「のびる」という言葉は、次のように二つの漢字が使われています。「身長が伸びる」「寿命が延びる」。
この場合、両者の使い分けはどのように行えばいいのでしょうか?今回は、「伸びる」と「延びる」の違いについて詳しく解説しました。
伸びるの意味
まずは、「伸びる」の意味からです。
【伸びる(伸ばす)】
①それ自身の全体が長くなる。
②引っ張られてまっすぐになる。
③水分を加えて、引き伸ばす。
④発展する・発達する。
「伸びる(伸ばす)」の意味は大まかに4つに分かれます。
1つ目は、「それ自身の全体が長くなる」という意味です。
- 身長が伸びる。
- ヒゲが伸びる。
- 草木が伸びる。
2つ目は、「引っ張られてまっすぐになる」という意味です。
- ゴムが伸びる。
- 針金が伸びる。
- しわが伸びる。
- 背筋が伸びる。
3つ目は、「水分を加えて引き伸ばす」という意味です。
- 絵の具を伸ばす。
- 小麦粉を伸ばす。
- クリームを伸ばす。
そして最後は、「発展する・発達する」という意味です。
- 勢力を伸ばす。
- 才能を伸ばす。
- 売上を伸ばす。
「伸びる」のイメージとしては、「全体が自由な形に増大すること」だと考えればよいでしょう。もっと簡単に言えば、ビヨーンとのびるようなイメージです。
延びるの意味
続いて、「延びる」の意味です。
【延びる(延ばす)】
①つぎ足して長くなる。
②日時が遅れる。
③限界点の外に出る。危機を脱する。
「延びる(延ばす)」の意味は大まかに3つに分かれます。
1つ目は、「つぎ足して長くなる」という意味です。
- 道路を延ばす。
- 線路を延ばす。
- 地下鉄を延ばす。
2つ目は、「日時が遅れる」という意味です。
- 会議を延ばす。
- 遠足を延ばす。
- 旅行を延ばす。
3つ目は、「限界点の外に出る・危機を脱する」という意味です。
- 逃げ延びる。
- 生き延びる。
- 落ち延びる。
※「落ち延びる」とは「捕まらずに、遠くへ逃げること」を表します。
「延びる」のイメージとしては「限界点がさらに遠くへ移ること」だと考えればよいでしょう。言いかえれば、「加わる・延長する」ということです。
伸びると延びるの違い
ここまでの内容を整理すると、
「伸びる」=全体が自由な形に増大すること。(ビヨーンとのびる)
「延びる」=限界点がさらに遠くへ移ること。(加わる・延長する)
ということでした。
つまり両者の違いを簡単に言うと、
「伸びる」は「それ自体が長くなること」、「延びる」は「付け足して長くなること」
だと言えます。
例えば「ゴムを伸ばす」であれば、「ゴムの両端を引っ張り、ゴム自体を長くする」という意味になります。一方で、「ゴムを延ばす」だと、「このゴムに別のゴムを結び付けて長くする」という意味になります。
それぞれの語源も確認しておくと、「伸びる」の「伸」は、「伸縮」「伸長」「屈伸」などと同じ漢字です。転じて、「伸」の方は、「ちぢんでいるもの(かがんでいるもの)をのばす」という意味になります。
つまり、「伸びる」は原則として伸縮性のあるものに使う言葉であることが分かるかと思います。
一方で、「延びる」の「延」は、「延長」「延期」「遅延」などと同じ漢字です。転じて、「延」は「引き延ばす・範囲が広がる・遅れる」などの意味になります。
よって、「延びる」の方は時間や日程・道路など「延長・延期できるものに使う言葉」となるわけです。
以上まとめますと、
「伸びる」=それ自体が長くなること。(伸縮性のあるものに使う)
「延びる」=付け足して長くなること。(延長・延期できるものに使う)
となります。
ちなみに、「伸びる」には「発展する・発達する」などの意味もありましたが、この意味の場合は「伸縮性」ではなく「伸びしろがあるので伸びるを使う」と覚えておくとよいでしょう。「伸びしろ」とは成長や発展をしていく可能性のことです。
使い方・例文
最後に、それぞれの使い方を例文で紹介しておきます。
【伸びる・伸ばすの使い方】
- 彼は髪の毛が伸びるスピードがとても速い。
- 小麦粉を伸ばして、手作りのピザを作る。
- 会社全体で売り上げを伸ばす努力をしよう。
- ヒモの長さが伸びるマジックを披露する。
- 10代の頃が一番学力が伸びると言われている。
【延びる・延ばすの使い方】
- 寝坊したせいで、出発が延びてしまった。
- 相手側は支払いの期日を延ばしてくれた。
- 何とか野良犬から逃げ延びることができた。
- この駅では地下鉄のホームを延ばす工事をしている。
- ひもをつないで長さを3メートルだけ延ばす。
まとめ
以上、本記事のまとめです。
「伸びる」=全体が自由な形に増大する。(それ自体が長くなる)
「延びる」=限界点がさらに遠くへ移る。(付け足して長くなる)
「使い分け」⇒「伸びる」は「伸縮性のあるもの」に使い、「延びる」は「延長・延期できるもの」に使う。
ポイントは、両者の語源を覚えておくことです。「伸」は「伸縮」「伸長」「屈伸」、「延」は「延長」「延期」「遅延」などと同じ漢字です。このように比較すれば、両者の意味の違いが理解しやすくなるでしょう。