「生々流転」と呼ばれる四字熟語をご存知でしょうか?
古くからある言葉で、横山大観や岡本かの子の作品名としても使われていました。最近だと、さだまさしさんの曲名としても用いられているようです。
ただ、初めて見た人はなかなかイメージがつかみにくいと思われます。そこで本記事では、「生々流転」の意味や由来、類義語などを含め詳しく解説しました。
生々流転の意味・読み方
最初に、読み方と基本的な意味を紹介します。
【生々流転(せいせいるてん)】
⇒すべての物は絶えず生まれては変化し、移り変わっていくこと。「生々」は「しょうじょう」とも読む。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「生々流転」は「せいせいるてん」もしくは「しょうじょうるてん」と読みます。どちらの読み方でも可能ですが、一般的には前者の「せいせいるてん」と読むことが多いようです。
「生々流転」とは「すべてのものが絶えず生死を繰り返して移り変わっていくこと」を表したものです。
例えば、私たち人間は等しくこの世に生まれてきますが、いずれは年を重ねていき死を迎えます。また、人間が飼っている犬や猫などのペットも月日が経てば死を迎えます。
さらに、自然界に存在する草木や花々、果物なども春から夏、秋、冬になるにつれて姿・形が移り変わり、結局は枯れてしまいます。
つまり、自然界に存在するあらゆるものは、生まれては死に、死んでは生まれてを絶えず繰り返していると言えます。こういった現象を「生々流転」と呼んでいるわけです。
生々流転の語源・由来
「生々流転」は、「生々」と「流転」から成る四字熟語です。
まず「生々」とは「生きることを繰り返す」、すなわち「何度も生まれてくること」を表します。そして、「流転」とは「流れて転ぶ」と書くので、「常に変化し続けること」を表します。
以上、二つの言葉を合わせることで「生命が何度も生き死にを繰り返し、形を変え続けること」という意味になるわけです。
元々、この言葉は仏教を由来として広まりました。仏教では、死んだ後、六道(りくどう)と呼ばれる次の六つの世界のいずれかに行くとされています。
- 「地獄道(じごくどう)」
- 「餓鬼道(がきどう)」
- 「畜生道(ちくしょうどう)」
- 「修羅道(しゅらどう)」
- 「人間道(にんげんどう)」
- 「天道(てんどう)」
前者三つを「三悪道」、後者三つを「三善道」と言います。つまり、この6つの世界をさまよった後に、次の新たな命に生まれ変わるということです。この事を仏教用語で「流転」と呼んでいたのです。
仏教では、一度死んだとしても次の来世で再び違う命が与えられるとされています。
前世で善い行いをした人は、次は善い条件の元に生まれたり、逆に前世で悪い行いをした人は、次は悪い条件の元に生まれたりするという話を聞いたことがある人もいるかもしれません。
「生々流転」とはそのような仏教の死生観を表した四字熟語ということになります。
生々流転の類義語
続いて、「生々流転」の「類義語」を紹介します。
基本的にはどれも仏教用語から来た四字熟語となります。意味としては「生死を繰り返すこと・永遠に変化し続けること」といった内容が共通しています。
この中でも特に、「輪廻転生」と「諸行無常」はよく使われる四字熟語です。高校現代文などでも出題されやすい言葉だと言えます。
生々流転の対義語
逆に、「対義語」としては次のような言葉が挙げられます。
- 「不変(ふへん)」
- 「不動(ふどう)」
- 「不滅(ふめつ)」
- 「永遠(えいえん)」
- 「永続(えいぞく)」
- 「恒久(こうきゅう)」
こちらは「状態が常に変わらない・同じ状態がずっと続く」といったイメージの言葉です。
「生々流転」は「常に変化し続ける」という意味の言葉でした。したがって、「変わらない・変化しない」といった意味の言葉が反対語となります。
生々流転の英語訳
「生々流転」は、英語だと次のような言い方があります。
①「All things are in flux.(万物は流転する。)」
②「All things are in a state of flux. (万物は流転の状態である。)」
③「All things are constantly changing.(万物は絶えず変化し続ける。」
「All things」は「すべてのもの」という意味なので、「万物」と訳すことができます。
また、「flux」は「流動・流れ・流転」などを意味する名詞です。ここでは、「絶え間ない変化」を意味する「流転」という意味で使われています。
「in a state~」は「~という状態」という意味の熟語、「constantly」は「絶えず」という意味の副詞です。
生々流転の使い方・例文
最後に、「生々流転」の使い方を例文で確認しておきます。
- 世の中のすべての生き物は、生々流転することで進化を遂げてきた。
- 四季の変化を目の当たりにすると、生々流転を感じるこの世である。
- すべての人間は必ず死を迎える。すなわち、生々流転すると言えるだろう。
- 久々に帰郷したら地元の景色が大きく変わっていた。生々流転とはこのことである。
- 一生続く企業というものはない。つまり、世の中は生々流転で成り立っているのだ。
- 生々流転、命ある動物はゆくゆくは死を迎えてこの世からいなくなる運命である。
- 人生とは生々流転そのものである。人がそのまま同じ姿のままというのはありえない。
上記のように、「生々流転」は、人間を含めた動物や植物などの自然を対象とするのが一般的です。さらにそこから派生して、景色や風景、物事、会社などに使う場合もあります。
いずれにせよ、世の中のあらゆるものは絶えず変化し続けるものです。「万物は流転する」ということわざもあるように、あらゆるものは移り変わっていきます。
世の中を見て、変化・変遷を遂げる対象であれば、それらはすべて「生々流転する」と言えるでしょう。
まとめ
以上、本記事のまとめです。
「生々流転」=すべてのものが、絶えず生死を繰り返して移り変わっていくこと。
「語源・由来」=何度も生まれ、変化し続けることから。仏教由来。
「類義語」=「万物流転・生死流転・輪廻転生・諸行無常・有為転変」
「対義語」=「不変・不動・不滅・永遠・永続・恒久」
「英語訳」=「All things are in flux.」「All things are in a state of flux. 」「All things are constantly changing.」
「生々流転」は仏教から生まれた四字熟語ですが、現在では広く一般に使われています。意味を覚えたからには、ぜひ今後の生活で使ってみてはいかがでしょうか?