この記事の読了目安: 452

未来は存在しない 現代の国語 テスト問題 宿命論 200字要約

 

『未来は存在しない』は、野矢茂樹氏による文章です。教科書・現代の国語にも収録されています。

ただ、本文を読むと筆者の主張が分かりにくいと感じる人も多いと思われます。そこで今回は、『未来は存在しない』のあらすじや要約、語句の意味などを含め簡単に解説しました。

『未来は存在しない』のあらすじ

 

本文は、内容により5つの段落に分けることができます。ここでは、各段落ごとのあらすじを簡単に紹介していきます。

あらすじ

①電車に乗って景色を眺めていると、不思議な感覚に襲われた。いままでは未来が現在となり、現在が過去になると思っていたが、そうではなく、存在しなかったものがいま新たに生成すると考えるようになった。

②未来に何かが起こるとする主張Aが実際に起こり、その主張Aが真であれば、今日の時点ですでにそれが決まっていたことになる。また、その主張Aが起こらなければ、今日の時点で主張Aが偽となる。どちらにせよ、今日の時点でそう決まっていたということになり、これを認めると「宿命論」を認めることになる。

③ならば、議論の最初の一歩がおかしかったのだ。未来に関する主張は現在真でも偽でもない。そう考えるしかない。「いまは真でも偽でもない。明日になれば真になる。」これは生成の語り方である。「真であるものを、真と知る」のではなく、「真になる」のだ。

④たとえば、箱の中身を当てる場合を考えてみる。「この箱の中にはケーキが入っている。」それは真か偽のどちらかであり、それは蓋を開ければ分かる。だが、未来については、箱の中にケーキが入っているかいないかという語り方に当てはまらない。それを言うと宿命論になる。

⑤「明日、野矢は大金を拾う。」この主張が真になるとすれば、この事実が生成するということだろうか。それは、捉え方が甘い。私の結論を言ってしまえば、主張Aで言及されている「野矢」という対象が生成するのだ。いま「野矢」という名前で指示する対象は、この現在で断ち切られている。明日になれば、主張Aで言及されている野矢が存在するようになるということだ。未来に向けては何も存在していない。対象は一瞬ごとに新たな産声を上げるのである。

『未来は存在しない』の要約&本文解説

 

200字要約未来に何かが起こるとした主張Aが実際に起こって、その主張Aを真や偽とすると、今日の時点で決まっていたということになり、「宿命論」を認めることになる。未来に関する主張は現在真でも偽でもないと考えるしかない。真であるものを真と知るのではなく、「真になる」のだ。対象が生成するのだ。いま指示する対象は、この現在で断ち切られている。未来に向けては何も存在していない。対象は一瞬ごとに新たに生まれるのである。(199文字)

本文を理解する上で、まず「宿命論」という言葉を理解することが重要となります。

「宿命論」とは、これから何が起こるのか、起こらないのかは前もって決まっているとする考え方のことです。別名、「運命論」とも呼ばれています。

例えば、大学受験のために必死で勉強をして合格をしたとしても、その合格したという結果はあらかじめ決まっていたとする考え方のことです。つまり、すべてのことが前もって決まっているとする考え方を「宿命論」と言うわけです。

筆者は、このような宿命論的なもので未来は決まっているわけではなく、そもそも未来は存在しないのだと主張しています。その主張が分かるのが、「未来は存在しない。そうして対象は一瞬ごとに新たな産声をあげるのである。」という最後の箇所です。

筆者は、未来はすでに決まっているものではなく、その一瞬ごとに新しく生まれるものだと考えているわけです。

『未来は存在しない』の意味調べノート

 

【時々刻々(じじこくこく)】⇒その時その時。

【漠然(ばくぜん)】⇒ぼんやりとして、はっきりしないさま。

【生成(せいせい)】⇒ものができること。ものが生まれること。

【素描(そびょう)】⇒ある物事について簡単に文章に描くこと。

【予言(よげん)】⇒未来を予測して言うこと。

【でまかせ】⇒口から出るにまかせて、いいかげんなことを言うこと。

【真偽(しんぎ)】⇒ほんとうか嘘か。

【宿命論(しゅくめいろん)】⇒これから何が起こるかはあらかじめ決定されているという考え方。運命論。

【かんじん】⇒大切。

【知る由も無い(しるよしもない)】⇒知るための手段も手がかりもない。まったく知らない。

【拒否(きょひ)】⇒要求・希望などを承諾せず、はねつけること。

【認識(にんしき)】⇒ある物事をはっきりと知り、理解すること。

【根本的(こんぽんてき)】⇒物事が成り立っているおおもとに関するさま。根本にまで及ぶさま。

【いささか】⇒ほんの少し。わずか。

【言及(げんきゅう)】⇒あることに話が及ぶこと。話がある事柄まで触れること。

【指示(しじ)】⇒何かを指し示すこと。

【産声をあげる(うぶごえをあげる)】⇒新しく生まれる。新しく起こる。

『未来は存在しない』のテスト対策問題

 

問題1

次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。

バクゼンとした不安。

ロセンを変更する。

③要求をキョヒする。

④対象をニンシキする。

⑤生命がタンジョウする。

解答①漠然 ②路線 ③拒否 ④認識 ⑤誕生
問題2『実は、これを認めると、「宿命論」を認めなければならないことになるのである。』とあるが、ここでの「これ」とはどのようなことを表すか?
解答例「明日私は大金を拾う。」という予言の主張は真か偽のいずれかであり、明日になればその真偽が分かるということ。
問題3『一方は存在と認識の語り方であるが、もう一方は「生成」の語り方なのである。』とあるが、「存在と認識の語り方」と「『生成』の語り方」は、それぞれどのような語り方か?
解答例

「存在と認識の語り方」未来に関する主張について、「真か偽のいずれかだが、いまは分からない。明日になれば分かる。」という語り方。

「『生成』の語り方」「いまは真でも偽でもない。明日になれば真になる。」という語り方。

問題4『それと同じ理由で、「明日、野矢は大金を拾う。」は真でも偽でもない。』~とあるが、どのような点で同じ理由なのか?
解答例「桃太郎」も未来における「野矢」も、存在しない対象という点。

まとめ

 

以上、今回は『未来は存在しない』について解説しました。ぜひ定期テストの対策として頂ければと思います。

The following two tabs change content below.

国語力アップ.com管理人

大学卒業後、国語の講師・添削員として就職。その後、WEBライターとして独立し、現在は主に言葉の意味について記事を執筆中。 【保有資格】⇒漢字検定1級・英語検定準1級・宅地建物取引士など。

最新記事 by 国語力アップ.com管理人 (全て見る)