「目を見張るものがある」という慣用句があります。普段の生活だけでなく、ビジネスなどでもよく使われる表現です。
ただ、具体的にどう使うのかが分かりにくい言葉でもあります。目上の人に使ってもよいのかも気になる所です。
そこで本記事では、「目を見張るものがある」の意味や例文、語源、言い換え表現などを詳しく解説しました。
目を見張るものがあるの意味
「目を見張るものがある」とは「一見に値する・素晴らしい」などの意味を持つ慣用句です。
「見張る」は「敵を見張る」などの表現があるように「注意深く監視する」という意味があります。しかし、ここでの「見張る」は上記のような意味で使われているわけではありません。
「見張る」は別の漢字だと「瞠る」とも書き、「目を大きく開いて見ること」を表します。つまり、「驚いたり感心したりして、目を大きく見開くこと」がこの言葉の語源ということです。
例えば、富士山の頂上に到着し、絶景を目の当たりにした時などは、驚いて目を大きく開いてしまいます。このような場面では、「目を見張るものがある」などと言うことができます。
他には、有名歌手の歌声を生で聞き、鳥肌が立つような経験をした時なども「目を見張るものがあった」などと言います。
驚いたり感心したりして、「すごい」「すばらしい」と感じたものであれば、それは「目を見張るもの」ということになります。
「目を見張る」との違い
「目を見張るものがある」と「目を見張る」は、厳密には異なる言葉です。「目を見張る」を辞典で引くと、次のように記述されています。
【目を見張る】
⇒怒ったり、驚いたり、感心したりして目を大きく見開く。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
【目を見張る】
⇒目を大きく開けて見る、または、優れたものなどを目の当たりにして驚いたり感動したりすること。「目を見張るものがある」などという場合は、「一見に値する」「素晴らしい」などの意味。
出典:実用日本語表現辞典
上記、二つの辞典から引用しました。
「目を見張る」とは「怒ったり驚いたり感心したりして、目を大きく見開くこと」を表す慣用句です。つまり、「怒って目を見開く」という負の意味もあるのが「目を見張る」ということです。
その他、辞典の記述にはありませんが、「(マナーの悪さなどに)あきれること」という意味で使われることもあります。
【目を見張るの例文】
- 豪華な結婚式に、私たちは目を見張るだけだった。(驚く心理)
- 息子のここ最近の活躍ぶりには、目を見張るよ。(感心する心理)
- 約束を破られた彼は、目を見張るように睨みつけた(怒りの心理)
- 彼女の部屋はあまりに汚いので、目を見張る。(あきれた心理)
上の例文だと3が「怒りの心理」を、4が「あきれた心理」を表しています。このように、良い意味・悪い意味の両方の意味を含んだ慣用句が「目を見張る」ということです。
一方で、「目を見張るものがある」には、ネガティブな意味は含まれていません。基本的に、相手の素晴らしさに感心したり驚いたりしたようなポジティブな場面でしか使わない表現です。
したがって、例えば「彼女の部屋はあまりに汚いので、目を見張るものがある」とは言いません。また、約束を破った人に対して、「彼は目を見張るものがある」とも言いません。
両者の違いを簡潔に言うならば、「目を見張る」の方が広い意味を持った言葉ということです。ただ、「目を見張る」は、実際には「怒り」や「あきれ」の心理を表すような場面ではそこまで多くは使われないです。
目上の人には使うことができない
「目を見張るものがある」は、目上の人に対しては使うことができません。なぜなら、「すばらしい」「感心する」など一種の上から目線の意味を含んでいるためです。
したがって、ビジネスなどにおいて上司にこの表現を使うのは避けた方がよいです。それでも目上の人に対して、「驚きや感動の意」を伝えたい場合は、次のような語を使うのがよいでしょう。
- 感動しました
- 感服しました
- 感激しました
- 感銘を受けました
- 尊敬します
- 敬服します
- さすがですね
- すばらしいですね
- お見事ですね
上記の言葉は、上から目線の印象を押さえ、目上の人に対して素直に意を示した表現です。もしも目上の人の言動で、驚きや感心を得た場合は、これらの語を使うのが無難だと言えます。
「感服」や「敬服」など、相手によっては堅苦しい表現だと感じた場合は、「さすがですね」「すばらしいですね」など口語的な言い方をするのもよいです。
目を見張るものがあるの類義語
続いて、「目を見張るものがある」の類義語を紹介します。
一つ目の「目覚ましい」のみが「目を見張るものがある」の類語、それ以外の言葉はすべて「目を見張る」の類義語となります。
「目を見張る」を言い換えた語はいくつかありますが、全く同じ意味の言葉(同義語)はありません。
例えば、「目を丸くする」は「驚き」の表情だけに使える慣用句です。また、「目を剥く」は「怒り」もしくは「驚き」にしか使えない慣用句です。
「目を見張る」は、「驚き・感心・怒り」のいずれかの感情に使えるという点で、他の言葉とは異なるものとなります。
目を見張るものがあるの英語訳
「目を見張るものがある」は、英語だと次のように言います。
「be amazed to~」「~に驚かされる」
「be impressed with~」(~に感動する・感心する)」
「stunning」(素晴らしい・すてきな・魅力的な)」
「breathtaking」(すごい・驚異的な・驚くほどの)」
「amaze」は「~を驚かせる」、「impress」は「~を感心させる」という意味の動詞です。それぞれ熟語にすることで、「驚き」と「感心」を意味する表現にすることができます。
また、「stunning」は「気絶させる」という意味が原義で、そこから派生してすばらしい様子を表す形容詞として使うことができます。「breathtaking」は「はらはらさせる・息を呑むほどの」という意味の単語で、「驚き」を表す形容詞として使うことができます。
例文だと、それぞれ以下のような言い方です。
I was amazed to hear his voice. (彼の声は目を見張るものがありました。)
I was impressed with their success.(彼らの活躍は目を見張るものがあった。)
Every painting is stunning.(どの絵画も目を見張るものがあります。)
She is a breathtaking beauty.(彼女は目を見張るような美人だ。)
目を見張るものがあるの使い方・例文
最後に、「目を見張るものがある」の使い方を例文で紹介しておきます。
- ここ最近の息子の活躍ぶりは、目を見張るものがある。本当に驚いているよ。
- あいつの勉強の上達ぶりは、目を見張るものがある。東大合格も夢じゃないだろう。
- ここの美術館の絵は、どれも目を見張るものがある。ずっと見ていても飽きないよ。
- 彼女のピアノの上手さは目を見張るものがある。ぜひ生で演奏を聴かせてもらいたいものだ。
- 彼の飲み込みの速さは、目を見張るものがある。たった3日で仕事の内容を覚えてしまうなんて。
- 高級ホテルのサービスは目を見張るものがある。食事の質、接客の質。どれをとっても素晴らしい。
「目を見張るものがある」は、感心したり驚いたりするときに使う慣用句です。基本的に対象を褒めるときに使うものなので、ポジティブな意味でしか使われないと考えて問題ありません。
「目を見張る」だと、先述したようにネガティブな意味で使われることもあります。しかし、後ろに「~ものがある」が付く言い方だと、例文のようにどれも良い意味として使われます。
褒める対象としては、勉強やスポーツなどの上達ぶり、音楽や絵画などの芸術作品の素晴らしさなどが多いです。その他には、仕事の成長ぶり、サービスの質、美しい景色などを対象とすることもあります。
「一見に値する素晴らしいもの」であれば、それは「目を見張るものがある」と言うことができます。
まとめ
以上、本記事のまとめです。
「目を見張るものがある」=一見に値する・素晴らしい。
「目を見張る」=怒ったり驚いたり感心したりして、目を大きく見開くこと。
「類義語」=「目覚ましい・目を丸くする・目を皿にする・目を剥く・舌を巻く・息を呑む」など。
「英語訳」=「be amazed to」「be impressed with」「stunning」「breathtaking」
「目を見張るものがある」という表現は、様々な場面で使うことができます。ただ、似たような言葉である「目を見張る」とは異なるものです。使う際には違いを意識して実際の文章で使って頂ければと思います。