『マルジャーナの知恵』は、教科書・現代の国語に収録されている文章です。ただ、本文を読むとその内容や筆者の伝えたいことが分かりにくいと感じる人も多いです。
そこで今回は、『マルジャーナの知恵』のあらすじや要約、語句の意味などを含め簡単に解説しました。
『マルジャーナの知恵』のあらすじ
本文は、内容により4つの段落に分けることができます。ここでは、各段落ごとのあらすじを簡単に紹介していきます。
①資本主義の中心は、繊維や鉄鋼、機械などのモノを生産する産業から、「情報」そのものを商品化する産業へと移動しつつある。あらゆるメディアが喧伝している「情報の商品化」という現象のなかに、資本主義という経済機構の秘密を説きあかす鍵がある。それを知るには、「アリババと四十人の盗賊」という物語のなかの女奴隷マルジャーナの知恵を借りるのがよい。
②マルジャーナは、アリババの家の入口の扉につけられた白い印に気付き、隣近所の家の扉にもすべて同じ白い印をつけた。このことにより、盗賊はどれがアリババの家か知ることができず、襲撃できなくなった。次にまた盗賊が家の門口に赤い印をつけたときも、マルジャーナは隣近所すべての門口に赤いペンキで同じ印をつけた。
③「情報」とは物理的な素材でも形式的な記号でもない。白いチョークの印が情報として役に立つためには、ほかのすべての家の扉に白い印がついていないことが必要である。ほかとの違い、すなわち「差異」こそが、情報の本質なのである。
④情報の商品化は、差異の商品化と言いかえることができる。資本主義とは、資本の無限の増殖を目的としている経済機構であり、そのためには利潤を必要とする。差異から利潤を創りだすことが、資本主義の基本原理である。遠隔地も農村の過剰人口も失いつつある現代の資本主義は、差異そのものを意識的に創りだしていかなければならない。情報の商品化は、まさに差異が利潤を創りだすという資本主義の基本原理そのものを体現している現象である。
『マルジャーナの知恵』の要約&本文解説
筆者はまず、現代は情報そのものを商品化する社会へと移動しつつあると述べています。
例えば、技術や通信、広告や教育といったものは、何か具体的な姿や形があるわけではありません。一昔前のような、繊維や鉄鋼、機械などの形のあるモノを生産する産業から、こういった形のない情報を作り出す産業へと資本主義が移動しつつあるということです。
その上で、「情報」とは「差異」そのものであると述べています。「差異」とは「他と比べて違う点」という意味です。
物語の中に登場する盗賊は、アリババの家を他と区別するために、白いチョークで印をつけたり、赤いペンキで印をつけたりしました。ところが、マルジャーナによって他の家にも同じ印をつけられたことで、結局どの家がアリババの家かが分からなくなってしまいました。
この話からも分かるように、情報というのは他との違いがなければ価値を持つことはありません。他と同じような情報を集めたとしても、そこには価値はないのです。
だからこそ、筆者は現代では差異そのものを意識的に創り出していかなければならないと述べています。
これまでの資本主義は、海を隔てた遠隔地との交易(商業資本主義)や、農村の過剰人口を利用した工場での生産(産業資本主義)が中心でした。しかし、現代では「情報の商品化」が産業の中心になりつつあります。
筆者は、この「情報の商品化」こそが、資本主義の基本原理そのものを体現していると結論付けているわけです。
『マルジャーナの知恵』の意味調べノート
【資本主義(しほんしゅぎ)】⇒資本が生産活動の中核となっている経済の仕組み。
【様相(ようそう)】⇒外にあらわれた様子。
【変貌(へんぼう)】⇒姿やようすが変わること。
【いやおうなしに】⇒こちらの考えなどがおかまいなしに。
【目を引く(めをひく)】⇒注目を集める。
【喧伝(けんでん)】⇒盛んに言いはやして世間に広く知らせること。
【すぐれて~な】⇒大変~な。
【用心が肝心(ようじんがかんじん)】⇒用心しておくほうがよい。「肝心」とは「とても大切なこと」という意味。
【つゆも思わず】⇒少しも思わず。ここでの「つゆも」は「少しも。ちっとも。」という意味の副詞。
【手柄(てがら)】⇒人にほめられるような立派な働き。
【へま】⇒手抜かりをすること。失敗。
【首尾良く(しゅびよく)】⇒物事が都合よく運ぶさま。うまいぐあいに。
【門口(かどぐち)】⇒家や門の出入り口。
【差異(さい)】⇒他と比べて違う点。違い。
【利潤(りじゅん)】⇒利益。もうけ。
【増殖(ぞうしょく)】⇒増えること。
【詐欺(さぎ)】⇒他人をだまして、金品を奪ったり損害を与えたりすること。
【強奪(ごうだつ) 】⇒暴力や脅迫などで、強引に奪い取ること。
【商業資本主義(しょうぎょうしほんしゅぎ)】⇒商品の流通過程に資本を投下し、そこから利潤を獲得することを中心とする資本主義。
【交易(こうえき)】⇒国と国、地域と地域などの間で互いに品物の交換や売買をすること。
【媒介(ばいかい)】⇒両方の間に立って、なかだちをすること。とりもつこと。
【産業資本主義(さんぎょうしほんしゅぎ)】⇒生産過程に資本を投下し、労働力と生産手段を結び付け、そこから利潤をすいあげることを中心とする資本主義。
【機軸(きじく)】⇒根本的な方式。やり方。
【体現(たいげん)】⇒抽象的な事柄を具体的な形であらわすこと。
【開け、胡麻(ひらけゴマ)】⇒財宝が隠された秘密の扉を開ける呪文のこと。資本主義の基本原理として、差異が利潤を創りだすということは知られているが、情報の本質が差異である以上、「情報の商品化」と唱えれば、資本主義の秘密の扉は開かれるという意味。
『マルジャーナの知恵』のテスト対策問題
次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。
①センサイな感覚。
②ヒミツを明かす。
③ドレイを解放する。
④ドウクツに入る。
⑤宙にマう。
⑥交易をバイカイする。
⑦エンカクの地。
まとめ
以上、今回は『マルジャーナの知恵』について解説しました。ぜひ定期テストの対策として頂ければと思います。