「虚構」という言葉は、ドラマや映画、評論文など様々な場面で目にします。
ただ、よく目にするにも関わらず、その意味が分かりにくいと感じる人も多いのではないでしょうか。その理由は、場面によって微妙に意味が異なるからだと思われます。
そこで今回は、「虚構」の意味や使い方・類語・対義語などを含め簡単にわかりやすく解説しました。
虚構の意味を簡単に
まず、「虚構」を辞書で引くと次のように書かれています。
【虚構(きょこう)】
①事実ではないことを事実らしくつくり上げること。つくりごと。
②文芸作品などで、作者の想像力によって、人物・出来事・場面などを現実であるかのように組み立てること。フィクション。仮構。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「虚構」には2つ意味がありますが、最初に簡単な方(②)から解説していきます。それは、「架空の出来事を書いた作品」という意味です。
「架空(かくう)」とは「ウソ」「現実でない」などの意味だと考えてください。簡単な例だと、ドラマや小説、漫画などが挙げられます。
- 「ドラマ」⇒「半沢直樹」「GTO」
- 「小説」⇒「走れメロス」「ハリーポッター」
- 「漫画」⇒「ドラえもん」「サザエさん」
上記のような作品を「虚構」と言うわけです。
また、「虚構」のことを難しい言い方だと「フィクション」と呼ぶ場合もあります。文学の世界では、基本的に「フィクション」と「ノンフィクション」に分かれるのが普通です。
「フィクション」とは、事実に基づかない架空の出来事を書いた小説やドラマを指し、「ノンフィクション」とは、伝記やインタビューなど実際の出来事・事実に基づいた作品を指します。
「虚構」の場合は「前者」の方、すなわち「事実に基づかない架空の作品」を表すのです。
虚構のもう一つの意味
「虚構」にはもう一つ大事な意味があります。それは、「事実ではないことを、事実らしく作り上げること」という意味です。
この場合は、以下のように使います。
「平等という概念は虚構にすぎない。」
※「概念」とは「大まかな意味内容」という意味です。
この意味は少し難しいので、わかりやすく説明しましょう。「平等」という言葉は、誰もが聞いたことがありますよね。
例えば、「みんなが幸せになることを目指そう」という考え方はまさに平等だと言えます。しかし、現実にはどうでしょうか?
- 「お金持ちの人」と「貧乏な人」
- 「足が速い人」と「足が遅い人」
- 「体が丈夫な人」と「体が弱い人」
世の中は必ずしも平等ではありません。つまり、先ほどの例文は「平等とは作られた概念であり、現実には人は平等でない」ということを言っているのです。
この意味で使う場合は、評論文などでよく使われるのが特徴です。「評論文」では、「虚構」は「具体的な起源や根拠がないのに、あるように装うこと」という意味で使われます。
「平等」以外には「自由」や「国家」といった概念も虚構に過ぎないということがよく言われます。
「自由」と言っても、具体的な起源や明確な実体があるものでありません。また、「国家」に関しても何を持って国家というかを定義することができません。
このように、明確な実体がないのに普段からそれらしく使われている言葉というのは文章のテーマとして非常に書きやすいです。したがって、評論文などではよく登場するのです。
もしも、現代文で「虚構」が出てきたら「どのような点で虚構と言えるのか?」といったことに注目するとよいでしょう。
先ほどの「平等」の例だと、「お金持ち」「足の速さ」など具体的にどの点が虚構かを読み取れば、文章が一段と読みやすくなるはずです。
虚構の類義語
「虚構」は、次のような類義語で言い換えることができます。
いずれも共通しているのは、「人間が作り出した想像上の物」ということです。
この中でも、「フィクション」に関しては先ほども説明したように「虚構」と同じ意味です。したがって、「ファクション」は「虚構」の「同義語」と覚えて問題ありません。
その他、簡単な言葉で言えば「作り話」「物語」なども類義語に含まれます。
虚構の対義語
逆に、「虚構」の「対義語」としては以下のような言葉が挙げられます。
対義語の場合は、「ありのままのもの」や「事実のままの作品」などを表した言葉となります。この中では「事実」と「ノンフィクション」の2つが反対語に近いと言えるでしょう。
虚構の英語訳
「虚構」は、英語だと次のようにいいます。
「fiction(フィクション)」
「invention(作りごと)」
どちらも「虚構」の英語訳として使うことができますが、一般には「fiction」の方が使いやすいです。
「invention」は同じ作りごとでも、「捏造」「でっちあげ」といったネガティブな要素が含まれます。
また、「invention」には「発明・創案・新案」など他の意味もあるため、そういった理由からも「fiction」の方が使いやすいです。
例文だと、それぞれ以下のように使います。
His story was complete fiction.(彼の話は完全に虚構だった。)
That news was a complete invention.(そのニュースは全くの虚構であった。)
虚構の使い方・例文
最後に、「虚構」の使い方を実際の例文で紹介しておきます。
- 俳優という職業は、虚構の世界で生きている人達である。
- 昔話で有名な「桃太郎」は、しょせん虚構の人物にすぎない。
- 彼はドラマの見すぎで、現実と虚構の記憶が混じっているようだ。
- 現実世界だけでなく、虚構の世界から人は色々と学ぶことができる。
- そんなうまく成功するなんて、虚構に決まっているだろう。
- 「男らしさ・女らしさ」などの言葉は、虚構なのかもしれない。
- 「国」や「国家」という概念は、一種の虚構にすぎないと言える。
一般的な場面では、「虚構」は「小説・作り話」という意味で使われます。この場合は、良い意味でも悪い意味でも使うのが特徴です。
ただし、評論文(特に近代的なテーマを扱ったもの)では基本的に悪い意味として使われます。例えば、最後の例文です。
「国」というのは、「人間が勝手に線引きして作ったもの」という否定的な意味で使われることが多いです。このあたりの理由については、以下の記事で詳しく書いています。
まとめ
以上、本記事のまとめとなります。
「虚構」=①架空の出来事を書いた作品。②事実でないことを事実らしく作り上げること。
「類義語」=「フィクション・ロマン・絵空事・仮構・虚像・擬制」
「対義語」=「事実・実話・実説・実像・伝記・ノンフィクション」
「英語訳」=「fiction」「invention」
「虚構」の意味は2つありますが、①は一般生活で、②は評論文において使われます。どちらで使われているかは、文章のテーマや前後の文脈などによって判断するようにしましょう。