申し込み 申込み 申込 違い 使い分け 公用文

「もうしこみ」を漢字で書く場合、「申し込み」「申込み」「申込」のように複数の表記が存在します。

どれも普段からよく使われている印象ですが、よく見ると送り仮名の付け方が異なります。そのため、どの書き方が正しいのかという問題が生じます。

そこで今回は、「申し込み・申込み・申込」の違いや使い分けについて詳しく解説しました。

申し込み・申込み・申込の意味

 

まず、「もうしこみ」という言葉を辞書で引くと次のように書かれています。

申し込むこと。また、その内容や手続き。「結婚の申し込み」「申し込みは本社で受け付けます」「申し込み用紙」

法律で、相手方の承諾を得て、契約を成立させようとする意思表示。

出典:デジタル大辞泉(小学館)

【申(し)込み・申込】

申し込むこと。また、その手続き。 「結婚の-をする」

② 〘法〙 特定の契約を締結しようとする意思表示。相手方の承諾によって契約は成立する。

出典:三省堂 大辞林

上記、2つの辞書から引用しました。国語辞典などの辞書では、「もうしこみ」は「申し込み」と表記されています。

多くの辞書では、上記のように「申(し)込み」と書かれており、例文では「申込み」や「申込」はほとんど使われていません。

「申込」という漢字だけの書き方は右側(後ろ側)に配置されるか、もしくはそもそも辞書に載っていない場合もあります。

辞書の一般的なルールとして、「左側(前側)に表記されているものを優先的に使う」というものがあります。したがって、このルールから鑑みても「申し込み」あるいは「申込み」を使うのが適切と言えます。

ただ、三者とも一応は辞書に載せられているため意味自体に明確な違いはないことになります。

申し込み・申込み・申込の違い

 

では、意味が同じなのになぜそれぞれの表記が異なるのか?という話です。

まず、日本の行政機関の一つである「内閣法制局」の内閣告示では、次のようなことを定めています。

この「送り仮名の付け方」は、法令・公用文書・新聞・雑誌・放送など、一般の社会生活において、「常用漢字表」の音訓によって現代の国語を書き表す場合の送り仮名の付け方のよりどころを示すものである。

出典: 内閣告示 送り仮名の付け方

さらに、この告示の中の『複合の語 通則6(本則)』では、以下のように書かれています。

〔例〕 (1) 活用のある語

 流   打わせる 向かいわせる 以下省略

    (2) 活用のない語

 伸 乗  抜 作 暮らし 売 取 乗 引  歩  移わり 長生 早起 苦 大写 粘 有難み 待さ  乳飲子 無理強 立居振 呼電話 次々 常々 近々 深々 休 行
 
【許容】

読み間違えるおそれのない場合は、次の( )の中に示すように送り仮名を省くことができる。

〔例〕

抜く(書抜く) 込む(申込む) 打せる(打ち合せる・打合せる) 向い合せる(向い合せる) 以下省略~
(乗換え・乗換) 引(引換え・引換) (申込み・申込) 移り変り(移り変り) 以下略
 

要約すると、「もうしこみ」は原則として、常用漢字表に従い「申し込み」と書くのがルールとなっているということです。

ただ、読み間違える恐れがない場合は「申込み」「申込」と書いても許容、つまり許されているということになります。

上記の分かりやすい例で言うと、例えば「伸び縮み」「乗り降り」などの言葉は読み間違えてしまう可能性があります。

「伸縮」は「しんしゅく」とも読めますし、「のびちぢみ」と読んでしまう場合もあります。また、「乗降」も「じょうこう」や「のりおり」とも読めます。

一方で、「申込」という言葉はこれ以外で特に別のまぎらわしい読み方が存在するわけではありません。「しんこみ」などと読み間違える人はまずいないでしょう。

よって、このように読み間違える恐れがない言葉は、送り仮名を短縮して「申込み」「申込」と書いても問題ないということを国が認めているのです。

文化局というのは、日本の漢字のルールを決めている文部科学省の外局です。いわば国と同じ機関だと考えて問題ありません。

その文化局がこのようなルールを定めているため、複数の表記が存在するというわけです。

公用文での使い分け

申し込み 公用文 使い分け 表記

ただ、一般に複数の表記が認められているとは言っても、公用文に関しては明確な使い分けがされているようです。

「公用文」とは「国や公共団体が出す文書や法令などに用いる文書」のことを意味します。以下、こちらも内閣告示から引用します。

送り仮名の付け方について

(1) 公用文における送り仮名の付け方は,原則として、「送り仮名の付け方」(昭和 48 年内閣告示第2号)の本文の通則1から通則6までの「本則」・「例外」、通則7及び「付表の語」(1のなお書きを除く。)によるものとする。ただし、複合の語(「送り仮名の付け方」の本文の通則7を適用する語を除く。)のうち、活用のない語であって読み間違えるおそれのない語については「送り仮名の付け方」の本文の通則6の「許容」を適用して送り仮名を省くものとする。なお、これに該当する語は次のとおりとする。

(前略)~ 申合せ 合せ事項 入れ 込み 立て 出 (以下略)~

出典:内閣訓令第1号 公⽤⽂における漢字使⽤等について

複合の語のうち、次のような名詞は、慣用に従って送り仮名を付けない。

(1) 特定の領域の語で慣用が固定していると認められるもの。

ウ その他。~(略)待合《室》 見積《書》 申込《書》

出典:内閣告示令 送り仮名の付け方 複合の語 通則7

つまり、公用文に関しては原則として「申込み」を使うということです。そして、一般に使われている・使い慣れているなどの慣用的な理由に該当する場合は「申込」を使うということになります。

「申し込み」を使わない理由については詳しくは書かれていませんが、恐らくですが送り仮名を減らすためだと思われます。公用文については、一般に送り仮名を少しでも減らす傾向にあるからです。

また、「申込」に関しては普段から使い慣れている名詞の一部ということで、全て漢字で書くのが望ましいということです。

例えば、「申込書」「申込者」「申込先」「申込用紙」などは、普段から当たり前のように契約書などの書類で使われています。

したがって、このように慣用化している名詞については原則、送り仮名を付けないルールとしているのです。

公用文以外での表記

 

公文書以外の文書、すなわち「私文書」に関しては必ずしも先ほどの原則が当てはまるわけではありません。

しかしながら、一般的には私文書も公文書にならって使い分ける傾向にあります。

一例をあげると、ビジネスシーンなどでは以下のように使い分けることが多いです。

  1. 申し込みを行いました。⇒
  2. 申込みを行いました。⇒
  3. 申込をおこないました⇒
  1. 申込書⇒
  2. 申込み書⇒
  3. 申し込み書⇒

=「よく使われる表記」

=「頻繁ではないが使われる表記」

=「あまり使われない表記」

ビジネスでは公用文とは異なり、「申し込み」を使うことが多いようです。しかし、同じ慣用的な使い方をする際は同じく「申込書」のように使うことがほとんどです。

「申し込み書」と書くことは間違いではありませんが、ほぼないと考えていいでしょう。

その他、手紙や小説、ブログの文章などではどれを選択しても問題ありません。前後の文脈や文字数の兼ね合いなども考慮するのもよいでしょう。

ただ、冒頭でも紹介したように多くの辞書では「申し込み」が優先的に表記されています。したがって、もしもどれを使うか迷った場合は「申し込み」を使うのが無難と言えます。

まとめ

 

以上、本記事のまとめとなります。

もうしこみ」⇒「申し込み・申込み・申込み」は、いずれも意味自体に違いはない。

公用文での表記」⇒原則として「申込み」を使う。慣用的な名詞には「申込」を使う。

公用文以外の表記」⇒「申し込み」を使うのが一般的。慣用的な名詞には「申込」を使う。

基本的には「申し込み」を使う機会が多いですが、どれも使うことができる言葉です。公用文など国が絡む文書に関しては、「申込み」を使うようにしましょう。