舟を漕ぐ 意味 語源 由来 例文 使い方 類語 英語

「舟を漕ぐ(ふねをこぐ)」という慣用句をご存知でしょうか?

方言と誤解する人もいますが、一般に使われている標準語です。ただ、どのような由来を持つ言葉なのか気になる人も多いようです。

そこで本記事では、「舟を漕ぐ」の意味や語源、使い方、英語訳などを詳しく解説しました。

舟を漕ぐの意味・読み方

 

舟を漕ぐ」は「ふねをこぐ」と読みます。

意味は「座ったまま身体を前後に揺らして居眠りをすること」です。また、単に「居眠りすること」自体を指すこともあります。

例えば、学校の授業中に居眠りをし、ウトウトしながら体を揺らす行為は舟を漕ぐことです。また、電車の中で座席に座りながら、体を揺らして居眠りする行為なども舟を漕ぐことです。

つまり、「舟を漕ぐ」とは、人がウトウトしながら居眠りする様子を端的に表した慣用句ということになります。

「居眠り」とは「座ったり腰掛けたりしながら眠ること」を意味します。したがって、イスに座りながら眠ったり、乗り物の座席に腰掛けながら眠ったりすることを「舟を漕ぐ」と言うのです。

逆に言えば、横になって普通に眠るようなときはこの慣用句は使いません。この場合は単に「眠る」「布団につく」などと言います。

舟を漕ぐの語源・由来

 

「舟を漕ぐ」という言葉は、「人が居眠りをする様子が、櫓(ろ)で舟をこぐ形に似ていること」から来ています。

「櫓(ろ)」とは「舟をこぐ際に使われる太い棒のこと」です。主に舟尾につけられ、押し引きしながら水をかき、舟を推進させていくために用いられます。

ところが、「櫓」は一般にカヌーなどで使われているオールやパドルとは異なり、舟体に固定されているものではありません。そのため、前後に体をゆすってひねりを加えながらこぐ必要がありました。

この前後に体をゆすって櫓を漕ぐ姿が、人が居眠りをする姿に似ていたため、次第に居眠りする事を「舟を漕ぐ」と言うようになったのです。

人は居眠りをすると支える力がなくなるため、次第に頭を含めた上半身が倒れそうになります。一方で、そのまま倒れて眠らないように、無意識に自分を起こそうとする本能も働きます。

この時の倒れそうになる動きと元に戻そうとする動きを交互に行う姿は、まさに櫓を漕ぐ姿を現しています。そのため、現在でもなお、居眠りする姿を「舟を漕ぐ」と表現するわけです。

なお、「艫」と似たような言葉で「櫂(かい)」があります。「櫂」とは、舟の横から伸ばして漕ぐ棒状の道具のことです。「櫂」は支点がしっかりと固定されているオールと似ており、前後にそこまで体をゆすりながら漕ぐ必要はないという特徴があります。

舟を漕ぐの類義語

舟を漕ぐ 類義語 別の言い方 同義語 

続いて、「舟を漕ぐ」の類義語を紹介します。

  • 寝入る
  • 一睡する
  • 仮眠をとる
  • 睡眠をとる
  • 目を閉じる
  • まぶたを閉じる
  • うたた寝する
  • ウトウトする
  • ボンヤリする
  • うつらうつらする
  • 半睡状態になる

「舟を漕ぐ」と全く同じ意味の言葉(同義語)はありません。基本的にはどれも眠る行為を表すものですが、それぞれ意味が異なります。

例えば、「寝入る・仮眠をとる・睡眠をとる」などは、主に布団に入って眠るような時に使います。一方で、「舟を漕ぐ」は布団ではなく何かに座って眠るような時に使います。

また、「ウトウトする・ボンヤリする・うつらうつらする」などは半分眠りかけているような状態です。対して、「舟を漕ぐ」の方は体は揺れてはいるものの、基本的には完全な睡眠状態の時に使います

この中で比較的近い言葉としては「うたた寝する」が挙げられます。

うたた寝」とは「眠るつもりもないまま、うとうとと眠ること」です。主に「テレビを見ながらうたた寝した」「こたつでうたた寝した」などのように用います。

「うたた寝」は、「舟を漕ぐ」よりも「知らない間に思わず寝てしまった」という意味合いが強い言葉です。また、必ずしも座ったり腰掛けたりする場面に限定されるというわけではありません。

場合によっては、こたつに入って横になりながら寝入ったり、ソファでTVを見て横になりながら寝入ったりする際にも使います。この点が「舟を漕ぐ」との違いだと言えます。

舟を漕ぐの英語訳

 

「舟を漕ぐ」は、英語だと「row a boat」と言います。ただ、これだと文字通り「ボートを漕ぐ」という意味になってしまい、英語圏の人には伝わりません。

そのため、実際には次のような表現をするのがよいです。

①「nod off」(眠り込む・眠る)

②「doze off」(うとうとと眠る・うたた寝する)

③「fall asleep」(寝入る・眠りに落ちる)

「nod」と「doze」はどちらも「居眠りする」という意味の動詞です。「off」は「離れて」「遠くへ」などの意味の前置詞で、接触していたものが離れるような意味を持ちます。

両者を合わせることで、「眠りに落ちて意識が遠く離れていく」といった意味を持つ表現となります。「nod off」と「doze off」はどちらもよく使われていますが、「nod off」の方が特に座ったまま眠り込むような時に使われます。

また「fall asleep」は「眠りに落ちる」という意味の熟語です。起きている状態から眠りにつくことを指す表現としてよく使われています。

例文だと、それぞれ以下のような言い方です。

You must not nod off during class.(授業中に居眠りしてはいけない。)

He began to doze off while sitting on the couch.(彼はソファに座りながら居眠りを始めた。)

I fell asleep while I was watching TV.(私はテレビを見ながら眠りに落ちた。)

舟を漕ぐの使い方・例文

 

最後に、「舟を漕ぐ」の使い方を例文で紹介しておきます。

  1. 授業中にも関わらず、あいつはよく舟を漕ぐことがある。
  2. 午後の講義は食事の後ということもあり、舟を漕ぐ生徒が増えてくる。
  3. 電車の中で舟を漕ぐようなことがないように今日は早めに寝ます。
  4. 彼は会議中にたびたび舟を漕ぐので、上司からその度に叱責を受ける。
  5. 彼女はよほど疲れていたのか、イスに座ったまま舟を漕ぎ始めたようだ。
  6. 仕事で疲れている日などは、本を読みながら舟を漕ぐこともよくあります。
  7. 夜遅くまで勉強したとしても、次の日の授業で舟を漕ぐようでは意味がない。

 

「舟を漕ぐ」という慣用句は、様々な場面で使うことができます。学校の授業や仕事の会議、自宅のソファや乗り物の車内など居眠りをしてしまうような場面であれば基本的に使うことが可能です。

実際に使われるケースとしては、必ずしも身体を前後に揺らして眠るとは限りません。単に「居眠りをする」「居眠りを始める」といった文脈で用いられることもあります。

ただ、先述したように同じ眠る行為でも普通に横になって眠るような場合は使いません。例えば、「ベッドで舟を漕ぐ」などの使い方は誤用です。あくまでどこかに座りながらウトウトと眠りに入る様子を表す時に使う言葉となります。

まとめ

 

以上、本記事のまとめです。

舟を漕ぐ」=座ったまま身体を前後に揺らして居眠りをすること居眠りすること

語源・由来」=人が居眠りする様子が、櫓で舟をこぐ形に似ていることから。

類義語」=「寝入る・仮眠をとる・睡眠をとる」ウトウトする・ボンヤリする・うつらうつらする・うたた寝する」など。

英語訳」=「nod off」「doze off」「fall asleep」

「舟」に対して「眠る」という行為は、一見すると関係が薄いようにも見えます。しかし、本来の由来を知ればその疑問もすっきり解決できたはずです。これを機に正しい意味と使い方を覚えて頂ければと思います。