「生産」と「製造」には、どのような違いがあるのでしょうか?どちらも自動車や食品などのビジネス業界においてよく用いられています。
ただ、いざ違いを説明するとなると多くの人が難しく感じると思われます。そこで今回は、「生産」と「製造」の使い分けについてなるべく分かりやすく解説しました。
生産の意味
まずは、「生産」の意味からです。
【生産(せいさん)】
①生活に必要な物資などをつくりだすこと。
②人間が自然に働きかけ、財・サービスをつくりだし、または採取・育成する活動。
③出産。しょうさん。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「生産」とは「生活に必要な物全般をつくりだすこと」を意味します。例えば、以下のように使います。
- お米を生産する。
- 野菜を生産する。
- マグロを生産する。
- 自動車を生産する。
「生産」は、農作物や食品、工業製品など幅広い物に対して使われるのが特徴です。また、場合によっては「サービス」に対して使われる場合もあります。
- ライセンスを生産する。
- アイデアを生産する。
- プログラムを生産する。
サービスというのはつまり、「人間が作り出した形のない物」と言ってもよいでしょう。このように、形のあるなしに関係なく、様々な物に使われる言葉が「生産」ということになります。
製造の意味
続いて、「製造」の意味です。
【製造(せいぞう)】
⇒原料に手を加えて製品にすること。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「製造」とは「原料に手を加えて製品にすること」を意味します。
「原料」とは「元になる材料のこと」を指します。例えば、以下のような使い方です。
- パンを製造する。
- 薬を製造する。
- テレビを製造する。
- 自動車を製造する。
上記の物はすべて原料が存在します。例えば、パンだと小麦、薬だと石油、テレビや車だと機械部品という原料があります。
「製造」というのは、このように「原料を加工して物を作ること」を表すわけです。逆に言えば、原料そのものを作り出すような時は「製造」とは言いません。
例を挙げますと、「小麦を製造する」のような使い方は誤りです。この場合は、「小麦を生産する」が正しい使い方となります。
生産と製造の違い
ここまでの内容を整理すると、
「生産」=生活に必要な物全般をつくりだすこと。
「製造」=原料に手を加えて製品にすること。
ということでした。
両者の違いは、二つの点から比較するとわかりやすいでしょう。
一つ目は、「作り出す物の範囲の大きさ」です。
「生産」は、農作物・食品・工業製品などあらゆる物全般に使うことができます。要するに、意味の範囲が広いのです。場合によっては、形のないサービスにも使われるのが「生産」ということになります。
一方で、「製造」は原料を加工したり組み立てたりした物にしか使えません。もちろん、形のないサービスには使うことができないため、意味の範囲は狭いです。
したがって、作り出す範囲の大きさで言うと、「生産」>「製造」と定義することも可能となります。言いかえれば、「生産は製造を含んだ言葉」ということです。
二つ目は、「加工が必須かどうか」です。
「生産」は、加工が必須ではありません。もちろん、車や冷蔵庫など加工して作る場合もありますが、お米や野菜など主に加工をしないで作る場合が多いです。
一方で、「製造」は必ず加工をすることが条件となります。「製造」は自動車やお菓子など加工が必須の物にしか使いません。
以上の事から考えますと、加工する物もしない物も両方使えるのが「生産」、加工するものにしか使えないのが「製造」ということになります。
使い方・例文
最後に、それぞれの使い方を実際の例文で紹介しておきます。
【生産の使い方】
- 広大な土地でりんごを生産しています。
- 小松菜やほうれん草を自分の畑で生産する。
- マグロの生産量が日本一の都道府県を調べる。
- 日本の自動車を生産する技術は世界でもトップクラスだ。
- ゲームソフトのライセンスを生産し、一般ユーザーに販売する。
【製造の使い方】
- 牛の乳からチーズやヨーグルトを製造する。
- 自動車を製造する工場で車の点検を行った。
- 今日から薬を製造する会社で働くことになった。
- あの会社は家電を製造する技術がトップクラスと言われている。
- ポテトチップスを製造するには原料のじゃがいもが必要である。
まとめ
以上、本記事のまとめとなります。
「生産」=生活に必要な物全般をつくりだすこと。
「製造」=原料に手を加えて製品にすること。
「違い」⇒「生産」は加工する物としない物の両方に使い、「製造」は加工する物にしか使わない。
「生産」は「製造」も含んだ広い意味の言葉です。両者ともよく使われる言葉なので、ぜひ正しい使い分けをして頂ければと思います。