「のせる」を漢字で書く場合、次のように二つの書き方があります。
「食べ物を乗せる」「電波に載せる」
この場合の「のせる」は、どのように使い分ければいいのでしょうか?今回は「乗せる」と「載せる」の違いについて詳しく解説しました。
乗せるの意味・文例
まずは、「乗せる」の意味です。
【乗せる(のせる)】
①人を乗り物に乗らせる。
②それによって運ぶ。
③相手を思うとおりにさせる・計略にかける。
④仲間に入れる・参加させる。
⑤(伴奏に)合わせる。
⑥興奮させて、調子づかせる。
⑦ある基準以上になる。
出典:三省堂 大辞林
「乗せる」には全部で7つの意味があります。簡単にイメージできるように、それぞれの例文を確認しておきましょう。
①【人を乗り物に乗らせる】:移動のために乗り物の中や上に身をおく場合に使う。
- 車に乗せる。
- バスに乗せる。
- 馬に乗せる。
②【それによって運ぶ】:空気や液体の流れによって物が移動する場合に使う。
- 風に乗せて花粉がくる。
- 電波に乗せて情報を伝える。
- 潮の流れに乗ってマグロが泳ぐ。
③【相手を思うとおりにさせる】:相手をだましたりコントロールしたりする場合に使う。
- まんまと口車に乗せることができた。
- 儲け話に簡単に乗ってしまった。
- あいつはすぐおだてに乗る奴だ。
④【仲間に入れる・参加させる】:仕事に参加したり仲間に入ったりする場合に使う。
- 私もその仕事に一口乗せてくれ。
- 君のプランに乗ることにした。
- その会議に私も乗せて下さい。
⑤【(伴奏に)合わせる】:音やリズムなどに合わせる場合に使う。
- ギターに乗せて歌う。
- リズムに乗って踊り出す。
- 感情を乗せて曲を歌う。
⑥【興奮させて、調子づかせる】:人を調子づかせるときに使う。
- 調子に乗って失敗する。
- 勢いに乗って決勝戦に進む。
- 図に乗るのもいい加減にしなさい。
⑦【ある基準以上になる】:数値が基準値以上になる場合に使う。
- 売上を100億円の大台に乗せる。
- 年収が1000万円の大台に乗った。
- 株価が2万円の大台に乗った。
このように、「乗せる」には「乗り物に乗る・運ぶ・だます・参加する・合わせる・基準以上になる」などの意味があります。いずれも共通しているのは、「人」や「モノ」を乗せるということです。
載せるの意味・文例
続いて、「載せる」の意味です。
【載せる(のせる)】
①物の上に置く。
②車などの上に荷物などを積む。
③掲載する・記す。
出典:三省堂 大辞林
「載せる」は「乗せる」よりも意味が少なく、3つのみです。
①【物の上に置く 】:何かを物の上に置く場合に使う。置く物は基本的に人以外のモノが対象となる。
- 本を机の上に載せる。
- 料理をお皿に載せる。
- 帽子を頭に載せる。
②【車などの上に荷物を積む】:車やトラックなどに荷物を置く場合に使う。
- 車に荷物を載せる。
- トラックに荷物を載せる。
- タクシーに荷物を載せる。
③【掲載する・記す 】:本や新聞などの紙面に情報を掲載する場合に使う。
- 本に地図を載せる。
- 新聞に広告を載せる。
- 名簿に名前を載せる。
このように、「載せる」には「物の上に置く・荷物を積む・掲載する」などの意味があります。いずれも共通しているのは、「モノ」を載せるということです。
補足すると、「まな板に載せる」という慣用句もあります。「まな板に載せる」とは「議論の対象として取り上げること」を意味します。まな板の上に問題を置くので、「乗せる」ではなく「載せる」の方を使うようにします。
乗せると載せるの違い
ここまでの内容を整理すると、
「乗せる」=「乗り物に乗る・運ぶ・だます・参加する・合わせる・基準以上にする」
「載せる」=「物の上に置く・荷物を積む・掲載する」
ということでした。
つまり両者の違いを簡単に言うと、「人やモノ」をのせるのが「乗せる」、「モノ」をのせるのが「載せる」ということになります。
「乗せる」は、人はもちろん、魚や花粉、売上などのモノに対しても幅広く使われます。一方で、「載せる」の方は本や荷物、料理など基本的にモノに対して使われます。
似たような例で比較しますと、人が人を車にのせる場合は「乗せる」ですが、人が荷物を車にのせる場合は「載せる」となります。
違いを覚えるコツとしては、「載せる」の使い方を先に覚えるのがよいでしょう。なぜなら、「載せる」の方が意味が少ないからです。
「載せる」は、元々「戴冠(たいかん)」という言葉から来ています。「戴冠」とは、王様の頭の上に冠(かんむり)を置く儀式のことです。
「頭の上に冠という物を載せる」
ここから「載せる」をイメージすれば、「人を載せる」などの使い方は間違っていると分かるはずです。後は「乗せる」の複数の意味を徐々に覚えれば使い分けが楽にできるでしょう。
乗せると載せるの使い方・例文
最後に、それぞれの使い方を例文で確認しておきます。以下の「のせる」はどちらを使えばよいでしょうか?
- 幼稚園の送り迎えに、子供をバスにのせる。
- 段ボールをトラックの荷台にのせる。
- ブラックリストに、犯罪者の名前をのせる。
- するどい打球は、風にのってスタンドインした。
- 彼は体重がついに100キロの大台にのった。
- カバンを電車の網棚にのせて、そのまま帰った。
- テーブルの上に本をのせて、読書を始めた。
- 詐欺師のうさんくさい話にのせられてしまった。
正解は、1・4・5・8⇒「乗」、2・3・6・7⇒「載」となります。
まとめ
以上、本記事のまとめです。
「乗せる」=乗り物に乗る・運ぶ・だます・参加する・合わせる・基準以上になる。
「載せる」=物の上に置く・荷物を積む・掲載する。
「違い・使い分け」⇒「乗せる」は人やモノをのせる時に使い、「載せる」はモノをのせる時に使う。
「載せる」は「戴冠」以外にも「積載」などの熟語もあります。そのため、荷物を上に積むような場合は「載せる」を使うようにします。「乗せる」は人や風、花粉などもっと幅広い対象に使う漢字だと覚えておきましょう。