「おもい」という言葉は普段からよく使われています。
「仕事への思い」「想いを馳せる」
日常的な文章から履歴書、公文書など様々な場面で使われています。ただ、この二つの使い分けに迷うという人も多いようです。
そこで今回は、「思い」と「想い」の違いについて詳しく解説しました。
思いと想いの意味
まず、「おもい」の意味を辞書で引くと次のように書かれています。
【思い(おもい)】
①おもう。考える。考えをもつ。
②いとしくおもう。心にかける。
③おもい。気持ち。考え。
【想い(おもい)】
⇒おもう。心の中で考える。思いめぐらす。
出典:漢字辞典オンライン
最初に「思い」についてです。「思い」の「思」という字は、上の「田」が人間の脳を表し、下の「心」が心臓を表しています。よって、「思い」の本来の意味は「頭と心を中心として考えること」となります。
一方で、「想い」の「想」という字は「木+目」からできており、下の「心」は同じく「心臓」を表した字です。そのため、「想」の意味は、”「目」で見た具体的な「木」に対して「心」で考える“ということになります。
したがって、「想い」の本来の意味は「心によって具体的なイメージを考えること」となります。
思いと想いの違い
ここまでの内容を整理すると、
「思い」=頭と心を中心として考えること。
「想い」=心によって具体的なイメージを考えること。
ということでした。
両者の違いを簡単に言うと、「意味の範囲」となります。
「思い」は「思考・思案・思慮・意思」などの熟語があるように、頭と心の両方で考えることです。つまり、「考える」という意味で広く一般的に使えるのが「思い」ということです。
例えば、以下のような文です。
- そうだと思います。
- あなたは正しいと思います。
- 彼はAを選ぶと思います。
- 成功してほしいと思います。
- 明日は晴れると思います。
また、「考える」という意味だけでなく、物事を判断するようなときにも使えます。
- 「明日は早く起きようと思います。」
- 「7時に出発しようと思います。」
- 「今日はもう帰ろうと思います。」
このように、広い意味で使えるのが「思い」だと考えて下さい。
一方で、「想い」は「予想・空想・発想・理想」などの熟語があるように、心の中でイメージすることです。したがって、「想い」は心によって具体的な何かを思い浮かべる場合のみ使うことができます。
- 恋人のことを想っています。
- 故郷のことを懐かしく想います。
- 亡くなった母のことを想っています。
- 特別な想いを込めて歌います。
いずれも「好きな人」「懐かしいこと」など具体的な人や物を思い浮かべる場合であることが分かるでしょう。このように、狭い意味で使われるのが「想い」ということです。
まとめると、
「思い」=「考える」という意味で広く一般的に使える。
「想い」=具体的な人や物を思い浮かべる場合のみ使える。
となります。
なお、「想い」の方は単に「明日は早く起きようと想います」のような使い方は不適切と言えます。なぜなら、具体的なイメージを浮かべずに「想い」を使っているからです。
文化庁の見解は?
文部科学省の外局である「文化庁」では、「思い」と「想い」の使い分けは次のような見解を示しています。
こちらも一般的な使い分けと同様に、頭の中にイメージできるものに対して「想い」を使っていることが分かるかと思います。言い換えれば、「想い」という言葉は限定的な使い方をするということです。
そもそも、「想い」という言葉は「常用漢字」には含まれていません。常用漢字とは、「一般人が日常生活において、これくらいは使う」という目安を「国」が示したものです。
この中に、「想い」は入っていないのです。そのため、新聞やテレビ・公文書などでは、「思い」を使うことで統一しています。これは報道業界では、暗黙のルールとして決まっていることです。
思いと想いの使い分け
以上のことを踏まえて、実際にどちらを使うべきか例文を使って確認しておきましょう。次の場合は「思い」と「想い」のどちらを使うべきでしょうか?
- 過ぎ去った日々をおもいおこす。
- 遠い地にいる恋人へのおもいが再燃した。
- 北海道は素晴らしい県だとおもいます。
- 星がきれいな夜に彼女のことをおもう。
- 今日のゲームは巨人が勝つとおもいます。
解答は、
- 「想い」
- 「想い」
- 「思い」
- 「想う」
- 「思い」
となります。
もちろん、1や2に「思い」を使っても完全な間違いではありません。「どちらを使った方が相手に響くか」ということも考えた上で選択するのがよいでしょう。
すでに説明した通り、公文書・報道業界では原則として「想い」は使いません。また、一般的な文章でも、「想い」は場面を限定した使い方が多いです。
例えば、履歴書などで自分の信念を強く相手にアピールするような時、もしくは小説や詩など、自分のおもいを具体的に表現する文学的な作品などにしか「想い」は使いません。
仮に、「想い」を使うべき文を「思い」に代えても違和感はありませんが、逆の場合は多少なりとも違和感があることが多いです。したがって、もしもどちらを使うか迷った場合は、「思い」を使うのが無難と言えるでしょう。
まとめ
以上、本記事のまとめです。
「思い」=頭と心の両方で考えること。(広い意味で使える)
「想い」=心によって具体的な何かを思い浮かべること。(狭い意味でしか使えない)
「使い分け」⇒国・報道業界は「思い」を使うことで統一。
「思い」と「想い」の使い分けは、各業界によって異なります。場面によって上手く使い分けるようにしてください。