「おすそ分け」という言葉をご存知でしょうか?
漢字だと「御裾分け」とも表記し、ビジネスシーンにおいても用いられています。ただ、誤用が多い表現なので使い方を間違えてしまうと相手に失礼な印象を与えてしまう可能性もあります。
そこで本記事では、「おすそわけ」の意味や語源、類語、例文などを分かりやすく解説しました。
おすそ分けの意味・読み方
まず、「おすそわけ」を辞書で引くと次のように書かれています。
おすそわけ【御裾分け】
⇒「裾分 (すそわ)け」の美化語。お福分け。
すそわけ【裾分け】
⇒(多く「おすそわけ」の形で)もらいものや利益を、さらに他の者に分け与えること。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「おすそわけ」とは「裾分けの丁寧語」で「もらいものや利益を他者に分け与えること」を意味します。
例えば、あなたが誰かから果物を大量にもらったとしましょう。しかし、保存できるお菓子などとは違い、果物は長期的に保存できるものではありません。
そこで、もらった果物を友人に対して分け与えることにしました。このような時に、「いただいた果物を友人におすそわけした」などのように言うわけです。
つまり、「おすそわけ」とは他人からもらった品物をさらに誰かに分け与えることを意味する言葉ということです。
なお、「おすそわけ」の「お」は、ここでは丁寧語としての役割を果たしています。名詞の頭に「お」が付くと、相手に丁寧な印象を与えることができます。
【例】⇒「お酒・お金・お米・お昼・お名前・お住所」など。
「おすそ分け」の「お」もこれと全く同じ使い方だと考えてください。
おすそ分けの語源・由来
「おすそ分け」で注目すべき言葉は「すそ」という言葉です。「すそ」は漢字だと「裾」と表記し、衣服の下の縁(ふち)部分のことを指します。
よくズボンの裾上げをするなどと言いますが、あれはズボンの下の部分をあげてサイズを短くするという意味を表しています。裾は地面に近い場所にあるので、当然汚れやすい箇所です。
この事から、「汚れやすい」⇒「ダメな箇所」⇒「つまらない」と意味が次第に転じていきました。
そして、「分ける」の方ですが、これは文字通り「何かを分ける」という意味です。個人から個人へ、あるいは個人から複数人へ分け与えたり分配したりするような時に使う言葉です。
以上の事から考えますと、「おすそわけ」=「つまらないものを分ける」という意味になります。転じて、現在の「自分がもらった物(余分な物やいらない物)を他人に分ける」という意味になるわけです。
目上の人に使ってもよいか?
「おすそわけ」という言葉には、「つまらないものを与える」という一種の否定的な要素が含まれています。したがって、目上の人に使うのはおすすめできません。
もちろん、本当にいらないから分け与えるという意味を込めて目上の人に与えるような人はいないでしょう。しかし、本来の語源から考えればやはり相手に対して失礼になるので使うことは避けた方が無難です。
もしも目上の人に対して使うような場合は、別の言い方で「お福分け(おふくわけ)」という言葉を使うことを推奨します。
「お福分け」とは「他人から頂いためでたいものを分ける」という意味の言葉です。
「福」という字は「幸福」の「福」などがあるように、「めでたい・幸せ」などの意味があります。めでたいものであれば、相手からしても当然もらいたいものです。そのため、「お福分け」の場合は目上の人に使っても失礼にはあたらないのです。
「おすそわけ」は自分と同等、もしくは自分より下の相手にしか使えない言葉ですが、「お福分け」はどんな人であっても使える言葉だと言えます。
おすそ分けの類義語
続いて、「おすそわけ」の類義語を紹介します。
- 分ける
- 与える
- シェアする
- 山分けする
- 差し出す
- 提供する
- 譲り渡す
- 振り分ける
- 割り振る
- お福分け
- 分配する
- 配分する
「おすそわけ」の類義語は数多くありますが、全く同じ意味の言葉すなわち「同義語」と呼ばれるものはありません。
この中だと「分ける」「与える」などは比較的近い意味ですが、これらの言葉には「もらったものを~」という意味までは含まれていないです。
また、「山分け」などもよく使われますが、「山分け」は一部ではなく「均等に振り分ける」という意味があります。おすそわけには均等という意味は含まれていないので、そこがわずかな違いだと言えるでしょう。その他、先ほど紹介した「お福分け」も類義語に含まれます。
おすそ分けの英語訳
「おすそ分け」は、英語だと「share」と言います。
「share」は、名詞だと「分け前・取り分・割り当て」などの意味があります。また、動詞だと「分ける、分配する、共有する」などの意味もあります。どちらもモノや利益を他者に分け与える意味があるので、「おすそ分け」を表す英単語として使うことが可能です。
具体的な例文だと、次のようになります。
I shared the fruit with her I got yesterday.(昨日もらった果物を彼女にお裾分けした。)
I got a share from a friend in my neighborhood.(近所の友人からおすそ分けをもらった。)
I’m sorry to have received such a share.(こんなにおすそ分けをもらって申し訳ないです。)
おすそ分けの使い方・例文
最後に、「おすそ分け」の使い方を例文で紹介しておきます。
- 近所の人から大量の野菜をもらった。余っているのでおすそ分けとして友人にもあげよう。
- ママ友からもらった果物が余っていてもう食べきれない。親戚におすそ分けをしないと。
- 一人暮らしだからこんなに食べ物をもらっても食べきれない。友人にもおすそ分けしよう。
- 以前彼から頂いたおすそ分けのお礼がまだだった。今度お菓子でも渡さないといけない。
- 上司からおすそ分けを頂いたので、お返しとしてこちらも何かあげとくべきだろうか。
- 本社で成功した素晴らしいノウハウを、こちらの部署でも御裾分けしていくつもりです。
「おすそわけ」という言葉は、一般には野菜や果物などの食べ物(特に生鮮食品)を対象として使われることが多いです。要するに、時間的、物理的に食べきれない量の食べ物に対して使うということです。
ただし、場合によっては食べ物以外の対象にも使うことがあります。例えば、最後の例文のようなパターンです。
この場合は、「ノウハウ(方法)」という目に見えないものを他者に分け与えるという意味で使われています。「おすそ分け」はこのように、具体的な形がないものに対しても使われる言葉だと認識しておきましょう。
まとめ
以上、本記事のまとめとなります。
「おすそ分け」=もらいものや利益を他社に分け与えること。(裾分けの丁寧語)
「語源・由来」=「すそ(衣服の下の部分で、汚れやすくつまらない箇所)」を分けることから。
「別の言い方」=お福分け。(目上の人に対しても使うことができる。)
「類義語」=「分ける・与える・シェアする・提供する・分配する・配分する」等。
「英語訳」=「share(分ける・分配する・共有する)」
「おすそ分け」という言葉は非常に便利ですが、同僚や仲間、部下などに対して使うものです。目上の人に対して使う場合は「おすそ分け」ではなく、「お福分け」の方を使うようにしましょう。