかげで、彼らの自立が達成された。
- 今回のプロジェクトは全面的に私が支援させて頂きます。
- 仕事が行き詰まっているので、部下に支援の手を差しのべた。
- NPO法人により、被災地に支援金が支払われたようだ。
【援助の使い方】
- 発展途上国の福祉を向上するために、経済援助が行われた。
- 銀行の資金援助により、その会社は息をつないでいる状況だ。
- 学費を援助してもらうことで、無事に大学へ入学できました。
- 看護師さんの懸命な援助により、容態は安定してきたようだ。
- 病気で動けない人に対しては、生活の援助が必要です。
【補助の使い方】
- サプリメントは、別名「栄養補助食品」とも呼ばれる。
- 彼の役割は雑用なので、あくまで補助的なものだ。
- 補助金の申請が通り、無事にお金が振り込まれた。
- アルバイトによって生活費を補助するつもりです。
まとめ
以上、本記事のまとめとなります。
「支援」=力を貸して助けてあげること。
「援助」=困っている人に対して力を貸すこと。
「補助」=不足しているところを補い助けること。
「違い」⇒「支援」は助ける度合いは小さく部分的だが、「援助」は助ける度合いは大きく主体的。「補助」はマイナスからゼロにする埋め合わせを表す。
「支援」は最終的には対象の力に任せますが、「援助」は対象のほぼすべてを助けます。「補助」に関しては埋め合わせをすることだと覚えておきましょう。