「ペシミズム」という言葉は、主に哲学において使われています。また、高校現代文の重要単語として登場することもあります。
ただ、具体的にどのような意味を持つのか分かりにくいと感じる人も多いです。そこで今回は、「ペシミズム」の意味や対義語をなるべく簡単に解説しました。
ペシミズムの意味
まず、「ペシミズム」を辞書で引くと次のように書かれています。
【ペシミズム】
①物事を悲観的に考える傾向。悲観主義。厭世(えんせい)主義。厭世観。
②<哲> 世界(人生・歴史)は不合理・無意味であり、それを変えることはできないとみなす態度。さまざまな宗教にも見られるが、哲学学説としてはショーペンハウアーに代表される。
出典:三省堂 大辞林
「ペシミズム」とは簡単に言うと「人生や世界は不幸に満ちているとする考え方」のことです。一言で「悲観主義・厭世主義」などと訳されることもあります。
これだけだと分かりにくいため、具体例を出しましょう。グラスに半分の水が入っていたとします。
ここで、「水はどれくらい入っているか?」という質問を相手に投げかけました。選択肢は次の2つです。
「A」⇒あと半分も入っている。
「B」⇒もう半分しか入っていない。
この場合、ペシミズム的な考えの人は「B」を選択します。
つまり、「あと半分も入っている」と前向きに考えるのではなく、「どうしよう…」「半分しか残っていない…」と悲観的に考えるような心理です。
元々、「ペシミズム」はラテン語で「最悪」を意味する「pessimum」を由来とします。
「最悪」というのは「悪が善よりも支配的であること」を表します。転じて、日本語では「悲観主義・厭世主義」などと訳されているわけです。
「悲観」とは「物事を悲しい方向に考えること」、そして「厭世」は「世が厭(いや)になる」と書くので、「世の中に失望する様子」を意味します。
そのため、「物事の悪い面ばかりをとらえ、世界は常に不幸である」という考えを「ペシミズム」と言うのです。
ペシミズムの対義語
「ペシミズム」の「対義語」は「オプティミズム(Optimism)」と言います。
「オプティミズム」とは、「人生や世界は幸福に満ちているとする考え方」のことです。
こちらも具体例を出しましょう。Aさんの今夜の夕食は、ご飯とみそ汁・焼き魚のみです。
普段の夕食であれば、ここに肉やサラダ・フルーツなどが追加されます。ところが、今夜は3点のみです。
この場合、先ほどの「ペシミズム」だと以下のような考え方となります。
- 「今夜の夕食は少ないなぁ。」
- 「もっと豪華な食事が食べたかった。」
- 「自分はなんて恵まれてないんだろう。」
一方で、「オプティミズム」は以下のような考え方となります。
- 「今夜の夕食は3点もある」
- 「昨日に比べれば全然多い方だ。」
- 「ご飯を食べられること自体、私は恵まれている。」
このように、物事を常に良い方向へ、そして前向きに考えることを「オプティミズム」と言うわけです。
「オプティミズム」は、一般に「楽天主義」と訳されています。「楽天主義」とは「物事を前向きに考えれば、人生はうまく行く」とする考え方のことです。
世の中の幸福に対して、積極的な価値を認めるような時に使います。こちらも「ペシミズム」と同様に、哲学で使われる用語です。
ペシミズムとニヒリズムの違い
「ペシミズム」と似た言葉で「ニヒリズム」があります。「ニヒリズム」とは「真理や価値を否定する考え方」のことです。
「ペシミズム」と「ニヒリズム」は似ていますが、意味の異なる言葉です。
「ニヒリズム」は、世の中の全てを否定します。簡単に言えば、「全てどうでもいい」と考えるのです。
例えば、人生をかけた大学受験をすることになったとしましょう。
「ペシミズム」の場合は、
- 「本当に受かるのだろうか?」
- 「大学に落ちたらどうしよう。」
- 「もしも不合格なら人生終わりだ。」
のように悲観的に考えます。
一方で、「ニヒリズム」の場合は
- 「そもそも大学に行く意味はあるのか?」
- 「大学教育など価値がないのでは?」
- 「受かる受からないなど些細な問題だ。」
のように虚無的に考えるのです。
「ペシミズム」の場合は、「こうなりたい」という希望があるので失敗を恐れますが、「ニヒリズム」の場合はそもそも希望や期待すら持ちません。
つまり、「最悪の状態だ」という価値観すら無意味であると考えるのです。
なお、「ニヒリズム」は「積極的ニヒリズム」と言い肯定的な意味で使うこともあります。
例えば、以下のような考えです。
- 「人は生きる意味や理由などはない。」
- 「そして、死ぬ意味・理由などもない。」
- 「だったら、この無意味な人生をヒマつぶしだと思って楽しもう。」
一種のゲーム感覚のような考えです。このような遊び感覚としての意味は、当然「ペシミズム」にはありません。
「ニヒリズム」というのは肯定的・否定的両方の意味があり、この点が「ペシミズム」との大きな違いと言えます。
ペシミズムの使い方・例文
最後に、「ペシミズム」の使い方を他の言葉も含め例文で紹介しておきます。
【ペシミズムの使い方】
- ペシミズムは、この世を不幸と悲惨に満ちたものと考える。
- 彼の小説は、ペシミズム的な考えが色濃く反映されている。
- 明日の心配を常にするのは、ペシミズムと言えるだろう。
- ペシミズムの信奉者は、物事を常にマイナスへと考えていく。
- 人生に意味を見つけ、悲観的に考えるのはペシミズムである。
【オプティミズムの使い方】
- この世界が最良の状態と考えるのが、オプティミズムだ。
- オプティミズムによって、物事の良い面を考えていく。
- 「楽観主義」は、オプティミズムの訳語の一つである。
- オプティミズムとは、人生の価値を肯定的に認める立場を指す。
- ペシミズムと正反対の思想、それがオプティミズムである。
【ニヒリズムの使い方】
- ニヒリズムは、「人生に意味などない」と考える。
- 権威や価値観を一切否定する考えがニヒリズムである。
- ニーチェは、積極的ニヒリズムと受動的ニヒリズムを説いた。
まとめ
以上、本記事のまとめとなります。
「ペシミズム」=人生や世界は、不幸に満ちているとする考え方。
「対義語」⇒「オプティミズム」
「オプティムズム」=人生や世界は幸福に満ちているとする考え方。
人生というのは、人によって感じ方が違います。ある人にとっては「最良」かもしれませんが、別の人にとっては「悲惨」かもしれません。「ペシミズム」とは後者のような悲観的な考え方を表した言葉となります。