「面の皮が厚い」という慣用句をご存知でしょうか?
主な使い方としては、「面の皮が厚い人」「面の皮が厚い女」などのように用いられます。ただ、この言葉の具体的な使い方や由来などが気になる人も多いと思います。
そこで今回は、「面の皮が厚い」の意味や読み方、由来、英語などを含め詳しく解説しました。
面の皮が厚いの意味・読み方
最初に、読み方と基本的な意味を紹介します。
【面の皮が厚い(つらのかわがあつい)】
⇒恥を恥とも思わない。ずうずうしい。厚かましい。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「面の皮が厚い」は、「つらのかわがあつい」と読みます。「面」は「つら」と読むようにします。「めん」とは読まないので注意してください。
そして意味ですが、「面の皮が厚い」とは「ずうずうしいこと・厚かましいこと」などを表した言葉です。
例えば、並んでいる人を平気で無視して横入りしてくる人、お金を貸してほしいと何度も頼んでくる人などがいたとします。
このような人たちは、非常にずうずうしくて厚かましいです。よって、「面の皮が厚い人」などと言うことができます。
つまり、「恥を恥とも思わない人」「迷惑をかけても全く気にしない人」などのことを「面の皮が厚い」と表現するわけです。
なお、辞書の記述には書かれていませんが、「面の皮が厚い」は略して「面皮が厚い」と表記することもあります。この場合は、「めんぴがあつい」と読むようにします。
面の皮が厚いの語源・由来
「面の皮が厚い」は、中国最古の詩集である「詩経(しきょう)」が由来と言われています。
「詩経」とは、紀元前9世紀~7世紀頃に書かれた詩で、305編もの長編を収めたものです。その中に次のような記述があります。
「巧言くわうの如く、顔の厚きや」
簡単に訳すと、「言葉巧みに相手を騙すように、内面の恥を隠す」という意味です。要するに、「外面は良く見せる一方で、内面の悪さは隠す」ということです。
その後、平安時代になり、日本にこの「厚顔」という言葉が伝わりました。日本では「厚顔」は、「厚い顔」すなわち「顔の皮が厚い」という意味で使われています。
人間は非常識なことをしてしまうと、恥ずかしくて顔が赤くなってしまいます。ところが、顔の皮が厚い人は自分の顔が赤くなるというようなことがありません。
あるいは赤くなったとしても、皮が分厚いわけですからなかなか周囲には分かりません。この事から、恥知らずな人のことを「顔(面)の皮が厚い」と表現するようになったわけです。
つまりこの慣用句は、普通の人であれば顔が赤くなるようなことでも、厚かましい人は平気な顔でいる様子から生まれた言葉ということです。
面の皮が厚いの類義語
続いて、「面の皮が厚い」の類義語を紹介します。
基本的には、「恥知らずな様子」や「身勝手な様子」を表した言葉が類義語となります。最後の「厚顔無恥」は、「面の皮が厚い」を四字熟語にした場合だと考えればよいでしょう。
ちなみに、「面の皮が薄い」という言い方は存在しません。これは「厚い」の反対語である「薄い」を使ったものですが、誤用なので注意してください。
面の皮が厚いの英語訳
「面の皮が厚い」は、英語だと次のように言います。
「brazen(厚かましい・ずうずうしい)」
「barefaced(素面の・厚かましい)」
「insolent(生意気な・横柄な)」
「面の皮が厚い」は、英語だと「厚かましい・ずうずうしい」などの形容詞で表すことが多いです。また、「厚かましいこと」は言い換えれば「生意気な様子」でもあるので、最後のように「insolent」を使うこともあります。
例文だと、それぞれ以下のような言い方です。
He is a brazen man.(彼は厚かましい男である。)
That was a barefaced request.(それは厚かましいお願いであった。)
She is insolent to her customers.(彼女は客に対して横柄である。)
面の皮が厚いの使い方・例文
最後に、「面の皮が厚い」の使い方を例文で紹介しておきます。
- 家に来るなと言っているのに彼は何度もやって来る。面の皮が厚い人だ。
- 毎日タダでご飯を食べに来る奴がいるんだ。面の皮が厚いとはこのことだね。
- 一時間も遅刻したのにあんなに平気でいられるなんて、面の皮が厚い人だよ。
- 少しは自分の行いを反省したらどうだ?君は面の皮が厚いなんてもんじゃないよ。
- 彼女ほど面の皮が厚い女も見たことない。自分で誘っておきながらドタキャンするなんて。
- この期に及んでまだ言い訳し続けるなんて、あいつは面の皮が厚いなんてもんじゃない。
「面の皮が厚い」は、例文のように様々な場面で使うことができます。ただ、いずれの場合も基本的に悪い意味として使われるのが特徴です。
主に、常識や作法を身に着けていない人、自分の事しか考えていない人などを対象とします。この言葉を使われる人は、相手に嫌な顔をされても気にしない人です。そういった非常識な人を非難したい時に「面の皮が厚い」を使うようにしましょう。
まとめ
以上、本記事のまとめです。
「面の皮が厚い」=ずうずうしいこと・厚かましいこと・恥を恥とも思わないこと。
「語源・由来」=『詩経』の言葉である「厚顔」から。
「類義語」=「鉄面皮・虫がいい・破廉恥・ずけずけした・厚顔無恥」
「英語訳」=「brazen」「barefaced」「insolent」
「面の皮」とは、顔の皮のことを意味します。その皮が厚いというのは、感情の変化を隠してしまうほど何事にも平気でずうずうしい人のことだと覚えておきましょう。