「門外不出」と聞いてあなたは何を浮かべるでしょうか?
この四字熟語は、芸術の世界ではよく使われています。また、場合によってはビジネスで用いられることもあります。
今回は、そんな「門外不出」の意味や語源、類義語、反対語などを詳しく解説しました。
門外不出の意味・読み方
最初に、基本的な意味と読みを紹介します。
【門外不出(もんがいふしゅつ)】
⇒貴重な芸術品などで、めったに他人に見せたり貸したりせず秘蔵すること。また、その物。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「門外不出」は「もんがいふしゅつ」と読みます。
意味は、「貴重な芸術品などを他人に見せたり貸したりせずに秘蔵すること」です。「秘蔵(ひぞう)」とは簡単に言うと「人にあまり見せず、大切にしまっておくこと」を表します。
「門外不出」の最も分かりやすい例が、貴重な絵画でしょう。例えば、ピカソが作った絵画『ゲルニカ』は、通常、美術館などで展示されることはありません。
『ゲルニカ』のような貴重な絵画は他人に見せたりはせず、美術館の保管庫に大事にしまっています。これはなぜかと言いますと、絵画を展示するという行為はどうしても絵の劣化や破損、盗難などのリスクがあるからです。
このような絵画のことをよく「門外不出な絵画」などと言ったりします。
世界に一つしかない美術品などは、非常に価値が高く安易に値段を付けられるものではありません。そのため、なるべく人目の付かないように「他人に見せたり貸したりせずしまっておく」という意味で「門外不出」が使われるのです。
門外不出の語源・由来
「門外不出」という四字熟語は、「門外」と「不出」の二つに分けることができます。
まず「門外」とは「門の外」という意味です。「門」には「建物の出入り口」という意味があるので、「門外」とは「建物の出入り口の外・敷地外」を表します。
そして、「不出」とは「外へ出さない」という意味です。「不」は否定を表すことから「何も外に出さないこと」を意味します。
以上の事から考えますと、「門外不出」は「家の門の外へ何も出さないこと」を表す言葉だと言えます。言い換えれば、「大事なものはすべて家の中にしまっている」ということです。転じて、「美術品などの大事な物を外へ出さない」という意味になるわけです。
なお、この四字熟語は昔の中国などに由来があるものではありません。
具体的にいつ誰が作ったなどの経緯は不明ですが、森鷗外の作品である『護持院原敵討』のその用例が確認されています。したがって、少なくとも明治時代頃からはすでに存在していた四字熟語だと思われます。
門外不出の類義語
続いて、「門外不出」の「類義語・言い換え表現」を紹介します。
四字熟語で「門外不出」と全く同じ意味の言葉、すなわち「同義語」と呼ばれるものはありません。
例えば、「一子相伝」は自分の子に対してのみ使い、「父子相伝」は父から子に対して使います。どれも似ていますが、意味がわずかに異なります。
四字熟語以外だと、「家宝」「家蔵」「機密」なども比較的近い意味だと言えるでしょう。その他、慣用句だと「秘伝の奥義」なども類義語に含まれます。
門外不出の対義語
逆に、「対義語」としては以下の2つが挙げられます。
門外不出は別の言い方をするなら、「一部の人にだけしか見せないこと」とも定義できます。したがって、そういった規制や制約をなくし、自由に物事を行う様子を表した言葉が反対語となります。
門外不出の英語訳
「門外不出」は、英語だと「secret」と言います。
「secret」は「秘密の」「内密の」などの意味を持つ形容詞です。どちらも「表に見せず隠すこと」を表す単語なので、「門外不出」と訳すことができます。
英語圏では「門」や「外」などの直接的な意味を表す単語ではなく、「secret」という間接的な単語を使います。
例文だと、次のような言い方です。
I’m going to keep this painting as a secret.(この絵画は門外不出として秘蔵するつもりです。)
It’s a secret painting so I can’t show it to you.(門外不出の絵画なのであなたには見せることができません。)
門外不出の使い方・例文
最後に、「門外不出」の使い方を実際の例文で紹介しておきます。
- 門外不出の古文書なので、申し訳ないが誰にも貸し出すことはできない。
- 先祖代々伝わる門外不出のレシピを、あなたにだけ特別教えることにしよう。
- 門外不出の骨董品なので、正直いくらの値段が付くのかは全く想像できません。
- 世にはめったに出回らない門外不出の酒を特別に飲ませてもらうことになった。
- 門外不出の経営ノウハウを社長から直接教えてもらえるなんて大変光栄です。
- 門外不出のノウハウなので、他社には絶対に漏らさないように。これは企業秘密です。
「門外不出」は、貴重な芸術品に対して使うのが基本となります。ただし、必ずしも芸術品に対して使うとは限りません。
例えば、例文2のレシピ、例文4のお酒のように、私たちが作ったり飲んだりする食べ物に対して使うことも可能です。
また、最近ではビジネスに対して使うことも多くなってきてます。ビジネスでは、具体的な技術であったり、仕事のノウハウ(やり方)を誰かに伝えたりといった意味合いで使われます。
いずれにせよ、「門外不出」を使う際は、貴重な物事や秘伝の技術などを対象とします。そういった価値のあるものをアピールする際にこの四字熟語を使うのが本来の正しい使い方だと言えます。
まとめ
以上、本記事のまとめです。
「門外不出」=貴重な芸術品などを他人に見せたり貸したりせずに秘蔵すること。
「語源・由来」=「家の門の外へ何も出さないこと」から。
「類義語」=「一子相伝・父子相伝・他言無用」
「対義語」=「門戸開放・規制撤廃」
「英語訳」=「secret(秘密の・内密の)」
「門外不出」という四字熟語は、貴重な品物であることを強調するような時に便利です。今後の文章で使う機会があったらぜひ使ってみましょう。