「おんわ」という言葉は、次のように2つの漢字が使われています。
「温和な気候だ」「あの人は穏和だ」
この2つには、どのような違いがあるのでしょうか?今回は、「温和」と「穏和」の使い分けについて解説しました。
温和・穏和の意味
まず、「おんわ」の意味を辞書で引くと次のように書かれています。
【温和/穏和】
①(温和)気候が暖かで、厳しい変化のないこと。また、そのさま。
②性質などが、落ち着いていて、優しく穏やかなこと。また、そのさま。
③物事が、かど立たず人に受け入れられやすいこと。また、そのさま。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「おんわ」には、全部で3つの意味があります。
1つ目は、「気候が暖かくておだやか」という意味です。
- 温和な気候に変化する。
- 温和な土地に暮らす。
この意味の場合は、「温和」のみで使うのがポイントです。「穏和」の方は使うことができません。
2つ目は、「性質がおだやかでやさしい」という意味です。
- 温和な性格。
- 穏和な人柄。
この意味の場合は、「温和」と「穏和」の両方で使うことができます。
3つ目は、「角が立たない」という意味です。
- 温和な表現にする。
- 穏和な解決法を探る。
「角が立たない」とは「無難な・安全な・堅実な」などと近い意味になります。つまり、「物事をスムーズに進める様子」ということです。
この意味の場合も、「温和」と「穏和」の両方で使うことができます。
温和と穏和の違い
ここまでの内容を整理すると、
「温和」=①気候が暖かくておだやか。②性質がおだやかでやさしい。③角が立たない。
「穏和」=②性質がおだやかでやさしい。③角が立たない。
ということでした。
両者の使い分けを簡単に言うと、性質に対しては両方使えるが、気候に対しては「温和」を使う、となります。
それぞれの語源を確認しておくと、まず「温和」の「温」は、「温水」「温泉」「温厚」「温情」などと同じ漢字です。
一方で、「穏和」の「穏」は、「穏健」「平穏」「穏便」「穏当」などと同じ漢字です。そして、それぞれに共通する「和」は、「なごやか・やわらぐ」という意味です。
ここから両者を比較すると、
「温」=ほんのりあたたかい。心や顔色がおだやかでおとなしい。
「穏」=落ち着いている・静かである。角が立たない。
となります。
つまり、「性質」という面ではどちらもほぼ同じ意味なのに対し、「穏」の方は「あたたかい」という意味は含まれていないことになります。ここから、両者の意味に微妙な違いが出てくるわけです。
ちなみに、日本新聞協会の「新聞用語集」では次のようなルールを決めているようです。
穏和・おんわ→温和
要するに、「穏和」は使わずに原則として「温和」に統一して用いるということです。
一般的には、各メディアも上記のルールに従い、「温和」の方を使っています。理由についてですが、「温和」の方が広い意味を持っているからだと思われます。
「温和」は気候に対して使うことができますが、「穏和」の方は気候に対して使うことができません。そのため、意味の範囲が狭い「穏和」の方は使い勝手が悪いということでしょう。
よって、結論としては「温和」と「穏和」はどちらも使われているものの、温和の方がより一般的な言葉ということになります。
使い方・例文
最後に、それぞれの使い方を例文で紹介しておきます。
【温和の使い方】
- 沖縄は一年を通して温和な気候である。
- 温和な土地を利用して、サトウキビを栽培する。
- 彼は明るく温和なため、みんなから好かれている。
- 彼はもっと温和な態度で接するようにした方がよい。
- 温和な性格の彼女だが、怒ったときは本当に怖い。
【穏和の使い方】
- 彼女は穏和で知的な性格として知られている。
- 穏和な口調で話しかけ、相手への説得を続ける。
- 穏和な表情の中にも、熱い情熱が感じられた。
- 性格がきつい人が多い中で、彼はかなり穏和だね。
- 穏和調停により、ようやく事態が治まった。
一点だけ補足すると、「穏和調停」の場合は「温和」とは書きません。「穏和調停」とは「第三国の調停により、紛争などを解決すること」を表します。
主に国際紛争が起こった時に使われる言葉で、政治のニュース記事などで用いられることがあります。
まとめ
以上、本記事のまとめです。
「温和」=①気候が暖かくておだやか。②性質がおだやかでやさしい。③角が立たない。
「穏和」=②性質がおだやかでやさしい。③角が立たない。
「使い分け」⇒性質に対しては両方使えるが、気候に対しては「温和」を使う。
一般的には「温和」の方が使われています。なぜなら、「穏和」の意味も含んだ広い意味を持つのが「温和」だからです。したがって、もしもどちらを使うか迷った場合は「温和」の方を使えば問題ないでしょう。